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フォードトップ独占インタビュー ウーバー・テスラの未来は?

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2)の点、即ち米国市場全体の話であるが、Bob Shanks CFO曰く、確かに当面やや軟調な推移となろう。ただ弱いとか市場が大幅に縮小するということではなく、実質的には当面高原横ばいとの表現がより適切であろう。米国の自動車市場は2009年のリーマンショックで、1,000万台まで下がったが、以降昨年の1,750万台という過去最高水準まで、7年連続で右肩上がり、700万台以上の成長となった訳で、さすがにそろそろ高原には到達したかもしれない。

今期は8年ぶりのマイナスになるかもしれないが、1,700万台水準はキープできると思っているし、来年も横ばいであろう。米国経済はなお底堅く、ほぼ完全雇用の状況。賃金は伸びガソリン価格も依然安い。金利が上がると言ってもその絶対水準はまだまだ低いし、市場には金が余っている。車を買うための融資は非常に簡単に受けられる状態だ。今後は、トランプ大統領の減税策と、インフラへの大規模投資が、自動車需要を喚起することも期待している。


「米国自動車販売台数推移 」(出所:SBI証券)

そして第3の点、今期FORDが減益になる要因の1つが、AIや自動運転車への積極的な投資。だが本当にこの投資が、中・長期的な視点で、Cash cowの1つに育つと思っているのか、という筆者の素朴な疑問に対して、FORDの答えは“hopefully yes but not sure(勿論そう願っているが確信は無いよ)”というもの。

自動運転車の時代が来るにしても、またそれが、LEVEL3(自動運転だが人が介在する)、ないしはLEVEL4(人は全く介在しない、完全自動運転)であるなら、2030年から2040年が普及のメドとなる。つまり今後、15年、20年はコストが先に発生し、利益は全く出ないであろう。

激烈な競争下、リターン自体が本当に当てになるものかわからないし、出るにしても相当先の話である。しかし、従来からの競争相手に加えて、シリコンバレーの非自動車企業も、彼らこそが相当の費用と人材をつぎ込み、あと数年以内にはLEVEL4の車を市場投入すると言っている。何もしなければ後にとり残されるだけだ。

米国で今回取材した中で、自動運転車の到来について、疑いを持っている人間は“ほぼ皆無”であった。まだ規制だとか技術進歩について御託をいろいろ並べて、自動運転の到来を信用していない人間が多い日本とは大きな違いである。

自動運転とは視点が違うが、EV車の今後についても、来年から始まる、カリフォルニア州でのZEV規制の強化を契機に、各社から投入計画が発表されており、普及を後押しする政策も多い。Bob Shanks CFOとの別れ際、筆者はこう彼に問いかけた。“時価総額でTeslaは既にGMやFord、ホンダや日産よりも大きくなっている。Wall Streetの連中は頭がおかしいと思うか?”。

1,000万台以上の生産規模を持ち、実際過去最高益を更新するGMよりも、10万台未満の生産規模で利益が一度も出たことの無いTeslaの時価総額が大きいという現実。この問いかけに対し彼は、“一般論として、短期的な結論はともかく、中・長期的な見地から言えば、概ね、Wall Streetは正しいよ”。


「世界の自動車会社 時価総額トップ10」(出所:Bloomberg)

デトロイトからサンフランシスコに到着した筆者は、ホテル前で面白い車に遭遇した。何とUberの完全自動運転車(LEVEL4)である。公道実験中の模様で、運転席には人が見える。ただLEVEL4の車なら、実際の運転は完全自動ということになる。Uberはサンフランシスコで創業した。現在、その研究の中心はピッツバーグだが、米国全土で公道実験を実施している。セクハラだ、長時間労働だ、技術盗用だと、何かにつけて話題に事欠かない会社だが、Googleと並んで、自動運転の分野に於いては、世界で最も先端を進んでいるとも言われる。

サンフランシスコから南に、シリコンバレー中心のサンノゼまで、車を飛ばしてほぼ1時間。その間、何台かのGoogleやUberの車とすれ違う。やはり当たり前に多くのTesla Model-SやModel-Xも走っているのだが、自動運転車は屋根にライダーと呼ばれる全方位の回転しているレーダー装置をつけているので、却って目立つ存在である。

自動運転にしろEVにしろ、日本でも米国でも依然導入の初期段階であり実験段階なのだが、もう日常茶飯事に見ることが出来るのが米国である。

■シリコンバレーvsデトロイト

先の時価総額論議ではないが、デトロイトによってビジネスモデルが確立した、旧来型・ガソリン車主導の自動車企業が、少なくとも株式市場(Wall Street)からは過去の産物と見られ、GoogleやTeslaのような、シリコンバレー発祥のアプリ・EV主導型のモビリティー企業に取って代わられる、付加価値の中心が大量高効率な生産方式にあるのではなく、車を完全自動で移動させ、それに伴うサービスを提供することにあるというビジネスモデル。それも2050年とか遥か先の話ではなく、早ければ2020年代前半にも実現する、少なくともWall Streetはそう信じているということであろう。

従来型のビジネスモデル、即ち、デトロイト型、高効率な開発と生産に最重要な付加価値を見出し、垂直統合による生産・調達システムを確立した内燃機関エンジンを基本とした企業と、未来型ビジネスモデル、即ち、シリコンバレー型、最重要な付加価値は供給されるサービスの内容と課金システムであり、水平分業生産による、EV・FCVを基本とした企業。Wall Street上では、既に勝負が付いている、野球で言えばまだ3回の裏、のような気もするのだが、後半での逆転劇に期待をするのか(デトロイト型)、今でこうなら、後は押して知るべしだろうと思うか(シリコンバレー型)、ロンドンのBook makerにでも聞いてみるか?

それにしても、サンフランシスコの路上にいるホームレスの数が、この1年間で飛躍的に増えたと感じるのは、筆者だけであろうか。

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