■「全世帯受信料徴収」の可能性
「NHK受信料制度等検討委員会」は、2019年度からの実施が予定されているテレビ放送とインターネット放送の「常時同時通信」における受信料の中間答申原案を発表した。
その案によると、テレビを持たず受信料を支払っていない世帯でも、インターネット接続端末を有する世帯には受信料を請求する方針となっている。ただし、現段階では「スマートフォンなどでネット受信アプリのダウンロードなどの手続きを済ませた者(世帯)」だけを対象としている。視聴アプリのダウンロード等を行わない限り、現状とさして違いはないと言えるが、今回の動きを全世帯受信料徴収の布石と見る人もいるらしく、ネット上では様々な憶測も飛び交っている。
これまでNHK受信料を支払いたくないとの理由からテレビを買わない・見ない生活をし続けてきたような人にとっては、今回の発表は、驚きだったのではないかと思う。パソコンやスマホを持っているだけで受信料が請求されるようなことになれば、想定外の事態であり、口がアングリといったところかもしれない。
もし本当にそんなことになると、さすがにテレビを買おうと開き直る人も出てきそうだが、逆に、テレビだけでなくパソコンやスマホまで持たないという人も出てきそうだ。パソコンやスマホが売れなくなれば、景気にも少なからず悪影響を及ぼすことになるかもしれない。(あくまでも悲観的観測)
■正直者が馬鹿をみる「悪平等放送」からの脱皮を
「NHK受信料は支払わなければいけないもの」という前提で考えるならば、確かにテレビ放送だけ受信料を取り、インターネット放送は受信料を取らないというわけにはいかないだろうから、自ら能動的に受信アプリまで入れてスマホで観るという人なら受信料を請求されても仕方がないとは思う。受信料を支払うのが嫌なら観なければいい(アプリを入れなければいい)。これなら納得できる。
このことはテレビ放送についても言えることで、NHK放送を毎日バンバン観ているような人が受信料を支払わないというのもおかしい。しかし反面、本当にNHKの番組を観たくもないし、実際に観ていない人は、どうすればいいのか?という最も重要な点が「公共放送」の名の下に無視されている。そのせいで、観ているのに受信料を支払わない人が大勢いる一方で、観ていないのに受信料を支払っている人(私も含む)がいるという極めて歪なシステムになっている。この構図はもはや「公共放送」と言うよりも、正直者が馬鹿をみる「悪平等放送」に近いとさえ思える。
「公共放送」は誰もが皆、等しく、あまねく観る権利がある。しかし、受信料は誰もが皆、支払う義務がなく、実質的には、支払える人間が善意で支払うという曖昧なシステムになっている。これはある意味、広告収入に依存しない「ウィキペディア」と同様で、善意の寄付で成り立っているようなものだとも言える。
「ウィキペディア」はたまにサイト上で寄付金を募っているが、NHKのように各家庭の玄関先まで徴収には来ない。「ウィキペディア」が、もし、パソコンやスマホを保有しているというだけで利用料を徴収するというなら、誰が考えてもおかしいと思うはずだが、NHKの場合は、そういった理屈が通用しなくなっている。
「公共放送局」が営利企業のようにインターネット放送にまで手を出す必要が有るのかも疑問だが、そこまで利便性や営利を追求するのなら、もう民間企業に鞍替えした方が儲かるのではないか?と思えてしまう。
現実的な妥協策としては、国営放送にして人頭税よろしく税金(500円以下)で徴収してくれた方が公平感があって有り難いような気もするが、果たして、この発表の行き着く先には何が待ち構えているのだろうか?
今回の発表が将棋で言うところの「王手飛車取り」ならぬ、「王手受信料取り」に発展しないことを願う。この機会に、公平感のある制度の見直しを期待したい。