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- 2017年06月29日 11:37
知っておきたい個人型確定拠出年金(iDeCo)の3つのデメリット - 榊 裕葵(社会保険労務士)
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先日、私は、ある個人型確定拠出年金(以下、愛称の「iDeCo」と記載する)のセミナーに参加をさせて頂いた。講師のFPの方や、証券会社の方が分かりやすく制度やメリットを説明して下さり、自分の知識や理解を整理するという意味で大変役に立った。
自宅に帰って寝る前に、もう一度セミナーの内容を思い出すと、その違和感の正体に気が付いた。セミナーでは、iDeCoのデメリットについての説明がほとんど無かったのだ。確かに、その日のセミナーは大手証券会社がスポンサーになって行われたものなので、iDeCoを普及させるとか、iDeCoの加入者を増やすという大前提があったのだろう。
その大前提を私は否定するつもりは全くない。しかし、iDeCoのセミナーは証券会社や銀行といった、売り手に近い立場の主体が実施することが多いので、一般の人にはどうしても情報が偏りがちになってしまうという懸念がある。そこで、独立系の社会保険労務士・CFPである私が、iDeCoのデメリットについて本稿で解説をしてみようと思った。
読者の皆様は、iDeCoのメリット・デメリットの両方を中立的に知った上で、「加入すべきか」「加入しないべきか」を判断をして頂きたい。
セミナーでは「手元にお金があるとつい趣味や遊びに使ってしまいますから、iDeCoに入れてしまえば無駄遣いはできませんから安心ですね。」といった、柔らかいトーンでサラッと説明をしていたが、この点は、ライフプランが変わっても、60歳までは現金化できないという意味で、デメリットとして契約前にしっかりと理解しておくべきだ。
他の金融商品でも、「定期預金」や「養老保険」のように、途中解約が難しかったり、途中解約をすると不利益を被ったりする商品は確かに存在する。
しかしながら、その不利益というのは、予定されていた金利が付かないとか、払い込んだ金額未満の解約返戻金しか戻ってこないといった、いわば「限定的な」不利益である。
ところが、iDeCoは、ごく限られた例外を除き、いったん払い込んだ金銭は、60歳になるまでビタ1文引き出すことはできない。たとえば、失業をしたので当面の生活費が必要になった、家を買うので頭金に充当したい、子どもの大学の入学金に充てたい、といったような場合でも現金化できないのである。
iDeCoは、自分のライフプランにじっくりと向き合い、その上で、60歳になるまで絶対に開かない鉄壁の貯金箱にお金を入れるのだ、という覚悟ができならば始めるというくらいの慎重さで丁度良いのではないかと私は考えている。
iDeCoには、拠出金を全額所得控除できるとか、運用益は非課税であるとか、税法上のメリットは確かに大きい。
しかしながら、様々な手数料や税金が発生することに注意が必要である。
まず、iDeCoの口座を作ること自体によって必然的に発生するのは、新規加入時の手数料(2,000円~4,000円程度)、運用中の口座管理手数料(毎年数百円~数千円)、60歳以降に給付を受ける時の給付事務手数料(給付1回につき500円程度)である。どの金融機関に自分のiDeCoの口座を作るかによって多少金額は異なるが、公的な制度だからといって、国民年金や厚生年金のように国が事務手数料を負担してくれる訳ではないのだ。
次に、気にすべきは、「信託報酬」である。
iDeCoでは、毎月の拠出金を原資として、主に「投資信託」という金融商品を売買することによって資産運用を行い、自助努力で資産を増やして老後に備えるという仕組みであることは既に知られている通りだ。
だが、「投資信託」は株価指数、原油・金といった商品価格、債券価格などに連動するように設計・管理されていたり、プロのファンドマネージャーが運用して株価指数を上回る高いパフォーマンスを追及したりしているので、それなりにランニングコストがかかる。
