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【赤木智弘の眼光紙背】子供を愛する親が増えたからこそ

今月15日、少子化対策担当大臣の小渕優子が、後援会の合会で第2子を懐妊したことを明らかにしたそうだ。*1
確かにおめでたいことではあるのだが、私は何か釈然としない。
彼女が担当している少子化問題は、若い人の収入などが安定せず、将来に対する不安を抱えざるを得ないことから、晩婚化や子供を産むことに対する躊躇が産まれているという話である。
ところが小渕優子の場合、故小渕恵三元総理を父に持ち、自らも議員になれるような地盤をもっている、あまりに裕福な女性である。しかも旦那は、この不況の中でいまだに平均年収1000万を超えるテレビ業界のプロデューサーであり、彼女たち夫婦の生活に、なんら不安はないだろう。
そうした「あまりに恵まれた」立場にある女性が妊娠したとして、それは「単なるおめでた」であって、決して少子化対策担当大臣としての率先垂範ではない。

小渕優子もそうなのだけれども、芸能人にしろ文化人にしろ、メディアに出るようなそこそこ裕福な女性が子供を産んで育てながら仕事をこなすことを見聞きすることは、普通の女性にとってはプレッシャーとなりはしないだろうか?
最近、料理などの家事を意識的にするようになって気付いたことは、自分には料理本に乗っているような、日のさんさんと当たるきれいなキッチンも、色とりどりのきれいな食器もないということだ。
もちろん、そういうのはスタジオで撮影しているのだし、食器なんかも料理研究家だからいろいろと持っているのも当たり前で、比較するのはナンセンスかもしれないが、どうしても劣等感を持ってしまう。「そんなにル・クルーゼの鍋ばっかり買えねーよ」みたいな。
私の場合は自分が食べる料理だからいいのだけれども、これが子供ということになってしまうと、「メディアに登場している女性」と「現実の自分」の差異が、あまりに大きく見えてしまうのではないか。

実際、お金のあるなしは、子供に与えることのできる教育レベルに直結するし、全体的な生活環境にしても、どのような家を用意できるかとか、いい学校に通わせられるかとか、公園デビューや周囲の生活レベルに合わせられるか、恥ずかしくないブランドの子供服を着させられるか、などなど。
さらに、そこに仕事が加われば、多くの人はダウンしてしまうだろう。
けれどもメディアの向こうの人たちは、仕事も子育ても両立して、いきいきとしているように見える。
子供を産んで育てるためには、そこまでのスーパーウーマンにならなければならないのかと、強迫観念をもつ人もいるのではないか。

世間はそうしたことを「親の見栄」として批判しがちだが、子供という、自分以外の「命」に責任を持たなければならないからこそ、他人の裕福さと同じだけのものを子供に与えなければならないと考える。そして、さまざまなことで思い悩み、躊躇をする。それはこれから産まれてくる子供を愛すれば、当然のことである。
そうした子供に対する愛情が、子供を産まないことに繋がっているのだとすれば、そうした心情を国は適切にフォローし、子供を安心して産める社会を作らなければならない。
そのためには、まずは貧富の差によって子供の将来が決まってしまうような状況を変えていかなければならないだろう。
裕福な家庭が幸せなのは当たり前である。少子化対策担当大臣が行うべき仕事は、貧しい家庭や片親の家庭が、ちゃんと子供を産めるような社会を提供することなのだ。
まさか、自身が子供を産むことで「責任の一端は果たした」などとは、思っていないだろうが……。

*1:小渕少子化相が第2子妊娠、出産予定は9月末(読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090215-OYT1T00697.htm

プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国画像を見る

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。

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