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【MiAUの眼光紙背】前略:インターネットユーザーから映像産業様

日本映画製作者連盟という団体がある。日本映画産業についての統計をウェブで発表し続けてくれるので、研究者にはとてもありがたい組織だ。しかし、先月末に発表された2007年の日本の映画産業の数字を眺めていると、邦画はテレビとのタイアップばかりで洋画に惨敗、映画産業全体も弱含みで斜陽傾向、というような、否定的な分析が頭を過ぎる。アメリカでは伸びている映画産業が日本で沈んでいく一因には、インターネットなどの新しい技術に中々肯定的な目を向けない体質も、あるかもしれない。アメリカは映画のダウンロード販売にも積極的だが、日本ではさっぱりである。

さて今回は、そんな日本の映像産業へインターネットユーザーの声を届けたいと思う。MIAUは今年1月に、ユーザーが自由に動画をコピーできないようにする仕組みである「DRM」や、コピーを1回に制限する「コピーワンス」、同じく10回にしようとする「ダビング10」などといったルールについて、インターネットユーザーがどう考えているのかについてのアンケートを行った。このアンケートは、MIAUが主催した1月のダビング10シンポジウムに先んじて、MIAUのウェブサイトで呼びかけたものだ。
アンケートに答えてくれていたのは、インターネットの自由さ情報技術の便利さを大切にしようとするMIAUの会の意思に賛同してくれている人が多いだろうから、このアンケートは、そういうインターネットの先端ユーザーたちがどのように映像作品を見ているのか、そしてその映像作品をどう扱いたいのかといった点について、数字で探ろうとしたものと言えるだろう(ウェブアンケート方式、総回答数:725)。

結論から言うと、DRMなどの動画のコピー制限については、68%の人が否定的で、コピーは無制限にやりたいという意見が大多数を占めた。

こう書くと、「モラルの無いインターネットユーザー達が違法コピーをしようとしている」、「MIAUは違法コピーを容認する団体だ」などと批判され兼ねないが、そうではないということが、アンケートを見ていると分かる。違法コピーがしたいから無制限にしたがっている、のではないのだ。

このアンケートでは、テレビの視聴・録画時間のアンケートも行ったが、その結果、90%程度の人が1日3時間未満、そしてその2/3は、1時間程度しかテレビを見ないということが分かった。これは、NHK放送文化研究所が出している日本人の平均テレビ視聴時間、3時間53分よりずっと短い。録画の時間も同程度であった。

だからといって、「MIAUのウェブアンケートに答えるような人間はインターネットに浸っていてテレビを見ていないのだろう、だから映像産業についてグダグダ言うな」、というような批判はお門違いである。10年以上前のビデオもちゃんとアーカイブしているという回答者は、全体の7割弱とかなりの率に達し、HDDレコーダーの保有率も6割程度と、一般に比べて飛び抜けて高い数字である(JEITAの出荷台数統計から推計するに、現在のHDDレコーダーの世帯普及率は20%台だと思われる)。インターネットユーザーは、映像マニアでもあるようだ。

つまり、何年間も録画を行い、アーカイブを管理し、新しい機械も買うような人たち、すなわちパワーユーザーと言われるような人達は、受動的にダラダラテレビを見るのではなく、能動的に自分が見たい番組だけを見る人たちなのではないか、と想像されるのである。

そうして彼らの8割からは、自分達が集めてきた動画は、PCまたはPCで扱えるDVDで管理したいという回答が得られた。

単純な話だ。パワーユーザーは、多くの動画を保有している。換言すれば、多くの情報を扱おうとしているということだ。多くの情報を効率よく保有・管理したければ、PCを使おうとするのは当然である。情報管理は、今日のPCの主要な存在理由である。
コピー制限があったら、録画したものをPCで整理することも閲覧することも自由にできなくなる。だから、コピー制限がイヤなのだ。野放図な違法コピーがしたいからではない。

情報社会真っ只中の今日では、10年、20年前とは、個人が扱える動画の量は桁違いに増えている。そうした状況で、動画の管理のためにPCを使わない方がむしろ不自然だ。今回のアンケートは、そうしたパワーユーザーの声が、明快に数字で出てきたと考えられる。こうしたユーザーの声を、日本の映像コンテンツ産業は是非聞いて欲しいものである。(中川 譲)


プロフィール:
MiAU 2007年設立。ネット上の世論を集約し、政策提言などを行う団体。著作権法関連の動きについて、ネットユーザが意見表明するためのサポートを行っていくことを目的として設立された。
公式サイト:MiAU

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

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