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【赤木智弘の眼光紙背】秋葉原のパフォーマー問題から、自由を考える

livedoorニュース(*1)によると、『SPA!(5月20日号)』で、秋葉原の路上で下着を露出するパフォーマンスなどをしたとして、都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたグラビアアイドルの「沢本あすか」が、取り上げられた。
沢本は記事の中で「あの日は、テレビ局数社から取材依頼があって、(『ケツ出し』のパフォーマンスを)やっているところを押さえたい」という理由でカメラが周囲にいることを確認してから(「ケツ出し」を)やったんです。」と、取材側からの指示があって、下着を露出したと暴露している。
しかし、テレビ局がわは「そのような事実はない」と完全否定しているという。

正直、ヤラセか否かということは、どうでもいい話だと思う。
livedoorニュースの記事によれば沢本は「自発的にやったのは1回目だけで、2回目、3回目は煽られちゃった感じです……」と語っているそうである。
しかし、秋葉原周辺の情報を写真ともに日夜掲載している「アキバBlog」を見るに、沢本は少なくとも去年の8月頃から露出を繰り返しており(*2)、彼女が下着露出の常連であったことは明白である。これでは自発的ではなかったなどという言い訳は通用しない。
また、マスコミの側についても、下着露出の常連である沢本を取材するという企画意図自体に、下着露出シーンを撮影しようという前提が含まれるのだから、たとえその場で直接の指示がなかったとしても、全く関係がないかのようなコメントは無責任な姿勢であるといえよう。
結局のところ、狸と狐が化かしあったけれども、権力のない沢本が逮捕されたというだけのことだ。

しかし、そんなくだらない化かしあいによって、一方的に迷惑を被っているのが、こうしたことに全く関係のないハズのオタクたちである。
秋葉原の歩行者天国で、沢本のような厚かましい人間が宣伝目的で派手なだけで下品な下着露出パフォーマンスを行い、それを目当てに「ローアングラー」と呼ばれるカメラを女性パフォーマーやコスプレイヤーの下着目当てにローアングルで構えるようなしょうもない連中が集まり、その様子を「秋葉原は無法地帯だ」という報道を行いたいだけのマスコミが集まって、カメラで撮影をする。
そんな様子が報じられ、さもオタクという人種そのものが、下着を露出したり写真を撮ったりするような不道徳な人種であるかのように、一般に認知させられてしまう。
しかしそれは、マスコミが意図的に秋葉原のごく一部の汚らしい部分を切り取って見せているに過ぎない。
大半のオタクは自分の目当ての品物を探すために、何軒もの店をハシゴするために秋葉原という街に集っている。それはおしゃれな若者達が、裏原や代官山で何軒もショップをまわる姿と、なにも変わることはない。
そして、その一部におかしい人がいたとしても、たとえば渋谷の若者のごく一部が麻薬で逮捕されたとしても、大半の若者は麻薬と無縁であるのと同じことである。

1988年から89年にかけて、4人の女児が犠牲になった、いわゆる「宮崎勤事件」が起きて以降、オタク達は常に世間の目を意識し、トラブルを避けながら、同時に自由な表現を守ろうと、努力を積み重ねてきた。
沢本逮捕の報道を見て、それを「過激なコスプレ」であるかのように受け取った人もいるだろうが、たとえば3日間でのべ50万人以上の一般参加者を集める、国内最大の同人誌即売会「コミックマーケット」では、コスプレをすることができるが、衣装には一定のルールがあり、露出に関しては肌の露出が多い衣装(一見、肌色に見えても、ストッキングやタイツであることが多い)や、下着の意図的な露出は禁じられている。
また、そのような規制の妥当性についても、多くのオタクたちが「そこまで露出を禁じなくてもいいのではないか」「いや、もっと規制するべきだ」など、さまざまな意見を交わし続けている。コスプレという表現は、そうした議論や社会とのすり合わせのなかで存続を許されているのであり、大半のコスプレイヤーはそのことを自覚しながら、コスプレを楽しんでいる。
今回の沢本の件は、パフォーマーとローアングラー、そしてマスコミという、そうしたオタク達による長年の英知の積み重ねを全く知らない連中が、横から入り込んできてそれを無自覚なまま崩壊させようとしているのだと、私は理解している。
そして、その危機は今もなお継続中だ。沢本がいなくなってもマスコミが秋葉原をそのような街であると報じ続ける限り、勘違いした人間は外やってくるであろうし、他人の迷惑を顧みない、悪質なコスプレイヤーもいまだに秋葉原に居着いてしまっている。こうした連中が「パフォーマンスも表現の自由だ」などと発すれば「関係のない私たちを傷つけるだけの、表現の自由なんていらない」と主張するオタクだって表れるはずだ。実際「悪質なパフォーマーやそれに群がる連中を追い出すために、歩行者天国を無くすべきだ」と考えるオタクも少なくない。(*3)
また、警察に対して「悪質なパフォーマーを逮捕して欲しい」との期待するオタクも増えている。こうした「警察化」を左派はいやがるのかもしれないが、路上という公共の場では、警察以外に悪質な人間を追い出す事ができないというのも事実である。
そうした状況で、表現の自由、警察権力への依存、公共の概念、さらにマスコミの報道姿勢や社会道徳など、一筋縄ではいかないさまざまな問題が山積しているのが、この問題の現状であり、特に「自由」というものを論じようとする人たちは、決してこの問題を過小に見積もってはならないと、私は考えている。

*1:http://news.livedoor.com/article/detail/3642605/
*2:http://www.akibablog.net/archives/2007/08/mata-070820.html
*3:かくいう私も、大枠としての表現の自由や、オタクの人権を守るために、秋葉原の歩行者天国を廃止してしまっても構わないと考えている。

赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国画像を見る

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。

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