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【佐藤優の眼光紙背】韓国政府による自民党視察団入国拒否にどう反撃するのが竹島問題をめぐる日本の国益に適うか

 8月1日、韓国の鬱陵島を視察する目的で、韓国ソウル市の金浦空港に到着した自民党所属の国会議員3人が入国を拒否された。

視察団のメンバーは、自民党の「領土に関する特命委員会」の新藤義孝、稲田朋美両衆院議員、佐藤正久参院議員。1日から4日間、竹島の北西90キロの鬱陵島で竹島関連の資料を集めた「独島博物館」などを見学するとしていた。
 視察団の説明では、公共の安全などを害する恐れがある者の入国を禁止できるとした出入国管理法に基づいて「両国の友好関係に役に立たないため、政府として入国を不許可とする」と伝えられたという。

(8月1日asahi.com)

 自民党視察団の鬱陵島訪問に、韓国の世論は激しく反応しているが、これは韓国の弱さを示すものだ。視察団は韓国の入国手続きに従って、入国しようとした。韓国の国家主権からすれば、何の問題もない話だ。これに対して過剰反応している韓国のナショナリズムがいかに常軌を逸しているかを示している。韓国政府もナショナリズムを沈静化するのではなく煽り立てている。以下の報道を見て欲しい。

日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)をめぐり、自民党国会議員の視察団が同島に近い韓国・鬱陵島への8月初旬の訪問を計画している問題で、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が「身の安全が憂慮されることを日本政府に公式に伝えて協議するように」と外交通商省に指示した。大統領府が27日明らかにした。

(7月27日asahi.com)

 一国の国家元首が、他国の国会議員が入国すると「身の安全が憂慮される」などというのは尋常な事態ではない。しかし、このように異常な興奮をしている国家は、恐れるに値しない。国際常識を欠いた感情的行動は、国際社会の共感を得ない。韓国の圧力に屈せず、淡々と金浦空港に降りた新藤義孝衆議院議員、稲田朋美衆議院議員、佐藤正久参議院議員の勇気を讃えようではないか。

 韓国政府に知恵者がいたならば、今回の事態を反省し、より狡猾な手段を考える。それは日本の国会議員や市民を積極的に竹島に招くことだ。「是非、独島(竹島の韓国名)を訪れてください。ただし、独島は韓国の領土なので、日本のパスポートを持参し、韓国の出入国手続きに従って入国していただきます」と言う。そして、竹島に上陸したときに、「大韓民国・独島入国管理事務所」というスタンプを押す。こうなると韓国の竹島に対する支配を合法であることを日本政府が認めたという主張を韓国政府が行うことができるようになる。

 北方領土に関しては、日本国民がロシアの法的手続に従って北方領土を訪問することの自粛を訴えた閣議了解(平成元年9月19日、同3年10月29日、同10年4月17日、同11年9月10日)がある。しかし、竹島に関してはこのような閣議了解はない。可及的速やかに韓国の法的管轄に従う形での日本国民の竹島への渡航を自粛させる閣議了解を行うことが国益に適うと筆者は考える。もっとも、現下日本政府の混乱を考慮すると、このような政治決断を必要とする閣議了解を菅直人総理が直ちに行うことができるとは思えない。そこで提案がある。竹島問題を憂うる国会議員が「島根県の竹島は、わが国固有の領土であるにもかかわらず、大韓民国によって不法占拠された状態にある。日本国民が、韓国の法的手続きに従って竹島を訪問することは、日本政府の立場と相容れず、かかる訪問は自粛すべきと認識するが、この認識で間違いないか政府の立場の確認を求める」という質問主意書を提出するのだ。この質問主意書の答弁を作成するのは、外務省アジア大洋州局になる。杉山晋輔アジア大洋州局長が、腰抜け対応をしない限り、この質問主意書に対する内閣の答弁書は、肯定的なものになる。質問主意書に対する内閣の答弁書は閣議了解を必要とする。これで実質的な閣議了解を担保することができる。

 韓国が興奮して支離滅裂な対応をしているのに対し、日本は、冷静かつ狡猾に、竹島問題について、日本の立場を一歩前に進める仕込みをすべきだ。もちろんこのような内閣の答弁書が出れば、韓国政府は猛烈に抗議してくるであろう。大いに結構なことだ。日本政府としては、「それでは韓国の抗議に外交交渉を行いましょう」と答えればよい。韓国はこれまで竹島の領有権をめぐる問題は存在しないという立場から、外交交渉を拒否してきた。これに風穴を開けるよい機会になる。外務官僚に知恵があれば、この機会を日本に有利な方向に転換することができる。(2011年8月1日脱稿)

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佐藤優(さとう まさる)

1960年生まれ。作家。1985年に外務省に入省後、在ロシア日本大使館勤務などを経て、1998年、国際情報局分析第一課主任分析官に就任。
2002年、鈴木宗男衆議院議員を巡る事件に絡む背任容疑で逮捕・起訴。捜査の過程や拘留中の模様を記録した著書「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞)、「獄中記」(岩波書店)が話題を呼んだ。
2009年、懲役2年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決が確定し外務省を失職。現在は作家として、日本の政治・外交問題について講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。近著に「3.11 クライシス!」(マガジンハウス)がある。


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