- 2017年07月05日 14:40
都議選、自民惨敗 ―安倍政権の主柱を揺るがす打撃ではない― - 屋山太郎
一強多弱と言われ、憲法改正に一直線に進んでいた安倍政権が、都議会選挙惨敗によって思わぬ打撃を受けた。自民党内には来年9月の党総裁三選も危くなったと危機感を煽る向きもある。都議選敗北のあとの選挙はいずれも惨敗したという経験則もあるようだ。安倍敗北は周辺の人材の不始末や「加計学園」という、事件とは言えない事柄を「事件」に仕立てられたマスコミの陰謀もある。しかし政権側が噛んで含めるような説得をしたわけでもない。政権運営には何重もの慎重さが求められる。
今回の都議選は安倍政権の主柱を揺るがすような打撃ではない。憲法改正の安倍路線に反対の動きなら、民進が2議席減って、共産が2議席増えたといったケチな動きのはずはない。都議会が爆発的に大変化を見せたのは何故か。
小池百合子氏が都知事選で断トツでトップ当選し、その後も異例の高支持率を保てたのは何故か。正直言って、これまでの都知事は誰がなっても「この人は何をやるのか」が全く見えなかった。だから芸能人や毎日出勤しない大物知事が出現したのである。歴代知事への怒りが爆発したのは舛添要一氏の振る舞いだろう。何億円もかけた贅沢三昧の外遊をし、週末は公用車で別荘に通う。家族で回転寿司を食べた分まで政治活動費につける。
要するに人の税金をやりたい放題に使った挙句、「トップが2流のホテルに泊まれますか」と居直っているのである。為政者は質素に暮らすのが武士道の習いである。ところが舛添氏はここぞとばかり、人の金をふんだんに使いまくったのだ。加えて都議会は知事の所業を黙認して糺すことをしなかった。これでは二元代表制と言われる知事と議会の都官僚に対するチェック機能がなくなる。
小池氏は立候補の公約で「知事給与の半減」を打ち出した。大衆の機微に触れる公約だった。舛添氏のような恥知らずな政治家が徹底的に嫌われることを小池氏は知っている。
小池氏は自民党に愛想をつかしたわけではない。代々、「ドン」と称する人物が自民党議員団を牛耳り、ドンに逆らえば将来はないというような“ヤクザ”集団では、理想の都政はやれない。
橋下徹氏が大阪府知事になって職員と教員の規律を正すための条例を制定した。東京都議会でこういうことが行えないものか、議員の経歴などを調べたことがあるが、一読してムリと感じた。そういう使命感に燃えた人物が見当たらないのだ。
小池氏は安倍首相に都議会への影響力を行使して貰いたかったが、安倍氏が手を突っ込んでいたら党内紛争が勃発していただろう。小池氏が自民党への離党届を出しっぱなしでいたのは、国政の大きな問題ではついて行くという意思表示だった。小池氏が開票日の翌日、「都民ファースト」の党首を辞任したのは、二元代表制を崩さないように慮ったことと、憲法改正というような自民党路線に対抗する動きと受け取られたくなかったからだろう。
(平成29年7月5日付静岡新聞『論壇』より転載)
屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。
- 一般社団法人日本戦略研究フォーラム
- 外交安全保障を主軸としたシンクタンク



