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小佐古参与の涙と渡部恒三の茶番質問

 本音を語らないこの国のメディアもここに極まれるという感じがする。

 小佐古参与が辞任記者会見で見せた涙に嘘はないだろう。彼の辞任は、自分の意見が聞き入れられなかったから腹いせに辞めたのではない。子供を放射線被害の危険にさらすことに鈍感なこの国の官僚や菅民主党政権の実態を国民に知らせたかったための辞任に違いない。放射線被曝の危険性を誰よりもよく知っている専門家の良心が流した涙だ。

 それをメディアは知っている。知っているからこそ会見の涙の姿を繰り返して報じるのだ。しかし誰もその事を言わない。書かない。菅政権の足を引っ張る事になるからだ。

 原発事故発生以来、ナリをひそめていた渡部恒三がここに来て臆面もなく表に出てきた。隠れているばかりでは終わりだと思ったのだろう。

 しかしその登場の仕方があまりにも恥知らずだ。4月29日の衆院予算委員会の質問者のトップバッターに立って、いきなり菅首相の原発対応を批判して見せる。原発事故で故郷を奪われている方々を見ると、泣けてくる、などとテレビの前で芝居している。

 自民党時代から通産族議員としてさんざん原発推進を繰り返して来た男が、78歳まで馬齢を重ねて、よくもこれだけ白々しいことが言えるものだ。
 
 メディアの連中も皆そう思っているに違いない。

 それにもかかわらずこれを報じる翌日の大手新聞はどれ一つとして批判的な記事はない。唯一5月2日の日刊ゲンダイだけが、次のような過去の渡部恒三の発言を紹介して、ふざけるな!と書いていた。

 「原子力発電所を造れば造るほど、国民の健康は増進、長生きし・・・」

 「私はエネルギー問題を解決する最大の課題は原発の建設であるとの政治哲学を持っている・・・」

 「原子力発電所の建設の一番大きな阻害になっているのは・・・安全性に対する国民の認識の問題だ・・・原子力発電所の事故で死んだ人は地球上にいないのです・・・」

 こんな過去の発言こそ大手メディアは掲載して国民や福島県民に知らせるべきなのだ。

 みな知っている。心でそう思っている。しかしその本音を語らない。これが日本をここまで閉塞させたのではないのか。

 未曾有の大震災、原発事故の中にあってなおこの閉塞感だ。我々は千載一遇の変革のチャンスを失おうとしている。

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