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【佐藤優の眼光紙背】ウサマ・ビンラディン殺害に関し、日本政府が至急取るべきこと

 5月2日昼過ぎ(日本時間)、米国のオバマ大統領は、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを殺害し、遺体を確保したと発表した。朝日新聞はこう報じた。

オバマ米大統領は1日夜(日本時間2日)、ホワイトハウスで、2001年の米同時多発テロを首謀したとされる国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者が死亡した、とする声明を発表した。米側がパキスタンの首都イスラマバード近郊で殺害し、遺体を確保しているという。同容疑者の死亡によって、約10年に及ぶ米国のテロとの戦いは大きな節目を迎えた。

 オバマ大統領は声明の冒頭で「米国の作戦によってオサマ・ビンラディン(容疑者)が死亡した、と報告する」と述べた。就任直後からビンラディン容疑者を拘束か殺害することを、最優先課題にしてきたとし、「アルカイダ打倒の戦いの中で、最も大きな成果だ」と強調した。

 声明によると、米政府はパキスタン当局の協力で昨年8月、ビンラディン容疑者がパキスタンの拠点に潜伏していることを突き止めた。先週、身柄を確保するための作戦に乗り出すことを決め、オバマ大統領の命令で1日、作戦が実施された。ビンラディン容疑者は銃撃戦の末に死亡し、遺体は米政府側が確保したという。

 ビンラディン容疑者の死亡によって、アルカイダの求心力が大きく低下することは間違いない。今年7月に、アフガニスタンからの駐留米軍撤退を始めるオバマ政権にとって、極めて大きな成果と言える。一方、指導者を失ったアルカイダ側が、欧米を標的にした「報復テロ」の動きを強めるおそれもある。

 このため、オバマ大統領は「我々は国内外で警戒心を保たねばならない」と、テロへの警戒を呼びかけた。また、「米国はイスラム世界と戦争しているわけではない」とも述べた。(5月2日asahi.com)


 報道から判断する限り、今回の事態に関して、日本政府の動きは迅速である。ウサマ・ビンラディン殺害を想定したマニュアルが政府に存在し、それに即した対応がなされているのであろう。朝日新聞(qasahi.com)が5月2日13時12分に配信した報道を引用しておく。

日本政府、情報連絡室を設置 ビンラディン容疑者殺害

日本政府はオサマ・ビンラディン容疑者死亡の情報収集に追われた。

 菅直人首相は2日午前、米メディアの報道について首相官邸で記者団に「しっかり確認する」と述べた。菅政権は正午前、この情報に関連し、首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置した。

 海外出張中の松本剛明外相に代わり、臨時代理を務める江田五月法相は2日午後1時前、外務省に入り、幹部から報告を受けた。

 外務省幹部は朝日新聞の取材に「歴史的な事件だ」と指摘。日本国内でのテロ活動も含め、テロリストの動きへの影響を注視する必要があるとの見方を示した。一方、すでにビンラディン容疑者が関与しない形でのテロ活動が広がっており、ビンラディン容疑者の殺害によってテロとの戦いが「劇的に改善されることはない」との認識を示した。

 一方、防衛省幹部は「自衛隊の対応がすぐに変わることはないが、米国への報復も考えられるため、在日米軍は警戒度をあげるかもしれない。状況を見守る」としている。


 これから日本政府が至急取りかかるべきことは以下の4点と筆者は考える。


  1. 米政府の今回の措置を支持し、テロとの戦いを断固として進める日本の国家意思を菅直人首相が目に見える形で表明する。


  2. 米軍関係施設に対するテロ攻撃を防ぐために厳戒態勢を敷く。


  3. 原子力発電所がテロリストの攻撃対象となる可能性を想定した厳戒態勢を敷く。アルカイダをはじめとする国際テロ組織は、明確な指揮命令系統を有していない。ウサマ・ビンラディン殺害のニュースを知った数名から数十名の独立したテロリストグループが独自の行動を取る危険性がある。福島第一原発事故が世界的規模で報じられている現状で、対原発テロを考えるグループがでてくる可能性を常に念頭に置く必要がある。


  4. 情報収集に関し、東京の外務本省がテルアビブの日本大使館に訓令を発し、「モサド」(イスラエル諜報・特務庁)から詳細な秘密ブリーフィング(説明)を受け、その内容を菅直人首相に届ける。9・11事件のときもそうだったが、国際テロリズムに関する「モサド」の情報と評価は、主要国の意思決定に大きな影響を与える。外務省がインテリジェンス(情報)面で全力を尽くして菅首相を支えて欲しい。



ウサマ・ビンラディン殺害事件で、日本政府が迅速かつ的確な動きをすれば(いまのところ日本政府の動きは合格点である)、5月の主要国首脳会議(G8サミット)における日本の立場を強化する。日本国内でさまざまな問題を抱えているにしても、国際関係においては菅直人首相が日本の国家を人格的に体現することになる。繰り返すが菅首相が目に見える形で日本の国家意思を表明することが重要だ。(2011年5月2日脱稿)


■プロフィール
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・元外交官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
近著に「3.11 クライシス!」など。


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