そこで、iDeCoで売買する投資信託には、投資信託毎に「信託報酬」という運用コストが設定されており、毎年自分が持っている投資信託の残高から、信託報酬が控除される。
信託報酬の率は投資信託によって様々だが、安いものは0.2%とか0.3%あたりだが、高いものだと1.5%~2%あたりに設定されているものもある。
たとえば、信託報酬が2%の投資信託を持っていて、年間で3%のリターンがあったとしても、利益として残るのは1%だけということである。相場環境が悪くて投資信託のリターンがマイナスであったときも信託報酬は変わらずに発生するので、年間でマイナス5%のリターンだった場合は、弱り目に祟り目ではないが、そこからさらにマイナス2%の追い打ちがかかるということである。
信託報酬ができるだけ安い投資信託を選ぶということで信託報酬の問題はある程度回避できるが、もちろん、高い信託報酬を払ってでも、高いリターンに賭けるという投資判断もあり得るので、最終的には個人個人の運営スタイルに沿って判断することになろう。
最後に触れておきたいのは、iDeCoには将来、「特別法人税」がかかる恐れがあるということである。
個人なのに法人税を払うというネーミング自体がしっくりこないかもしれないが、実は、法律上、iDeCoの積立金に対して、年率1.173%(国税1%+地方税0.173%)の特別法人税という資産税がかかるということになっている。
ただし、世の中が低金利で、株価もいまいち力強い上昇トレンドに入らないので、現在はこの特別法人税が「凍結」されている。もし、この凍結が廃止になるようなことがあれば、たとえばiDeCoに1,000万円の積立金がある人は、11.73万円も税金で持って行かれてしまうということである。
この特別法人税は、証券会社や銀行などもiDeCoの普及を妨げることになるとして廃止を望んでいるので、凍結のまま廃止になる可能性もあるが、現時点ではiDeCoに対する大きなリスク要因の1つであることを覚えておいてほしい。
■iDeCoセミナーで感じた違和感
だが、セミナーが終わってみると、何となく違和感が残った。自宅に帰って寝る前に、もう一度セミナーの内容を思い出すと、その違和感の正体に気が付いた。セミナーでは、iDeCoのデメリットについての説明がほとんど無かったのだ。確かに、その日のセミナーは大手証券会社がスポンサーになって行われたものなので、iDeCoを普及させるとか、iDeCoの加入者を増やすという大前提があったのだろう。
その大前提を私は否定するつもりは全くない。しかし、iDeCoのセミナーは証券会社や銀行といった、売り手に近い立場の主体が実施することが多いので、一般の人にはどうしても情報が偏りがちになってしまうという懸念がある。そこで、独立系の社会保険労務士・CFPである私が、iDeCoのデメリットについて本稿で解説をしてみようと思った。
読者の皆様は、iDeCoのメリット・デメリットの両方を中立的に知った上で、「加入すべきか」「加入しないべきか」を判断をして頂きたい。
■iDeCoには3つのデメリットがある
ただ、細かい話をするときりがないので、本稿では絶対に知っていなくてはならないiDeCoのデメリットを3点に絞って説明する。■ライフプランが変わっても60歳までは引き出せない覚悟が必要
第1のデメリットは、60歳になるまで「絶対に」引き出すことができないお金になる、という覚悟を持ってiDeCoを始めなければならないということだ。セミナーでは「手元にお金があるとつい趣味や遊びに使ってしまいますから、iDeCoに入れてしまえば無駄遣いはできませんから安心ですね。」といった、柔らかいトーンでサラッと説明をしていたが、この点は、ライフプランが変わっても、60歳までは現金化できないという意味で、デメリットとして契約前にしっかりと理解しておくべきだ。
他の金融商品でも、「定期預金」や「養老保険」のように、途中解約が難しかったり、途中解約をすると不利益を被ったりする商品は確かに存在する。
しかしながら、その不利益というのは、予定されていた金利が付かないとか、払い込んだ金額未満の解約返戻金しか戻ってこないといった、いわば「限定的な」不利益である。
