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【赤木智弘の眼光紙背】直接繋がる時代にこそ、中間が必要だ

 12月25日に、群馬県中央児童相談所の正面玄関に、箱入りのランドセルが10個置かれており、カードに「伊達直人」の名前があったことに始まった「伊達隼人ブーム」。
 各地の児童養護施設に、さまざまな文具品などが送られ、マスメディアはこれを善意の連鎖として好意的に扱っている。しかし、本当にこの件は好意的な側面だけなのだろうか?


 ブームの内容を見るに、児童養護施設に向けて、ランドセルや鉛筆といった「小学生向けの用品」を送っている例が多く目に付く。しかし、児童養護施設には、乳幼児から高校生までの幅広い子供たちが身を寄せており、決して今年小学校に上がる小学生だけがいるわけではない。

 また、現在はブームとして寄付が相次いでいるが、では来年も、それ以降も、継続的にランドセルを寄付してくれる事を期待してもいいのだろうか?

 児童養護施設の子供たちは、寄付する側の都合で現れたり消えたりする存在ではない。

 ブームに煽られてる形で寄付が行なわれている現状では、今年に小学校に上がる子供に寄付が届いても、それ以外の子供たちや、来年以降に小学校に上がる子供たちには、寄付が届かないことになる。

 もちろん、寄付をした人の善意を否定したいわけではない。しかし、物品を個人が、ある団体に直接寄付するという形式では、自ずと「選別」という行為が付随してしまう。

 私たちはすべての「困っている人」を知る事はできないし、どうしても「寄付をしたい人」を選んでしまう。多くの伊達直人に、素直でかわいい小学生には寄付をしたいが、生意気盛りの中高生に寄付をしたくないという選別の感情がなかったとは、決して言えないだろう。

 しかし現実には、もっと幅広い子供たちが、さまざまな寄付を必要としている。個人では必要に応じた分配に、どうしても限界がある。


 もうひとつ、私が気になるのは、これが「匿名での寄付」だということだ。
 確かに、匿名であるという事は、でしゃばらない「奥ゆかしさ」と取る事もできるが、同時に一方的な寄付であり、児童養護施設などからのアクセスを拒否する態度と取る事もできる。
 その「アクセスを拒否」というのは、単純に「継続的な寄付をお願いされることをいやがる」というだけのことではない。寄付という一方的な善意の表明はしても、それによって施設との関係性が産まれる事、すなわちコミュニケーションそのものを拒否してしまっているように取れるという事である。
 しかし、児童養護施設に身を寄せる子供が、両親がいなかったり、厳しい家庭環境など、他者との繋がりを失ってしまっている子供たちであるということを考えれば、彼らに必要なのは物品よりもコミュニケーションであろう。
 もちろん、そうしたコミュニケーションが個人にとって重い事であるというのは分かる。だが、それでも重さを回避した一方的な寄付を、単純に褒め称えることに対し、私は少しためらってしまう。


 そうした「分配が公平にならないこと」や「継続的な寄付やコミュニケーションの維持」といった、個人では担い切れない部分を、私たちに代わって行なっているのが、各種の「社会福祉団体」である。

 社会福祉団体は、「子供の人権問題」や「飢餓の問題」、または「学費の問題」など、その団体が設定した問題に対する幅広い見知や、各種の団体とのパイプを持ち、個人や企業から寄付を集めて、必要にしたがって分配してくれる。

 私が寄付をするとすれば、必要かどうか分からぬ物品を寄付するよりは、そうした団体を通してお金を寄付する。ニュースには取り上げられないかも知れないが、個人的に物品を直接寄付するよりも、専門家である彼らがにその分のお金を託した方が、有効な使い道を探ってくれるだろうと期待するからだ。

 しかし、ネット上などで、こうした社会福祉団体に対する陰口を見聞きする事がある。曰く「社会福祉団体は寄付を全額送らず、運営費などに回してピンハネをしている」のだという。

 しかし、寄付されたお金などを、必要に応じて無駄なく分配するためには、ノウハウの蓄積が必要不可欠である。そうした蓄積に専従する職員がいれば、彼らの給料が必要になる。

 また、社会福祉団体には、寄付の分配だけではなく、困った人たちの現状を社会に伝える役割もある。そうした啓蒙活動のためにもお金は必要不可欠である。団体運営にお金が回る事もまた、社会福祉の一環である。


 今回の伊達直人による寄付というのは、一見、個人と個人の、優しく望ましい結びつきであるかのように思える。マスメディアは、人と人の結びつきを強調し、こうしたブームを絶賛している。

 しかし、実は個人と個人の結びつきというのは、「持つ者の持たざる者に対する選別」や、「コミュニケーションの重さ」という、露骨なゴツゴツとした感触を伴っている。そうした露骨さの間に立ち、緩衝材の役割を果たすのが、社会福祉団体である。

 最近はIT技術の発展により、さまざまな人たちが社会を通さず、個人同士でコミュニケーションを取る事が可能となった。コミュニケーションだけではなく、さまざまな物品の販売などもそうである。店舗を通さなくとも、消費者と生産者が、直接結びつく事も可能である。

 しかし、直接的なコミュニケーションが可能になったからこそ、お互いの間に立ち、利益などを調整する「中間」という存在が、より重要になっているのではないだろうか。

 今回のブームで、児童養護施設などの現状を知る事も重要だが、同時にそうした団体に手を差し伸べてきた社会福祉団体などの役割を知る事もまた重要といえよう。

■プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。

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