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- 2011年04月21日 10:00
【赤木智弘の眼光紙背】表現者として、震災に接するという苦悩
スゴロク形式で日本(作品によっては世界も)各地の駅を回り、その地方の物件を買い占めながらトップを目指す、ゲームファンにはおなじみのシリーズ『桃太郎電鉄』の最新作が制作中止になったことが、明らかになったという。(*1)
理由はやはり東日本大震災で、桃太郎電鉄シリーズの生みの親である、さくまあきらは「被災地に、物件がないのは、悲しすぎるし、何事もなかったように、いままでの物件が堂々と登場するのも変だ。」「「東北復興編」もかなり考えたけど、非常にナーバスな問題だけに、ちょっと手元が狂っただけで、多くの人を傷つけてしまう。」と述べている。(*2)
今回の震災が、ゲームに与えた影響といえば、2011年春に発売予定だった、災害からのサバイバルをテーマにしたゲームシリーズの最新作「絶体絶命都市4」の発売中止も、理由は明らかにされてはいないが、震災の影響で発売中止が決定したであろうと言われている。(*3)
「ゲーム」というメディアが難しいのは、評論や小説などのメディアと違い、そこにかかる資金も、かかわる人の数も膨大であるということだ。
さくまが憂慮する「ちょっと手元が狂っただけで、多くの人を傷つけてしまう」ということ1つ考えても、論評や小説などであれば、著者と編集者が頭を下げるなり、逆に胸を張って作品性を主張すればいい。
しかし、いろいろなしがらみが発生するゲーム製作において、そうした問題そのものを発生させるわけには行かず、「支障をきたすかもしれない表現」は、真っ先に削られてしまう。
ゲームの売れ行きが好調だった時代には、人の心をえぐる可能性があっても、それでも表現したいような尖った表現(*4)も、そのゲームの個性として売りにすることもできただろう。
しかし、ソーシャルゲームの好調を尻目に、コンシューマゲーム業界が、モンスターハンターなどの一部のメジャータイトルを除けば、総じて苦しい状態にある現状においては、そうそう冒険などできない。
そうしてでき上がった「ゲーム内容も表現も、無難で何の特徴もないゲーム」が、ますますコンシューマゲームの魅力を奪い、市場を狭めてしまっている。
で、その結論として「ゲーム業界は不自由だな」ということにしてしまいたいのだけれども、では決して不自由ではない論評や小説などで、震災地域を扱うということはどういうことなのか。
私自身は、まだ「震災そのもの」については、何かを書くべき段階にないと考えている。この連載でも震災関連のことは書いているが、それはあくまでも「震災を機会に変えたい人たち」や「震災関連の問題」であって、震災そのものや、被災者そのものを書いたものではない。
しかし、テレビや新聞。そして一部のジャーナリストは、すでに震災そのものを報じているし、今後、報じたり論じようとして取材をしている人も多い。その中には、被災地の現実を私たちに伝えてくれるもがある一方で、「かなり手元がズレた」ものもあり、被災者を傷つけてしまうことも少なくないように思う。もしかしたら、震災報道もゲーム業界と同じように自粛する方が、被災者を傷つけることは少ないのかも知れない。
しかし、それでも今回の震災を何かしらで表現する必要はある。……あるはずだ。
桃太郎電鉄も、最新作は制作中止になっても、長く続いたシリーズを完結させるわけではないだろう。来年また桃鉄のシーズンが来た時に、果たして今回の被災地域はどのように描かれるのか、もしくは被災地域を省くことを選ぶのか。
報道だって、今更繰り返してがれきの山を映す必要は無いかもしれない。しかし、まだ多くの人が今後の目処も立たず、避難所暮らしを余儀なくされている中で、問題を掘り起こすための報道は、常に求められている。
あと小説。今回の震災が、表現者に影響を与えなかったということはないだろう。震災後の日本でどのような小説が描かれ、何が支持を受けるのか。
そして自分自身。
私もいずれ被災地を訪れようと考えている。
しかし、地震に津波、そして原発事故という、極めて入り組んだ大災害を前して、そのちょっとした手元のズレが多くの人を傷つける状況を、表現に落とし込むことが本当にできるのだろうか。そしてそれは必要とされているのだろうか。
ゲームと論評、報道や小説という表現媒体が違っても、そのような表現に対する苦悩には、決して差はないのだろう。
*1:「被災地に物件ないのは悲しすぎる」「桃鉄」2012年Wii版が製作中止(J-CASTニュース)http://news.livedoor.com/article/detail/5496203/
*2:仕事人裏日記(さくまあきらホームページ)http://www.sakumania.com/diary/nikki/110415.html
*3:アイレム、PS3「絶体絶命都市4 -Summer Memories-」発売中止を発表。理由は明らかにせず(GAME Watch)http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110314_432904.html
