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「いい人」ほど組織で埋没する根本的理由

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みんなと反対の立場から物事を見てみよう

──どういうことでしょうか?

「いい人」は、社会的な常識とか道徳といった感情的な判断基準に、簡単に自分の考えを預けてしまいます。そういうものを疑うことなく思考停止している。それでは自分なりの価値観など持てません。結果として迎合的になり、同調圧力に負けてしまう。

それだけならまだしも、「いい人」たちは、自分たちは社会的規範を守る、常識的で模範的な存在だと思っているから、異質な「変人」を見ると我慢できなくてたたこうとします。「それ常識でしょ」「みんなこう言っているよ」という言葉に象徴的ですね。常識的で多数派であることを拠り所としていて、個人としての判断軸がないために、多様性を許容する力が低い。だから、反対意見を受け入れられないんです。

話が少しずれますが、ちょっとした不祥事で異様にたたいたり炎上させたりすることが増えているのは、思考停止した「いい人」たちの不寛容さが原因じゃないかと思います。

──思考停止、不寛容とかなり手厳しいですね。では、「いい人」が独自の価値観を持つ「変人」に変わるにはどうしたらいいのでしょうか。

一般的に信じられている常識や道徳を疑ってみることです。たとえば、みんながイエスというものをノーの立場から考えてみる。ノーというものをイエスの立場で考えてみる。そしてその根拠を自分で探すんです。多様なものの見方をするように意識するんですね。

たとえばニュースを見るときにもそういう視点を持つ。「このコメンテーターの言うことに根拠はあるか。反対の立場に立ったとき、どういう根拠があるだろうか」と考えればトレーニングになります。

読書も同じようにできます。家を買おうと思ったら、「かしこいマイホームの買い方」という本を読むのは普通ですが、まったく反対の内容を主張する「いま家を買ってはいけない」というような本も読む。そうすると、「家を買うぞ!」とだけ考えていたときに気づかなかったリスクが見えてくるので、より満足度の高い家の買い方ができるようになるでしょう。

他人と交わらない1人だけの時間を作る

──物事をうのみにせず、反対方向からも見てみる、ということですね。

また、僕は常々、「内省」が必要だと言っています。生活の中に、他人と交わらない1人だけの時間を作って、自分の行動や世の中のできごとを振り返るのです。頭の中だけではなく、ノートなどに書き出すのがおすすめです。そうすれば、「自分はなぜこういう判断をして、なぜこの結果を招いたんだろう。次はどうすればいいんだろう」と客観的に検証できるんです。

ただ単に成功した、失敗した、で終わっていては何も教訓が得られないので、いつまでたっても自信が持てませんが、内省によって、自分なりの判断基準や、「こういう考え方でいいんだ」という自信が出来上がってきます。

この「内省」を日々繰り返していけば、迎合的でない、自分なりの価値観、判断軸ができて、意見を主張できるようになると思います。

──主張したくても、大きくて古い組織になればなるほど「言ってはいけないこと」が増えますよね。

「創業者が立ち上げた事業部だから異を唱えられない」などでしょうか。それぞれ特有の事情があるので、仕方のない部分もあるかもしれません。

しかし、現状を改善するアイデアを持っているのであれば、「こうやってみたらより良くなると思うのですがどうでしょうか。よろしければ自分がやってみますが」と、先兵を買って出る覚悟を持って提案してみることです。自分の不満を、良い形で解消する方法が見つかるかもしれません。不満だからといって「だからだめなんですよ!」と声高に批判だけするのは避けたほうがいいですね。

「いい人」ばかりの組織の末路

──会社員時代、組織人としての午堂さんはどんな存在でしたか?

いま思うと、周りに異を唱える「面倒くさいヤツ」だったと思います。孤立しかかったこともありますけど、「言うだけ番長」にならないように、行動して、結果も出していたから、本当に孤立したわけではありませんでした。そういう自分をきちんと評価してくれる人が必ずいるものです。

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午堂 登紀雄さん

「いい人」ばかりの組織は危険です。論理思考が苦手で、「いま、なぜそれをやらなければならないのか」を考えずに空気に流されてしまうから。はやりの「忖度」が横行する組織になるでしょうね。

それに「いい人」に限って、組織的な不正に、結果的に加担してしまうと思うんです。自動車メーカーや電機メーカーの不正だって、現場の人はみんないい人だったはずです。変人はどこかで異を唱えて干されるか辞めているでしょうから。

──周囲に流されずに、論理的に考えなければいけないんですね。

変人の行動原理は、「思考は内に、行動は外に」です。絶えず「内省」を繰り返して、自分だけの価値観を磨けば、ただの「いい人」から信念を持った「変人」に生まれ変わって、行動が変わり、成果を出すことができるようになると思います。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
1971年、岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所を経て、大手流通企業にて店舗及びマーケティング部門に従事。アーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』(日本実業出版社)など著書多数。

(聞き手=日本実業出版社 マーケティング部 渡辺博之)

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