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【佐藤優の眼光紙背】中国による日本人に対する死刑執行にボイコットで対抗せよ

 4月6日、中国の大連拘置所で、麻薬密輸罪で死刑判決が確定していた日本人、赤野光信死刑囚(65)の死刑が執行された。日本人に対する死刑執行は、1972年の日中国交正常化以後、初めてのことである。4月1日に、中国政府は日本政府に、武田輝夫死刑囚(67)、鵜飼博徳死刑囚(48)、森勝男死刑囚(67)の日本人3人に対して「7日後に死刑執行する」と通告した。要するに、中国が、立て続けに日本人を4人処刑するという政治決断をしたということだ。

 これまで日本人への死刑執行を躊躇していた中国が、方針を転換したという事実が重要なのである。日本からの反発を抑え込むことができると中国が読んでいる。日本政府の中国に対する姿勢は実に及び腰だ。それが端的に表れたのが4月2日の岡田克也外務大臣の記者会見における以下の発言だ。

<【TBS 樋口記者】冒頭に大臣が触れられた中国での日本人の死刑執行についてお聞きします。大臣はこの後、外務省に大使を呼んで、懸念を表明したいと考えていると仰いましたけれども、具体的にどういうことに対して懸念を表明されるのか。またその懸念というのは、死刑の執行を中止してほしいという要請とはまた違うということなのか、その点も含めてお願いします。

【大臣】この問題はなかなか難しい問題ではあります。それぞれの国に法律があり、そして司法制度があるわけですから、そういう中で死刑という判決を受けた。そのこと自身について、中止をしてくださいとか、そういうことを正面から言うわけにはなかなかいかない問題だと思います。

 日本は、他の国から同じようなことを言われたら、それは司法の独立ですとか、日本の国内問題ですとか、そういう問題になるのだろうと思います。

 ただ、先般、死刑執行について懸念の表明を行って、また、続けざまに3名ということでありますので、そのことについて日本政府として懸念を表明したいと考えておりますか。

 その懸念というのは、こういう形で日本人が1人から3人、4名引き続いて死刑になるということが国内世論にも影響を及ぼしますし、あるいはこれだけ死刑があるということは、世論の中には、果たして適正に手続が行なわれているのだろうかという声もあります。そういった声があるということを懸念として伝えたいと思っております。

 もう一つは、これは、むしろ国民の皆様に申し上げることですけれども、薬物犯罪に対して、特に東南アジア、或いはアジアでは最高刑を死刑としている国が非常に多いわけであります。中国だけではなくて、インドネシア、シンガポール、スリランカ、タイ、バングラディッシュ、マレーシア、そういった国々は、最高刑が死刑であります。そういったことは十分に承知をした上で行動していただきたいと思います。

 もちろん、薬物犯罪そのものが日本でも当然これは犯罪になるということでありますが、量刑の面で、非常に重くしている国が多いということは十分に理解をしていただきたいと思います。>(外務省HP)

 岡田氏はいったいどの国の外務大臣なのだろう? 本気で日本人同胞を守ろうとしているのだろうか?

 現代の国際法理論において、国家主権は絶対ではない。それだから、国連がサダム・フセインのイラクや、金正日の北朝鮮に対して干渉することができるのだ。人権問題に関しては、個人が国際法の主体となる場合もある。文明国において受け入れられている標準的な法手続が中国では遵守されているのだろうか? 犯した犯罪と、それに対する刑罰が著しく均衡を欠いていないか? 今回の日本人4人の死刑判決に関しては重大な疑念があると筆者は考える。

 国家の機能とは、外国との関係において、ありとあらゆる手段を尽くして日本国民の生命と財産を守ることだ。この機能を日本外務省が果たしているとは思えない。

 いまここで、日本の社会の側から声をあげなくてはならない。特に死刑制度に反対している国会議員に訴えたい。今回の中国政府による日本人への死刑に抗議して、中国製品の期限付きボイコットを国民に呼びかけるのだ。中国製品は日本のありとあらゆるところに浸透しているので、長期間、完全に排除することはできない。しかし、一週間ならば、生産地表示を見て、中国製品を忌避しても生活できる。筆者も、今日から一週間、中国製品を一切購入しないことにする。(2010年4月7日脱稿)

プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・元外交官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
近著に「はじめての宗教論 右巻~見えない世界の逆襲 (生活人新書) (生活人新書 308)」、「日本国家の真髄」など。

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