ところが、iDeCoは、ごく限られた例外を除き、いったん払い込んだ金銭は、60歳になるまでビタ1文引き出すことはできない。たとえば、失業をしたので当面の生活費が必要になった、家を買うので頭金に充当したい、子どもの大学の入学金に充てたい、といったような場合でも現金化できないのである。
iDeCoは、自分のライフプランにじっくりと向き合い、その上で、60歳になるまで絶対に開かない鉄壁の貯金箱にお金を入れるのだ、という覚悟ができならば始めるというくらいの慎重さで丁度良いのではないかと私は考えている。
■手数料や税金負けする恐れ
第2のデメリットは、「手数料や税金が意外に高い」ということである。iDeCoには、拠出金を全額所得控除できるとか、運用益は非課税であるとか、税法上のメリットは確かに大きい。
しかしながら、様々な手数料や税金が発生することに注意が必要である。
まず、iDeCoの口座を作ること自体によって必然的に発生するのは、新規加入時の手数料(2,000円~4,000円程度)、運用中の口座管理手数料(毎年数百円~数千円)、60歳以降に給付を受ける時の給付事務手数料(給付1回につき500円程度)である。どの金融機関に自分のiDeCoの口座を作るかによって多少金額は異なるが、公的な制度だからといって、国民年金や厚生年金のように国が事務手数料を負担してくれる訳ではないのだ。
次に、気にすべきは、「信託報酬」である。
iDeCoでは、毎月の拠出金を原資として、主に「投資信託」という金融商品を売買することによって資産運用を行い、自助努力で資産を増やして老後に備えるという仕組みであることは既に知られている通りだ。
だが、「投資信託」は株価指数、原油・金といった商品価格、債券価格などに連動するように設計・管理されていたり、プロのファンドマネージャーが運用して株価指数を上回る高いパフォーマンスを追及したりしているので、それなりにランニングコストがかかる。
そこで、iDeCoで売買する投資信託には、投資信託毎に「信託報酬」という運用コストが設定されており、毎年自分が持っている投資信託の残高から、信託報酬が控除される。
信託報酬の率は投資信託によって様々だが、安いものは0.2%とか0.3%あたりだが、高いものだと1.5%~2%あたりに設定されているものもある。
たとえば、信託報酬が2%の投資信託を持っていて、年間で3%のリターンがあったとしても、利益として残るのは1%だけということである。相場環境が悪くて投資信託のリターンがマイナスであったときも信託報酬は変わらずに発生するので、年間でマイナス5%のリターンだった場合は、弱り目に祟り目ではないが、そこからさらにマイナス2%の追い打ちがかかるということである。
信託報酬ができるだけ安い投資信託を選ぶということで信託報酬の問題はある程度回避できるが、もちろん、高い信託報酬を払ってでも、高いリターンに賭けるという投資判断もあり得るので、最終的には個人個人の運営スタイルに沿って判断することになろう。
最後に触れておきたいのは、iDeCoには将来、「特別法人税」がかかる恐れがあるということである。
個人なのに法人税を払うというネーミング自体がしっくりこないかもしれないが、実は、法律上、iDeCoの積立金に対して、年率1.173%(国税1%+地方税0.173%)の特別法人税という資産税がかかるということになっている。
ただし、世の中が低金利で、株価もいまいち力強い上昇トレンドに入らないので、現在はこの特別法人税が「凍結」されている。もし、この凍結が廃止になるようなことがあれば、たとえばiDeCoに1,000万円の積立金がある人は、11.73万円も税金で持って行かれてしまうということである。
この特別法人税は、証券会社や銀行などもiDeCoの普及を妨げることになるとして廃止を望んでいるので、凍結のまま廃止になる可能性もあるが、現時点ではiDeCoに対する大きなリスク要因の1つであることを覚えておいてほしい。
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