- 2017年07月05日 10:14
日本人が世界で通用できない3つの問題「ロスト・イン・トランスレーションに陥っている」
1/2本連載は、日本国内初の「バークマン・メソッド」公認マスタートレーナーである伊藤武彦氏の著書『世界で通用する正しい仕事の作法 4つのカラーで人を知る、組織を活かす、世界と通じあう』を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。この連載の記事をまとめて読める書籍版はコチラから
日本の問題② ロスト・イン・トランスレーション
日本人は、ものごとを理解するときロスト・イン・トランスレーションに陥っている
日本に横たわっている二つ目の問題は、「日本人は、ものごとを理解するときロスト・イン・トランスレーションに陥っている」というものです。
「ロスト(lost)」は「失われる」の意味で、「トランスレーション(translation)」は「翻訳」の意味ですから、「ロスト・イン・トランスレーション」を直訳すると「翻訳において失われる」といった意味になります。
ある文や言葉を、べつの文や言葉に訳そうとするとき、訳す前の文や言葉の意味しているものを、完全に訳した後の文や言葉に移すことができないときがあります。たとえば、英語のseeという言葉を、日本語では「見る」と訳すのが一般的です。しかし、seeの原義は「目に入るものを、見る」といったものであり、seeをただ「見る」と訳すと、「見える」や「気づく」といった意味合いは失われてしまいます。このように、ある文あるいは言葉を、べつの文あるいは言葉に移すときには、意味が「失われる」ことが起きるのです。
いまの説明は、言語についてのものでした。しかし、「ロスト・イン・トランスレーション」は、翻訳や通訳などだけに当てはまる話ではありません。ものごとを理解したり解釈したりするときの行為でも、ロスト・イン・トランスレーションは生じ、その問題に陥っている人びとがいます。
リーダーシップ研修で、自分にとって都合がよいことだけを吸収していた
たとえば、ある日本企業につとめる幹部候補の社員が、世界的なビジネススクールとして知られているスイスの国際経営開発研究所(IMD)で研修を受けてくるように会社から指示されたとします。実際、その社員は、IMDのリーダーシップ育成プログラムを受けました。講師は外国人で、プログラムのテーマは「グローバル・リーダーシップの発揮のしかた」。一通りの研修を受けて、この社員は日本に帰ってきました。
ところが残念なことに、この社員は「講師の話を、自分の会社での状況に置き換えてみたらどうなるだろうか」ということばかりにとらわれてしまっていました。講師の話す内容に対して、自分にとって都合よいものだけ「なるほど、おもしろい」と興味をもち、自分にとって都合の悪いものは、なにも関心を寄せることがありません。「自分の会社での状況」に当てはまりそうにないものについても聞き流してしまいました。
この社員にも、IMDの研修プログラムを受けて、それなりに得られるものはあったでしょう。しかし、その得たものとは、この社員が勤務している会社のなかだけで効果が発揮されるものに限定されてしまっています。講師が伝えようとしたメッセージと、この社員が受けたメッセージの間で、ロスト・イン・トランスレーションが起きたからです。
この社員の場合もそうですが、日本の人びとは、得てして自分がロスト・イン・トランスレーションを起こしていることを認識しないまま、得られたスキルに満足してしまっています。しかし、グローバルな視点からすると、この社員が得たものは、全体のごく限られた一部のスキルにしかすぎず、それだけで世界に通用することにはなりません。「自分の会社の状況」に当てはめるようとすることなく「なんでも吸収しよう」と考えていれば吸収できたものを吸収できなかったのです。



