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王岐山スキャンダル暴露(続編) - 澁谷 司

ここ1ヵ月余り、習近平政権の要、王岐山(党中央紀律検査委員会書記)が公の場に姿を見せていなかった。

 今までのパターンでは王が暫く雲隠れし、再び現れた時、腐敗した大トラが摘発されてきた。ところが、今回に限っては、王岐山本人が逮捕・拘束されている、或いは王が海外逃亡を図ったのではないかという噂が流れていた。

 しかし、王岐山がついに公の場に現れ、噂は間違いだった事が分かった。

 さて、今年(2017年)6月16日、郭文貴(インターポールから「国際指名手配」されている)は、王岐山家族が米国に14の資産(別荘)を保有していると暴露した。

 王岐山家族が米国で保有している財産は、2318万米ドル(約25.5億円)に上るという。そのうち、妻の姚明珊が5つの物件を有し、残りの9つは王岐山と養女、孫瑶(実際は王の私生児と疑われている)の名前で登記されていると言われる。

 また、英『フィナンシャルタイムズ』紙によれば、現在、海航集団(董事局主席の陳峰は、かつて王岐山の部下だった)株の76%を13人が保有している。その中で「貫君」という謎の人が29%の株を持ち、大株主という。

 郭文貴は、「貫君」とは、王岐山を指すと示唆した。そして、王岐山と養女、孫瑶(香港在住)ら一族で、20兆元(約300兆円)もの財産があるという。そして、相互持ち株制を通じて、300兆円をコントロールしているという。

 ただし、郭文貴の暴露したこの数字に関しては、未だ信憑性に欠く。

 ところで、中国共産党としては、これ以上、郭文貴に好き勝手に言わせておけない。共産党の威信は失墜しつつある。そこで『人民日報』傘下の『環球時報』等で郭文貴に反論した。

 そして郭文貴は、将来、犯罪人の頼昌星(福建省泉州市出身の元遠華集団董事長。密輸事件で中国当局に追われる。カナダ・バンクーバーに10年潜伏していたが、2011年7月、中国へ移送される。翌年5月、無期懲役の刑が確定)となり、中国国内へ移送されるだろうと言っている。

 また、王岐山の盟友、任志強(ブロガー。以前、習近平主席が党メディアを訪問し、党に尽くすよう命じた際、任は激しく反発)や中国共産党に近いと思われる潘石屹(SOHOトップ)が郭文貴に対し、郭の暴露はデタラメだと反論している。

 中国共産党は、郭文貴の妻子や郭の会社、盘古大観公司の従業員3人(楊英、解洪淋、呂涛)を逮捕し、郭の(特に王岐山に対する)スキャンダル暴露を何とか食い止めしようとしている。

 ところが、いくら中国共産党が郭文貴の親族や会社の従業員を締め上げても、郭文貴によるスキャンダル暴露は止まらない。

 おそらく、郭文貴のバックには、鄧小平一族等の「反習連盟」が控えていると見られる(香港で中国当局に拉致された蕭建華も「反習連盟」に属していると考えられている)。

 実は、鄧小平の孫である鄧卓芮の夫、呉小暉(前安邦保険集団董事長兼総経理)が1億米ドル(約110億円)を郭文貴に貸したという。そのため、ごく最近、中国当局に逮捕されている。一方、周永康(無期懲役)周辺が郭文貴にカネを送り支持しているとも言われる。

 一説には、海外の中国民主運動「昭明団体」と呼ばれる組織が郭文貴を支援しているという。他方、米国は中央情報局(CIA)が、英国は軍情報部第5課(MI5)が郭文貴をしっかりガードしているとも言われる。

 常識的に考えれば、郭文貴の王岐山スキャンダル暴露は習近平主席と王岐山の2人による「反腐敗運動」への牽制と見られる。習王連合に亀裂が生じれば、「反腐敗運動」が鈍るだろう。或いは、習政権にダメージを与えるための工作とも考えられる。

 このまま事態が推移すれば、今秋の「19大」(中国共産党第19回全国代表大会)での王岐山の政治局常務委員留任が難しいのではないか。「19大」時点で、王岐山は69歳となる。

 「七上八下」(67歳までは政治局常務委員として留任できるが、68歳以上は辞任を余儀なくされる)の党内ルールに従えば、王岐山は留任できない。

 そのため王は、(68歳未満の習近平・李克強以外)張徳江・兪正声・劉雲山・張高麗(以上、全て「上海閥」)らと共に、政治局常務委員を去らねばならなくなる公算が大きい。

澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

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