*4:*2で示したさくまあきらのページに出てくる「桝田省治」は、まさにそうした表現ができるゲームクリエイターのひとりである。
理由はやはり東日本大震災で、桃太郎電鉄シリーズの生みの親である、さくまあきらは「被災地に、物件がないのは、悲しすぎるし、何事もなかったように、いままでの物件が堂々と登場するのも変だ。」「「東北復興編」もかなり考えたけど、非常にナーバスな問題だけに、ちょっと手元が狂っただけで、多くの人を傷つけてしまう。」と述べている。(*2)
今回の震災が、ゲームに与えた影響といえば、2011年春に発売予定だった、災害からのサバイバルをテーマにしたゲームシリーズの最新作「絶体絶命都市4」の発売中止も、理由は明らかにされてはいないが、震災の影響で発売中止が決定したであろうと言われている。(*3)
「ゲーム」というメディアが難しいのは、評論や小説などのメディアと違い、そこにかかる資金も、かかわる人の数も膨大であるということだ。
さくまが憂慮する「ちょっと手元が狂っただけで、多くの人を傷つけてしまう」ということ1つ考えても、論評や小説などであれば、著者と編集者が頭を下げるなり、逆に胸を張って作品性を主張すればいい。
しかし、いろいろなしがらみが発生するゲーム製作において、そうした問題そのものを発生させるわけには行かず、「支障をきたすかもしれない表現」は、真っ先に削られてしまう。
ゲームの売れ行きが好調だった時代には、人の心をえぐる可能性があっても、それでも表現したいような尖った表現(*4)も、そのゲームの個性として売りにすることもできただろう。
しかし、ソーシャルゲームの好調を尻目に、コンシューマゲーム業界が、モンスターハンターなどの一部のメジャータイトルを除けば、総じて苦しい状態にある現状においては、そうそう冒険などできない。
そうしてでき上がった「ゲーム内容も表現も、無難で何の特徴もないゲーム」が、ますますコンシューマゲームの魅力を奪い、市場を狭めてしまっている。
で、その結論として「ゲーム業界は不自由だな」ということにしてしまいたいのだけれども、では決して不自由ではない論評や小説などで、震災地域を扱うということはどういうことなのか。
私自身は、まだ「震災そのもの」については、何かを書くべき段階にないと考えている。この連載でも震災関連のことは書いているが、それはあくまでも「震災を機会に変えたい人たち」や「震災関連の問題」であって、震災そのものや、被災者そのものを書いたものではない。
しかし、テレビや新聞。そして一部のジャーナリストは、すでに震災そのものを報じているし、今後、報じたり論じようとして取材をしている人も多い。その中には、被災地の現実を私たちに伝えてくれるもがある一方で、「かなり手元がズレた」ものもあり、被災者を傷つけてしまうことも少なくないように思う。もしかしたら、震災報道もゲーム業界と同じように自粛する方が、被災者を傷つけることは少ないのかも知れない。
しかし、それでも今回の震災を何かしらで表現する必要はある。……あるはずだ。
桃太郎電鉄も、最新作は制作中止になっても、長く続いたシリーズを完結させるわけではないだろう。来年また桃鉄のシーズンが来た時に、果たして今回の被災地域はどのように描かれるのか、もしくは被災地域を省くことを選ぶのか。
報道だって、今更繰り返してがれきの山を映す必要は無いかもしれない。しかし、まだ多くの人が今後の目処も立たず、避難所暮らしを余儀なくされている中で、問題を掘り起こすための報道は、常に求められている。
あと小説。今回の震災が、表現者に影響を与えなかったということはないだろう。震災後の日本でどのような小説が描かれ、何が支持を受けるのか。
そして自分自身。
私もいずれ被災地を訪れようと考えている。
しかし、地震に津波、そして原発事故という、極めて入り組んだ大災害を前して、そのちょっとした手元のズレが多くの人を傷つける状況を、表現に落とし込むことが本当にできるのだろうか。そしてそれは必要とされているのだろうか。
ゲームと論評、報道や小説という表現媒体が違っても、そのような表現に対する苦悩には、決して差はないのだろう。
*1:「被災地に物件ないのは悲しすぎる」「桃鉄」2012年Wii版が製作中止(J-CASTニュース)http://news.livedoor.com/article/detail/5496203/
*2:仕事人裏日記(さくまあきらホームページ)http://www.sakumania.com/diary/nikki/110415.html
*3:アイレム、PS3「絶体絶命都市4 -Summer Memories-」発売中止を発表。理由は明らかにせず(GAME Watch)http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110314_432904.html
*4:*2で示したさくまあきらのページに出てくる「桝田省治」は、まさにそうした表現ができるゲームクリエイターのひとりである。



