記事

宝塚雪組公演「幕末太陽傳」時代劇で光った早霧せいなの身のこなし

1/2
2017年6月20日、東京宝塚劇場で雪組公演、ミュージカル・コメディ「幕末太陽傳」を観劇した。宝塚があの「幕末太陽傳」を舞台化するということで、正直に言えば様子見で足を運んだ。だが、宝塚だからこその舞台エンターテインメントに大いに魅せられた。とりわけ、主役を演じた早霧(さぎり)せいなの、「品」と「可笑しみ」を携えた身のこなしに感心した。


『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』

~原作 映画「幕末太陽傳」日活株式会社 監督/川島雄三 脚本/田中啓一 川島雄三 今村昌平~

脚本・演出/小柳奈穂子

2017年4月21日(金)~ 5月29日(月) 宝塚大劇場
2017年6月16日(金)~ 7月23日(日) 東京宝塚劇場

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/bakumatsutaiyouden/index.html


原作となった映画「幕末太陽傳」は1957(昭和32)年に制作された。落語「居残り佐平次」を軸に「品川心中」「三枚起請」「お見立て」他、幾つもの落語要素が盛り込まれ、品川遊郭の大店「相模屋」を舞台に繰り広げられる喜劇だ。監督は鬼才・川島雄三(45歳で夭逝。39歳の時に同作を発表)。主演は当時28歳という若さのフランキー堺。この映画は、日本映画史において今なおオールタイムベストで上位に入る、評価の定まった傑作であり、フランキー堺の演技は御託無用の名演である。

映画冒頭で、制作当時1950年代半ばの品川の風景を映し出す。BGMはデキシーランド・ジャズのスタンダード、アーヴィング・バーリン作曲の『ALEXANDER'S RAGTIME BAND』。俳優、加藤武のナレーションで品川の今昔を描写し、物語へといざなう。


<映画「幕末太陽傳」より オープニングナレーション>

※(映像/1950年代半ば品川の風景)

NA「東海道線の下り電車が品川駅を出るとすぐ、八ツ山の陸橋の下を通過する。
京浜国道にやや並行して横たわる狭苦しい街。これが東海道五十三次、第一番目の親宿、品川宿の現在の姿だ。

この至って特色の無い街で、やや目立つものと云えば『北品川カフェー街』と呼ばれる16件の特飲店。従業の接客婦91名、平均年齢34歳。

しかしこの赤線地帯も売春防止法のアオリを喰って、1ヶ年以内の閉鎖を余儀なくされており、三百五十余年の伝統をもつ品川遊廓の歴史もここに一応幕をその下ろすことになるのだが…。

これからこの映画が語ろうとするのは現在の品川、もしくは売春問題の推移などではなく、文久二年末の品川である。文久二年と言えば、あと六年で明治になろうという年である。幕末いよいよ喧騒。

北の吉原と並び称された南の品川も、ようやく衰えを見せ始める。とはいえ、そこはやはり東海道の親宿、百軒に近い遊女屋に千人以上の遊女が妍(けん)を競う。それ相応のにぎわいを見せている。

※(映像/相模ホテルの案内板。表示に「土蔵相模の遺跡 良い安い 実用旅館 江戸の名所 相模ホテル」。画面変わって文久二年品川、「相模屋」の行灯を映し出す)

※(ご参考web)
http://www.nikkatsu.com/movie/20196.html
http://www.nikkatsu.com/bakumatsu/


ここから、フランキー堺による佐平次が、締太鼓のファンキーなバチ捌きを挨拶代わりに、全編をラストカットまで疾走する。相模屋の廊下を縦横無尽に走り抜け、踵を返しては一階から二階へと大階段を跳ねるように駆け上がり小気味よく駆け降りる。座敷、帳場、廻し部屋、行灯部屋を自在に行き来して、機転と才覚でもめ事を解決。「生きる」ために先立つものを貯めながら、女郎屋の居残り稼業に駆け回る。しかもその一歩一歩が、実は労咳(結核)という命の足枷を匂わせる一歩一歩というドラマを秘める。

そんな佐平次の代名詞、羽織を投げ上げて両袖を通す技芸はもはや銀幕の国宝だ。まるで佐平次の背に翼が生える一瞬。その等身大フィギュアを世界的ギリシア彫刻「サモトラケのニケ」と並べ、ルーブル美術館に飾ってもいいだろう。

また、佐平次が駆け出し際に左足をポーンと蹴り出し、その勢いで着物の裾をつまんで尻端折る後ろ姿も溜息が出る。「びじゅチューン」で井上涼にフランキー版佐平次をMVにしてもらうことも、若い世代のためにありかもしれない。

この名作映画「幕末太陽傳」の舞台化は、近年では2015年に青木崇高主演、江本純子(毛皮族)演出版があった。それとは別に、落語「居残り佐平次」をベースにした舞台公演は風間杜夫他、種々足跡を残している。

だが、宝塚歌劇団での舞台化は今回が初めて。映画公開から60年という時を経た節目に、宝塚雪組による「幕末太陽傳」がお目見えとなった。

あわせて読みたい

「芸能界」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    生活保護のしおりに誤解招く表現

    藤田孝典

  2. 2

    日本人が言わない「遺伝の影響」

    橘玲

  3. 3

    親日の美人議員 文大統領を批判

    高英起

  4. 4

    韓国主張する北朝鮮船の認知に謎

    和田政宗

  5. 5

    恋愛禁止の崩壊が招いたNGT事件

    小林よしのり

  6. 6

    仏国内で高まるゴーン氏への批判

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  7. 7

    照射問題に沈黙の立民理解できぬ

    城内実

  8. 8

    バンクシー投稿は小池知事の焦り

    やながせ裕文 東京都議会議員

  9. 9

    全裸レストランが失敗する理由

    東龍

  10. 10

    元人気女子アナが韓国政府を批判

    高英起

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。