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「任意同行」と欺いて署に連行し逮捕した事案の考察

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2. 現行犯逮捕されていた場合

一方、警察官が来た時点で、客観的には伊豆丸氏が現行犯逮捕されていたと評価できる状況だった場合はどうか。

すなわち、客観的には逮捕されているのに、警察官が誤って、あるいは故意に嘘をついて、「あなたは逮捕されていないから任意同行だ」と真実に反する発言をして連行した場合である。

この場合、仮に誤認逮捕であっても、通常は、被害女性による現行犯逮捕は適法だ。

適法に逮捕されている以上、逮捕後に警察官が「署に来て下さい。任意同行です」などの詐術的言動をしたからといって、適法だった逮捕が遡って違法になるとは考えにくい。

したがって、この場合は逮捕は適法と考えるのが素直だろう。釈然としない気持ちが残るのは否めないが、論理的にはそうなりそうだ。

3.伊豆丸氏の件は結局どちらか

以上、伊豆丸氏が現行犯逮捕されていた場合とそうでない場合に分けて論じてきたが、実際のところ同氏の事案はどちらなのか。

これは私も証拠を見ているわけではないから断定できない。

しかし、「女性から腕をつかまれた」「駅事務室に行った」などの伊豆丸氏自身の主張を見ても、私人による現行犯逮捕は完了していたという評価の方が素直なように思う。

そうすると、逮捕は適法だった可能性が高いように思われる。

しかし伊豆丸氏は、逮捕も勾留も違法だったとして国家賠償請求訴訟を提起済みのようだ。

私はテレビ放送の動画を見たにすぎない。当事者しか持っていない証拠も当然あるだろうから、この国家賠償請求訴訟の帰趨は正直わからない。

いずれにしても「警察官が任意同行であるとの虚言を弄して被疑者を同行させた挙句、結局逮捕した」という事案の司法判断がどうなるかは興味深い。

続報を楽しみにしている。

4. 【補足】誤認逮捕も適法な理由

「誤認逮捕であっても通常は適法だ」と上述した。

「誤認逮捕が適法なんてそんな馬鹿な」と思う人もいるかもしれないが、これは法の建て付けからすると当然の話である。

「無罪推定」という言葉を聞いたことがある人は多いと思う。被告人が有罪であるか否かは判決が確定して初めて決まるから、判決確定までは罪人として扱われないという原則のことだ。

誤認逮捕も通常適法とされるのは、この無罪推定に立脚する刑事訴訟制度から当然出てくる帰結である。

有罪か無罪かは裁判で初めて決まる以上、逮捕は被疑者が罪人であることを意味しない。むしろ、罪人か否かを決める裁判の準備をするために逮捕が必要とされるのだから。

したがって、真っ黒でなくてもある程度疑わしければ逮捕されることがあり得る。これは刑事訴訟法自身が予定している当たり前の話でしかない。

一般の方はこの点を勘違いしていて、「誤認逮捕は許されない」と素朴に思っているケースが多いように感じる。

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