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労働市場が流動的ではないから長時間の残業、地方への転勤、転職の不利など問題が生まれている。年功序列と終身雇用の廃止が必要 - 「賢人論。」第41回城繁幸氏(前編)

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年功序列と終身雇用のルーツは“国家総動員法”

みんなの介護 そもそも、なぜ日本にはそのような年功序列制度ができたのでしょうか?

 意外に思われるかもしれませんが、その由来は1938年の「国家総動員法」であるという説があります。例えば「大砲の弾をつくるのは怖いから」と言って仕事を辞めて良いならば、誰もいなくなってしまうでしょう。だから、戦時下においては転職の自由を制限する必要があった。この名残が終身雇用制度です。

加えて、もしある業種だけが賃金を勝手に上げると、優秀な人がみんなそこへ集まってしまいますよね。様々な物資が必要とされる戦時下では、これも良くありません。だから一年間における賃金の上げ幅も政府が制限しようということになった。これがベースアップの起源。

みんなの介護 戦前の日本には、年功序列も終身雇用もなかったのですか?

 そうですね。例えば朝日新聞社には緒方竹虎さんというジャーナリストがいましたが、この人は30代で主筆という職に出世しています。それから田中角栄だって30代で閣僚になりましたよね。いまの国会議員が40代でも若手と言われていることを踏まえると、よく違いがわかると思います。そういう年功序列でない流動的な社会が戦前には存在していて、能力とやる気がある人はどんどんポストに上げていくというスタイルが主流だったと考えられます。

みんなの介護 それが、国家総動員法を境に変わった。

 という説を私は支持していますが、もちろん違う説を唱える人もいますよ。江戸時代の丁稚奉公が年功序列のルーツであるという解釈とか。

みんなの介護 丁稚奉公というのは、10歳前後から商店に住み込みで勤めながら仕事を教わる徒弟制度のことですね。

 それから「武家社会」がルーツであると唱える人も多いです。大企業などは、たとえるならば「藩」のような濃密な人間関係で繋がれていて、不祥事を何10年も会社ぐるみで隠したりするでしょう。株主と経営者と労働組合が対立するものではなく、実は一緒になってしまっているのが日本の企業なんです。だって株主は株を売ったらそれっきりですけど、労組はなん十年もそこで飯を食うわけだから、誰よりも経営者目線なんです。

しかし僕は、丁稚奉公や藩の文化が国家総動員法をもたらし、国家総動員法をもとに年功序列制度が組成された、という風に、根っこでは全てつながっていたのだと考えています。

みんなの介護 現行の雇用制度は長い日本史の中で形成されてきたものであるだけに、改善していくことには困難が伴うのですね。

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