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【佐藤優の眼光紙背】第11回:『慰安婦』問題に関する映画を通じた北朝鮮からのメッセージ

 北朝鮮が新たな反日宣伝映画を作成した。どうもこの映画を通じて日本にメッセージを送りたいようだ。北朝鮮政府の事実上のホームページである「ネナラ(朝鮮語で”わが国”の意味)」(http://www.kcckp.net/ja/news/)が12月4日付で興味深い報道を行っている。

<最近、朝鮮記録・科学映画撮影所では記録映画『20世紀の反人倫特大犯罪』を作り上げた。

 この映画は、20世紀の前半に朝鮮を軍事占領し、数多くの朝鮮女性を性奴隷にすることによって、女性の人権を徹底的に踏みにじった、日帝の前代未聞の反人倫的犯罪を歴史的事実によって見せている。

 今から数十年前、日本が海外膨張と侵略戦争の過程で、朝鮮半島をはじめ世界各地で野蛮な日本軍「慰安婦」制度を実施し、侵略のやからに数多くの女性を無残にも強姦するようにさせたことについて、映画は被害者の証言と文書によって暴露、断罪している。>

「慰安婦」問題について、北朝鮮が本格的な映画を作成したのは、筆者が承知する限り、初めてのことだ。金正日は、宣伝手段として映画をとても重視する。『20世紀の反人倫特大犯罪』を入手し、分析すれば、北朝鮮が「慰安婦」問題を利用して、どのようなメッセージを日本に出しているかを解読することができるが、「ネナラ」の記事にもヒントがある

<そして、天人ともに激怒するこの犯罪行為が日本政府によって公式に政策化されたものであるにもかかわらず、これを巧妙に隠蔽し、今日に至っても否認しつづけ、果ては美化している日本の右翼勢力の厚顔無恥な振る舞いを、具体的な資料によってあばいている。 映画にはまた、永久に許しがたい罪多き過去を闇に葬ろうとする日本の破廉恥な妄動が、世界の大きな怒りと糾弾を呼び起こしている場面が編集されている。

 映画は、数多くの朝鮮女性の名誉と尊厳を踏みにじり、朝鮮民族を抹殺するために悪どく狂奔した百年の宿敵である日本の反人倫特大犯罪行為を、朝鮮人民は千万年の歳月が流れても忘れず、あくまで計算するであろうことを見せながら、過去の犯罪行為について謝罪し補償しない限り、日本の明日は永久にないだろうと強調している。>

 「慰安婦」問題を「巧妙に隠蔽し、今日に至っても否認しつづけ、果ては美化している日本の右翼勢力」とは、安倍晋三前首相とそのブレインを指すのであろう。そして、福田康夫政権に対して、「慰安婦」問題を巡って、安倍政権の路線と決別し、謝罪と補償に向けた協議をするならば、喜んで北朝鮮はそれに応じるという関係改善に向けたメッセージを出しているのだ。「過去の犯罪行為について謝罪し補償しない限り、日本の明日は永久にない」ということは、「『慰安婦』問題について、謝罪し、補償するならば、日本の明日が永久に補償される」という北朝鮮流の求愛表現なのだ。

 もちろん、北朝鮮の要求を日本政府が呑む必要はない。しかし、北朝鮮から関係改善のメッセージが出ていることは正確に読み取っておく必要がある。(2007年12月10日脱稿


プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。

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