- 2017年07月14日 08:39
二重国籍問題の茶番 ・・・なぜ自民党と法務省は蓮舫氏の二重国籍問題にゴニョゴニョ言わざるをえないのか
1/2蓮舫氏の二重国籍問題、まだ尾を引いているようです。
本件筆者は、そもそも二重国籍を否定する「国籍唯一の原則」自体が時代遅れで国際性がない「ガラパゴスルール」だということを昨年に説明させていただきました。
→法務省ですら事実上容認している二重国籍の禁止規定が、どれだけガラパゴスルールなのか考えてみる
ただし、これに関してはいかに時代錯誤なルールだとしても、一応はそれが法的にはそうなっていることは確かで、それに関して説明が二転三転した蓮舫氏に関しては説明責任は確かにあるでしょうとも同時に思っております。
しかし、それが戸籍を公開するなどというエキセントリックともいえる方法なのは気になります。
戸籍を他人に公開を求められたり、さらには国籍や出自で就職や入学がその結果で判断されるというのは重大な差別行為です。国会議員がこれをなんの留保もなく行ったら、これらの戸籍差別を助長することになろうことは十分想像できます。
しかし、今回は本人が決断したことであるし、さらには日本国籍であることが条件である国会議員が公開するという条件であれば、苦渋の判断として理解できなくないですし、本来はこれは差別事例であると十分説明したうえで踏み切るのは、逆に戸籍に関するセンスティブな問題を周知させることになるではないかとも考えました。
しかし、そんなに日本人であることを証明したいのか!というような、マイノリティサイドからの厳しい意見もありました。
私は、蓮舫氏に対する国粋主義的で排外主義的な意見には眉をひそめていますが、逆の立場からこのような言葉が飛ぶこともやはり残念なことと思います。蓮舫氏の人生の選び方は誰にも強制されるべきではないのですから。
また蓮舫氏の国籍問題に触れるのはすなわち差別問題だとして、この追及自体がおかしいというのも、これまたどうかとも。
実際、ご本人の説明は二転三転し、さらにはそれがガラパゴスルールだとしても、日本の国籍法のグレーゾーンに踏み込んでいたのは間違いないわけですから。
もちろんこれが一般市民ならば、それこそ余計なお世話ですし、これを無理に追及するのは差別事案となるでしょうけれど、やはり立法府の議員である人ならば、なんらかの説明の必要があるでしょう。
さて、これらの蓮舫氏の二重国籍問題でメディアなどで追及するのは、どちらかという自民党ではなくそれ以外の右派政党であるのに皆さんお気づきでしょうか。
菅官房長官は、本日「ご本人で説明なさること」という見解を示していますが、森友・加計問題で責められている渦中の自民党が、そらみたことか!とそれが違法であるとか、政治家としての責任問題だという風には実はそんなに追及してません。
これはなぜなのでしょうか。
この前提知識をもったうえで、蓮舫氏の二重国籍問題に関する釈明記者会見(?)をご覧になるといろいろ面白いかもしれません。
それは、蓮舫氏の二重国籍問題が実は茶番ともいえる話であり、そのため、それを十分承知している自民党が強い批判を加えず、さらには本来は正式な見解を積極的に発信するべき法務省がずっとゴニョゴニョゴニョゴニョとはっきりしない態度をとり続けているという裏事情です。
それでは、まずは整理しましょう。
蓮舫氏のもうひとつの国籍について -「ひとつの中国」の原則
蓮舫氏が日本国籍ともうひとつ持っている国籍についてです。これは蓮舫氏の解釈と日本国がとるべき解釈のふたつがあります。
それは、蓮舫氏はご自分が台湾籍だと思っていらっしゃいますし、実際台湾ではそうなのでしょうけれど、日本国からみれば違います。蓮舫氏の国籍は「中国」です。そして、この中国は1972年までは国民党政府(つまり台湾)のことを指していましたが、日中国交正常化で日本国が台湾と断交したときから変わりました。その「中国」とは中華人民共和国のことです。
なにを言っているのか、台湾人だと彼女は言っていて、台湾には政府もあるし、そこからビザもパスポートも国籍も与えられているのに、なぜ中華人民共和国の籍になるのか・・・そう思う方もいらっしゃるでしょう。
ですが、これが正式な国交関係というのもので、日本は中華人民共和国と国交正常化したときに、中国は一つであるという中華人民共和国政府の主張を受け入れて、それで初めて国交を結んだわけです。よって、日本国からのスタンスは中国はあくまでも中華人民共和国のことで、それ以外は存在しないということになります。これがいわゆる「ひとつの中国」というお約束です。
いや、待ちなさいよ。台湾の人は台湾政府の下にあり、実際に日本は台湾と人の行き来もあるし、政府同士の交流もあるじゃないか。台湾籍であるのは当たり前だろう・・・はい、そう思われるのは自然なことです。
実際、台湾の人たちは、自分たちを「中国」というくくりにしてくる日本政府に対して抗議をしてきました。そのひとつの事例が、在日台湾人に与えられていてる在留カードにある標記です。これは最近までずっと「中国」と書かれていました。これに対して、台湾の人たちの中で、台湾独立志向、つまり「二つの中国」派の人たちは、その標記をやめるように長年主張してきていました。いや、中国ではなく台湾だろう、と。
これに対して法務省は次のように国会できっぱりと答弁しています。
「(この標記は)我が国が国家として承認しているところの『中国』を指すものであり、このような取り扱いに問題があるとは考えていない」
要するに、蓮舫さんはいかに台湾に「国籍」があろうとなかろうと、日本の法務省の事務取扱では中華人民共和国の国籍保持者という扱いになるわけです。