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- 2009年01月29日 11:00
【赤木智弘の眼光紙背】安心して風邪をひける府政を
大阪府の橋下府知事が「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」のあつかいについての記者会見の中で、「子供は冬も半袖、半パンでいい。かぜをひきながら強くなる。甘やかし過ぎの部分は直さないといけない」と発言した。(*1)
橋下府知事は相変わらずの精神論。
行政の長として、システムを先導する立場にありながら、学力にしても図書館を潰して、奨学金の貸し渋りを推進して、学力テストの順位の低さに憤る様は、府政の結果に対する責任感の無さをみごとに露呈させた。
そして今回も、具体的に体育教育のためのプログラムを府として提示するのでなく、子供とその親個人に「半袖半ズボンを徹底しろ」とやっている。
橋下府知事は「かぜをひきながら強くなる」などと言うが、では風邪をひいたことのリスクは誰が負担するのだろうか?
風邪をひいて学校を休むことになれば、子供は学校の勉強が遅れることになる、勉強が遅れれば当然受験に影響が出る。子供時代の学歴が一生を決定するような雇用システムにおいては、勉強の遅れは絶対に避けたい事態である。
また、親もリスクを負う事になる。親は子供の看病をせねばならない。昔のように専業主婦が多かった時代であれば問題ないが、現在の共働きが当たり前の時代においては、どちらかが看病のために仕事を休むことになる。仕事を休めば社内での評判は悪くなり、出世に響くかもしれない。親としても子供の病気は避けたい事態である。
橋下府知事の発言に対して「風邪なんてとんでもない!!」と憤るのは簡単なことである。
しかし本当は、子供が風邪をひいたぐらいで、将来に対するリスクを過剰に負わせられる現状こそ、おかしいのではないか。
制度として考えれば、子供が風邪をひけば普通に学校を休み、体調を万全にしてから学校に復帰し、それでも勉学の遅れが人生に致命的に至らないこと。そして、親が子供の看病をするのに会社を休むのが、当たり前だとされる社会設計であるべきだ。
そのような社会を目指す姿勢を公言するならば、「かぜをひきながら強くなる」というという発言は、決して安直な精神論ではなく、「風邪をひいても、府がしっかりとサポートします」という、福祉の充実に向けての姿勢の表明と考える事だってできるはずである。
しかし、それを橋下府知事が口にしてしまうと、明らかに「体を鍛えないヤツが病気をしても自己責任。福祉にたかるな!」という拒絶にしか聞こえない。
橋下府知事は府知事選のスローガンとして「子供が笑う、職員が汗をかく」 という言葉を使っていたように思う。けれども、橋下府知事が大阪の長である責任として、子供が安心して風邪をひけるようなシステム作りをサボっている現状では、「子供が苦しみ、橋下が嘲笑う」大阪であると言う他ない。
*1:体力テストも市町村別の公表要請へ 大阪府教委(産経新聞) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090120-00000611-san-soci
プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国画像を見る」
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。
橋下府知事は相変わらずの精神論。
行政の長として、システムを先導する立場にありながら、学力にしても図書館を潰して、奨学金の貸し渋りを推進して、学力テストの順位の低さに憤る様は、府政の結果に対する責任感の無さをみごとに露呈させた。
そして今回も、具体的に体育教育のためのプログラムを府として提示するのでなく、子供とその親個人に「半袖半ズボンを徹底しろ」とやっている。
橋下府知事は「かぜをひきながら強くなる」などと言うが、では風邪をひいたことのリスクは誰が負担するのだろうか?
風邪をひいて学校を休むことになれば、子供は学校の勉強が遅れることになる、勉強が遅れれば当然受験に影響が出る。子供時代の学歴が一生を決定するような雇用システムにおいては、勉強の遅れは絶対に避けたい事態である。
また、親もリスクを負う事になる。親は子供の看病をせねばならない。昔のように専業主婦が多かった時代であれば問題ないが、現在の共働きが当たり前の時代においては、どちらかが看病のために仕事を休むことになる。仕事を休めば社内での評判は悪くなり、出世に響くかもしれない。親としても子供の病気は避けたい事態である。
橋下府知事の発言に対して「風邪なんてとんでもない!!」と憤るのは簡単なことである。
しかし本当は、子供が風邪をひいたぐらいで、将来に対するリスクを過剰に負わせられる現状こそ、おかしいのではないか。
制度として考えれば、子供が風邪をひけば普通に学校を休み、体調を万全にしてから学校に復帰し、それでも勉学の遅れが人生に致命的に至らないこと。そして、親が子供の看病をするのに会社を休むのが、当たり前だとされる社会設計であるべきだ。
そのような社会を目指す姿勢を公言するならば、「かぜをひきながら強くなる」というという発言は、決して安直な精神論ではなく、「風邪をひいても、府がしっかりとサポートします」という、福祉の充実に向けての姿勢の表明と考える事だってできるはずである。
しかし、それを橋下府知事が口にしてしまうと、明らかに「体を鍛えないヤツが病気をしても自己責任。福祉にたかるな!」という拒絶にしか聞こえない。
橋下府知事は府知事選のスローガンとして「子供が笑う、職員が汗をかく」 という言葉を使っていたように思う。けれども、橋下府知事が大阪の長である責任として、子供が安心して風邪をひけるようなシステム作りをサボっている現状では、「子供が苦しみ、橋下が嘲笑う」大阪であると言う他ない。
*1:体力テストも市町村別の公表要請へ 大阪府教委(産経新聞) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090120-00000611-san-soci
プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国画像を見る」
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。



