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110年ぶりの改正も残る課題。性犯罪被害者をめぐる司法の問題点とは

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家族など周囲の人も間接的な被害者

― ―「強制性交等罪」は、膣性交のほか、肛門性交、口腔性交も対象になった。しかし、性器に指や道具を挿入した場合は対象にならず、強制わいせつ罪になる。

日本では性器主義、男根主義なのです。この論点も「検討会」で落ちましたが、「刑法当事者の会」では、要望を出していました。身体的な境界性を破られることが性犯罪であるならば、男性器であっても、手指、道具であっても同じです。外国では、手指でも道具でも「侵襲性」として判断されます。

理解されるには、精神医学からのデータを提示することが必要です。侵襲と接触に関して、精神医学的研究結果では、膣や肛門、口腔などの部位によって、被害者のダメージが変わるというデータはありません。子どもの場合、膣に入れられないので加害者が、指を入れるということがあります。道具でも同じです。治療段階ではデータは取りにくい面がありますが、できるだけ実態を明らかにできるデータを示す必要があります。

― ―2003年にスーパーフリー事件(早稲田大学の公認サークル「スーパーフリー」のメンバーによる輪姦事件)が発覚。後に「集団強姦罪」という類型が創設された。しかし、今回の改正でその類型がなくなった。

改正前の「強姦罪」は法定刑の下限は3年、「集団強姦罪」は4年でした。改正後は「強制性交等罪」では5年になります。そのため、集団の場合は下限を7年にすべきとの話もありました。

しかし、7年を超えると酌量減刑されても執行猶予はつきません。「執行猶予がないのはどうか?」という法律家の声がありました。集団の場合、上下関係があり、やらされる場合もあります。犯罪類型としては残すべきという話もありましたが、結果として削除され、集団の場合は刑を加重する方法になります。しかし、一般の人にはよくわかりません。

― ―公訴時効については話し合われませんでした

時効撤廃も「検討会」の時に論点から落ちました。子どもの頃の被害を子ども時代に訴えられるでしょうか。日本では捜査できないとか、立件できないと言われます。しかし、ドイツでは、性被害のコールセンターに電話をしてきた人の平均年齢が46歳だったことで14年11月から、30歳まで公訴時効を停止、その後20年間が時効期限です。フランスでは未成年時の性被害は、成年に達して20年が時効となっています。

― ― 5月の衆議院本会議でも、著書「13歳、『私』をなくした私 性暴力と生きることのリアル」(朝日新聞出版)が紹介されました。その中には母親の声が掲載されています。まるで親子関係のやり直しのように読めました。

母がイベントのときに発表した話を元に、母の声を書きました。家庭内の性虐待、特に、子どもが被害にあうと、家族関係は混乱します。性被害は被害当事者だけでなく、家族など周囲の人も間接的な被害者です。しかし、まったく対応がされていません。子どもが性被害にあったときに、親は「どうして気づかなかったのか?」と責められることがあります。子ども自身も周囲の人もケアが提供される必要があります。

アメリカのように、性被害を受けた子どもの親の自助グループがあれば、当事者同士の分かち合いの中から気づきや学びを得て前に進んでいくこともできるでしょう。母は、子どもが性被害にあった母親たちのための自助グループ「ひまわりの会」を作りました。今は一般社団法人もふもふネットが開催し、メンバーとして参加しています。

山本さんは自らの体験を綴った。(撮影:渋井哲也)

私たちの場合は、それまでの積み重ねがありました。育てられていく中で母がどういう人間かを私は知っていますし、信頼しています。もし、性被害を母が知っていたら、何らかの行動を取ってくれたと思っています。

私自身は性被害を受けて、傷つきました。30代になって勉強を始め、母も2014 年に自助グループを作りました。母だろうが、パートナーだろうが、性暴力により大きく傷つくことに変わりはありません。葛藤や不信感があり、身近な人同士で傷つきが発生する場合もあります。

私の母はたまたま対話ができる人でした。仮に、自分の母親と向き合うことができない人がいるとしても、セラピーの場面でできることもあります。そのようにこころの解決はできると思います。セラピストが代弁することで、和解をすることもできるかもしれません。

レイプに対して「ノー」というのが男らしさ

― ―男性に対して期待することは?

6月21日にNHK「あさイチ」で「性暴力被害」が取り上げられました。「死ぬ気で抵抗すれば防げる」といった声が紹介されたとき、出演していたジョン・カビラさんは「ありえない。娘や奥さんに同じ言葉を言えますか?」と反論しました。

性暴力について、男性からも「違う」と言ってほしいです。性暴力を許さない社会にしてほしいです。男性も「違うんじゃないか?」と言ってほしい。

アメリカには、男性がレイプ被害を止める「Men can stop rape」という団体もあります。性を強制するのではなく、レイプに対してノーというのが男らしさなんです。みんなでお酒を飲んでいるときに、酔っ払った子を、どこかに連れていくキャンパスレイプも問題になっていますが、楽しく飲む権利は誰にでもあります。酔っ払った子を一人にしないことです。

― ―刑法改正後は、「性行為における同意」の考えを伝えることが重要になる

ちゃぶ台返し女子アクション」では、同意に関するワークショップをしています。私もアドバイザーとして参加しています。男性と女性とでは文化的背景が違います。

たとえば、デートをしていい感じの関係になったとき、男性の場合は「最後までやるものだ」という価値観があったりします。女性の場合は「女らしさは逆らわないこと。彼に好印象を与えるためには受け入れた方がいい」という考えがあったります。その結果、自分の望まない性行為を強要されて傷つくこともあります。

こうした社会的な価値観の中で自分を見失い傷つくのです。こうした点を、シナリオを演じることで理解していきます。叔母役の人は「こんないい男を逃すなんてもったいない」と言ったり、男性の先輩役の人は「ものにできないなら男らしくない」というセリフを言ってもらいます。

また「部屋に入ったら同意」という価値観が蔓延していますが、お互いが人間として、パートナーの望みや意思を尊重することが大切です。一方的に「やる」「やらない」というのは上下関係です。性交する関係は対等であり、上下関係ではありません。相手を尊重することが必要です。そのため、ワークショップでは、自分たちの同意の定義を作ってもらいます。

ワークショップは、定時制高校でもやりました。中学高校くらいでやるべきという声もすごくあります。(学習指導要領で難しいのならば)性交の話というよりは、性的な関係の中でのコミュニケーションの問題として捉えることができます。どういう位置づけでも、同意ワークショップはできます。今のままでは闇の中に放り出しているだけです。

― ―今後は、どんな活動をしていきますか?

3年後の改正のために活動をしていきます。そのために当事者の声を集めることが大切になります。「刑法当事者の会」では、7月7日付けで、性暴力被害者・サバイバーの視点で社会を良くする政策提言を行う一般社団法人「Spring(スプリング)」という団体を立ち上げました。被害者の経験やその後の困難さを政策決定者に届けます。

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