- 2017年07月14日 15:43
天才「加藤一二三伝説」を名言で振り返る
2/2「将棋=芸術」
「魂込めて魂を燃やして、本当に精進した結果が50年、100年色褪せない名局を指せたということが大きな誇り、喜びであると思います」
――ハフィントンポスト6月30日<加藤一二三九段が引退会見「名局の数々を指してきました」63年の棋士人生に悔いなし(全文)>
加藤九段にとって将棋は勝負事であり、同時に芸術であった。自身の指した将棋が「名局」であることには強いこだわりがある。「私は通算1324勝を挙げた。そのうち90%は名局です」と断言している(読売新聞 6月26日)。将棋は芸術だという信念を持ち、バッハやモーツァルトが作曲したクラシック音楽のように将棋の名局も50年、100年と色褪せずに多くの人に感動を与えることができると考える加藤九段は、勝つことも大事だが、自分も含めた棋士たちが指してきた名局を芸術的な作品として評価してもらえれば本望だと語る。
「私はつい最近悟ったんです。バッハは自分が能力があって理屈抜きで名曲を作ったんです。私もそうあるべきだと思った。理屈抜きで私は将棋の才能を頂いているわけだから、ひたすら将棋を指して、良い将棋を指すことに尽きる」
――NHK ETV特集『加藤一二三という男、ありけり。』(7月1日放送)
名局を指すためには“いい手(好手)”を指し続けることだ。“いい手”とは、ある局面での最善手、相手が防ぐことができない必殺の手だ。長考で知られる加藤九段だが、かつて一手のために7時間も考え続けたことがある。それは勝つためでもあるが、同時にひたすら良い将棋を指す、良い棋譜を残すため。そのために大切なのが直感と深く考える力であり、それを合わせて「直感精読」と呼ぶ。加藤九段による造語である。
スランプに陥ったときは「宗教の力」に活路を求めた。昭和45年(1970年)のクリスマスに洗礼を受け、カトリック教徒となった。洗礼を受けた後は勝ち星を積み重ね、念願の名人位をはじめ、数々のタイトルも獲得した。今でも祈りは欠かさない。先崎学九段は加藤九段の将棋を「祈りの将棋」と表現する。
「将棋にいい手があるのなら、人生にもこうすれば幸せになれるというものがあるに違いないと思いました」
――読売新聞6月26日<「ひふみん」引退、レジェンドは終わらない>
藤井四段へ、未来の自分へ
14歳にして29連勝を記録した藤井聡太四段のデビュー戦の相手を務めたのが加藤九段だということはよく知られている。自らの最年少記録を塗り替えた藤井四段に加藤九段はとりわけ関心を払っているようだ。佐々木勇気五段との対局に敗れた藤井四段に対して、ツイッターでエールを送っている。
「人生も、将棋も、勝負はつねに負けた地点からはじまる」
――加藤一二三九段のツイッター(@hifumikato) 2017年7月2日
加藤九段自身、誰よりも多くの敗北を積み重ねてきた。しかし、それはすべて自分の糧になったと振り返る。
「私は千を超える『負け』を重ねながらも、けっして腐ることなく『敗北』を糧として立ち上がり、敗北を上回る数の『勝利』を収めながら対局数を着実に伸ばしてきたわけです。断言します。私は負けて強くなったのです」
――加藤一二三『負けて強くなる 通算1100敗から学んだ直感精読の心得』(宝島社新書)
かつて加藤九段は全盛期の頃、引退間もない升田幸三実力性第四代名人と特別企画で対局したことがある。勝ったのは升田幸三だった。そのときのことを振り返り、加藤九段はこのように言う。「同じように、藤井四段と私との特別企画というのもありえるんですよ」(『ユリイカ』2017年7月号 特集・加藤一二三)。現役を引退しても、加藤九段の将棋に対する情熱は燃え盛ったままだ。
「(100歳になったら何してると思いますか?)将棋指してますよ」
――NHK ETV特集『加藤一二三という男、ありけり。』(7月1日放送)
(写真=時事通信フォト)
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