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【佐藤優の眼光紙背】メドベージェフ露大統領は北方領土返還に応じないというシグナルを出している

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 12月24日、モスクワで行われた主要テレビ局3社トップとの生放送の対談で、ロシアのメドベージェフ大統領は、ロシアが北方領土返還に応じないという重大なシグナルを日本に対して送った。朝日新聞はこう報じる。
「北方領土はロシア領」大統領発言 2島返還取り下げか
 【モスクワ=副島英樹】ロシアのメドベージェフ大統領は24日、3主要テレビ局トップとの生放送の対談で、北方領土について「これは我々の土地だ。しかし、自由貿易ゾーンなど共同経済開発の用意があり、菅直人首相にも伝えた」と述べた。さらに「日本とは協力するが、それが四島を手放すことを意味しない」とも強調。ロシア側が領土交渉の着地点としてきた歯舞・色丹の2島引き渡しを取り下げた可能性がある。

 大統領は「日本はロシアとクリル諸島(千島列島)に対する理解を見直す必要がある」とも語り、領土問題で原則論を繰り返す菅政権を強く牽制(けんせい)した。

 11月に自ら北方領土の国後島を訪問したことについて、「私の前までは誰も行かなかったが、大統領はそこへ行ける。遠くにあっても我々の土地だ。そこに住んでいる人々が人間的な生活を送れるように、必要な決定をして整備しなければならない」と主張。クリル諸島社会経済発展計画(2007〜15年)を着実に進める意向を示した。
 さらに大統領は、ロシア第1副首相に続いて「これから別の人も行く」とも述べた。北方領土を管轄するサハリン州では、同計画の予算チェックのためプーチン首相が訪れるとの話も出ている。

 一方で、日本との協力の用意はあると強調。「共同経済プロジェクト以外に日ロを近づけるものはない。統一経済ゾーン、自由貿易ゾーンについて考えることができる。そこでみんながお金を稼ぎ、島の特殊な雰囲気の中で、日本人も歴史的名所を訪れ、働くこともできる」と述べた。

 大統領の発言は、1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後に引き渡すと明記された歯舞・色丹も含め、共同経済開発を提案したものだ。領土返還を前提にしてきた日本側の対応が焦点となる。
(12月24日asahi.com)

 まず、この発言が、官僚の準備したメモに基づくものではなく、生放送のやりとりでメドベージェフ大統領から出てきたことが注目される。北方領土に関する大統領の頭作りができあがっているということだ。この発言は、北方領土問題に関して、ロシアが「0島返還」に転換したことを意味する。

 北方領土交渉について、1956年の日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島の2島を日本に引き渡すことに合意している。これに対して、1993年の東京宣言では、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島の帰属に関する問題を解決して、平和条約を締結することが定められている。

 日本外務省は、2002年に鈴木宗男衆議院議員が失脚し、対露外交に関する影響力を失った後、あたかも東京宣言が北方4島の日本への返還を約束する外交文書であるかのごとき情報操作を国民に対して行った。筆者はこの情報操作を「東京宣言至上主義」と呼ぶことにしている。

 日ソ共同宣言に基づき、歯舞群島、色丹島の日本への返還について具体的目処をつけるとともに、国後島、択捉島の帰属に関する問題を協議するという2000年から01年にかけて森喜朗総理、鈴木宗男衆議院議員の政治主導によって進められた現実的4島返還論が、2島返還で手を打つ売国的路線であると非難することで、外務官僚の自己保身を図ることが東京宣言至上主義の目的だ。毅然たる交渉を行う意思が外務官僚になかったことは、鈴木宗男氏失脚後、北方領土交渉が日本に有利な方向にまったく展開しなかったことからも明白だ。

 しかし、東京宣言の文言は、4島が係争地域であることを定めたのみで、4島が日本に返還されることを約束しているわけではない。4島の帰属に関する問題とは、論理的に5通り(日4露0、日3露1、日2露2、日1露3、日0露4)の場合がある。メドベージェフ大統領は、「日本は東京宣言がお好きなようですから、ロシア4、日本0で帰属に関する問題を解決して、平和条約を締結しましょう」と日本をナメてかかっているのだ。

 これは、23日から日本政府が河野雅治駐露大使を更迭し、原田親仁チェコ大使に交代するという報道がなされていることに対するメドベージェフ大統領による評価でもある。原田氏こそが東京宣言至上主義を構築した中心人物だからだ。朝日新聞は

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