- 2017年07月13日 09:39
110年ぶりの改正も残る課題。性犯罪被害者をめぐる司法の問題点とは
1/2110年ぶりに「強姦罪」の構成要件等を見直す改正刑法が6月16日、成立した。7月13日施行される。「強制性交等罪」と名称変更し、処罰範囲を拡大した。被害者に男性も含まれ、男女間に限定されなくなった。さらに、「親告罪」規定が撤廃され、被害者の告訴なく、罪に問うことが可能になった。こうした改正の内容について、参議院法務委員会で参考人として意見陳述した、「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」の山本潤さんに話を聞いた。
性行為における「同意」を司法はわかっていない
― ―2014年10月から法務省の「性犯罪の罰則に関する検討会」で刑法改正の論点が出され、様々な議論を経て、2017年6月16日、改正刑法が成立。「強姦罪」に関する見直しがされた。法定刑の下限が3年から5年となった。父親からの性暴力被害者である山本さんは参議院法務委員会で参考人として陳述した。今回の改正をどう評価するか。
私は2015年8月から「性暴力と刑法を考える当事者の会(以下、刑法当事者会)」を立ち上げ、改正案に対する要望書を法制審議会に2回提出しました。16年秋からは、「明日少女隊」と「NPO法人しあわせなみだ」、「ちゃぶ台返し女子アクション」とともに、「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」を作り、「Believe〜私たちは知っている〜キャンペーン」 をしてきました。
大学の学園祭や市民イベントで街頭アンケートを行いました。「1)脅されて性交をした、2)騙されてホテルに連れ込まれ、性交された、3)夫婦の間で性交を強制された、4)13歳以上で親から子への性交、5)上司に無理やり性交された、6)酔って意識を失っていたときに性交が行われた」という項目を示して、「性暴力だと思うのはどれですか?」と聞きました。どの項目も9割以上が「性暴力」との回答でした。しかし、ほとんどのケースでは改正前では強姦罪にならない可能性がありました。
こうした実態を理解してもらうために、オンラインで実名での署名活動をしました。その結果、54,423筆が集まりました。

「刑法当事者の会」は、国会議員に刑法と性暴力・性犯罪の問題が伝わるように実際の裁判例を用いたパンフレットを作りました。ロビー活動のときに<24歳の男が女子中学生に声をかけ、性交に至ったことが強姦罪に問われた。少女が性交に同意してないことは認められた。しかし「反抗を著しく困難にする程度の暴行」を加えたとは認められず、また、性交を受け入れたと男が誤認した疑いは払拭できないとして無罪>などの裁判例を示しました。自民、公明、民進の各党のヒアリングに呼ばれ、説明すると議員も驚いていました。
― ―「強制性交等罪」は、「親告罪」ではなくなったが、「暴行はまた脅迫」がないと認められない。今後は、警察の捜査の現場でどのように変わっていくのか
「刑法当事者の会」では、強姦罪での「暴行脅迫要件」(暴行または脅迫を用いて...)を撤廃し、不同意の性交と位置付けてほしいと要望しました。「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」でも同じ内容を要望し、無理だとしたら、3年から5年の間に見直すことを付則に入れて欲しいとお願いしました。付則で「3年後の見直し」が加わったのはよかったと思います。
親から子への性行為は「監護者強制性交等罪」に入りました。しかし配偶者やパートナーからのレイプは対象外です。内閣府の調査(15年3月発表)では、配偶者からの“性的強要”について、女性が 7.1%、男性が 1.5%と回答しています。3年後には本当に実態を反映したものにしたいです。
性犯罪は、不同意性交の問題です。不同意かどうかを見極めるための「暴行脅迫要件」です。しかし、同意か不同意かは被害者の話を適切に聞き、証拠や証言に基づいて裁判所が判断すればいいのです。
例えば、酔って意識が混濁した状態で性交をされても、騙されて呼び出されたのだとしても、警察は「自分から誘ったのでは?」と聞くことがあります。性行為における同意を司法はわかっていません。被害者が嘘をついていると考えるなど、実態にそった被害認定をできません。そのあたりから意識を変える必要があります。警察に呼ばれ、性犯罪被害者研修で話をすることが多いですが、まだまだ認識が不足しています。
今後は、男性も被害者、女性が加害者となりえます。新しい類型について、警察が被害者に配慮をした聞き取りや捜査ができるのでしょうか。実務的には、当事者としては実況見分はやめてほしいと願っています。聞き取りも被害者に配慮してほしい。10時間も事情聴取をするのではなく、最初は病院へ連れていく必要があります。事情聴取よりも、診察とケアと法医学的証拠採取が先でしょう。
裁判では、(アメリカにあるような)レイプシールド法のように、被害者の過去の性的関係を問わないことやプライバシーを保護してほしいのです。被害者の行動ではなく、加害者の行動がどうだったのかを裁判で明らかにすべきです。



