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【MIAUの眼光紙背】ネットを探して資料は出てくる? 情報持ち寄りのススメ

私的録画補償金協会(SARVH)が東芝を訴えたことで、「私的録画補償金」が脚光を浴びている。

文化庁は、2006年から「私的録音録画小委員会」という専門の検討会を設けて、iPodなどの新しい録音・録画機器へ補償金を課すべきかという、補償金制度の「見直し」をやろうとした。しかし結局は制度自体に手を付けられず、ブルーレイへ新たに課金することしか決まらなかった。

この間の議論の詳細は、文化庁のサイトで読める(※1)。検討の舞台となった「審議会」の議事録と配付資料が掲載され、興味のある人はだいたい後追いできるようになっているわけだ。行政機関の情報公開は過去10年ほどの間に進み、利便性が上がった。ここでは、その私的録音録画補償金を例に、「ネットで読める行政文書」について取り上げたい。

※1 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/index.html

家庭内での録音・録画に「補償」を求めた権利者側と、その論理的な根拠を求めて難色を示したメーカー――という対立の構図は、議論が始まった1977年当時からあった。以後の検討の経緯は、近年の議論の際にも資料が作られて“復習”されている(「私的録音録画小委員会中間整理」2007年10月・※2)。

※2 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/rokuon_chuukan_1910.pdf

こと著作権法の場合、改正のための議論に10年以上かけていても、法案が国会で審議され成立するまでは一瞬だ。だから議論をたどり直すためには、国会の会議録だけでなく、「審議会」に関する資料に当たる必要がある。では補償金に関して、議論の過程を追うのに、ネットに上がっている資料で足りるのだろうか?

結論から言えば、ネットで入手できる資料もあるし、そうでないものもある。たとえば文化庁や文部科学省のサイトに掲載された審議会資料は、1997年のものが最古だ。補償金制度が創設された1993年以前の議論は、同サイトで読めない。その代わり、著作権に関する調査・情報提供・研究などを行なう著作権情報センター(CRIC)のサイトに、著作権審議会(および現在の文化審議会分科会)の報告書がある(※3)。

※3 http://www.cric.or.jp/houkoku/houkoku.html

補償金導入前の議論について、何もしなくてもネットで読める資料は以上だ。では、それ以外の記録、つまりその審議会で議論された内容そのものは、どう参照すればいいだろうか。

サイトに無ければ、文化庁へ問い合わせればいい。行政に対しては、現存する資料であれば、「開示請求」をすることで閲覧したり複写を受け取ったりできる。さらに、著作権関連だと、CRICの資料室にも多くの蔵書がある。こちらにも並行して問い合わせると便利だ。

そこで筆者も、補償金制度を議論していた頃の資料について問い合わせてみた。過去に補償金が議論されたのは、(1)著作権審議会第5小委員会(1977〜1981年)、(2)著作権問題に関する懇談会(1982〜1987年)、(3)著作権審議会第10小委員会(1987年〜1989年)、(4)同ワーキンググループ(1989年〜1991年)。それぞれの議事録や配付資料、関連資料などが残っていないかを尋ねた。

そのうち(1)第5小委と(3)第10小委については、一部の回の議事要旨が残っていた(1はCRIC資料室、3は文化庁)。また、(2)懇談会(4)ワーキングは、報告書だけが文化庁に残っていた。なお、(3)第10小委が開かれている間に、権利者側やメーカー側委員から意見書が提出されていて、これらも文化庁に残っていると分かった。いずれも、自ら問い合わせてみなければ、読む機会が得られなかったものばかりだ。

ある審議会で過去の議論を参照する場合でも、「報告書」を見るのがせいぜいである。それがまとめられる過程の議論にまでは、なかなか目が向けられない。もし今までネットで参照できなかった資料へのアクセスが確保できれば、これまでに無かった角度から補償金制度を論じる人が現われる可能性も生まれるのではないか。

筆者はそう考え、入手した文書の「共有」を試みている(※4)。自分だけで資料を抱えているよりも、多くの人の目に触れさせることで、何かしら新しい発見があれば議論にも役立つだろうとの考えである。また、後から資料を求めた人が同じプロセスをたどるのも労力の無駄だ、との意識もある。

※4 http://himagine9.cocolog-nifty.com/watchdogs/2010/01/post-34c3.html

筆者には、文化庁が古い資料をネットへ掲載しなかったことについて、どうこう言うつもりはない。ニーズがどれほどあるか分からないのに、全部掲載しろと求めるのも酷な話ではある。だから当該資料の存在に気づいた者がネットに持ち込み、文化庁の情報公開を補完できればいいのではないか。

インターネットは、「足りない部分」をユーザー各自が補うことで発展してきた。この姿勢は、行政の動きを追いかける上でも、皆さんに勧めたいところだ。情報共有にこそネットの強みがあるのである。

(谷分章優/MIAU事務局長、フリーライター)

プロフィール:
MIAU 2007年設立。ネット上の世論を集約し、政策提言などを行う団体。著作権法関連の動きについて、ネットユーザが意見表明するためのサポートを行っていくことを目的として設立された。
公式サイト:MiAU

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