- 2017年06月24日 11:15
姑の介護 嫁のはらわたが煮えたぎる理由
1/2ライター 相沢 光一
老親を在宅介護することになった。仕事に忙しい自分は介護の担い手になれない。兄弟姉妹も“口だけ”介護。そこで、消去法で妻(嫁)に世話をさせると、とんでもない悲劇が訪れたのだった。
「長男のオレが面倒を見るから」なぜ夫はカッコつけるのか
「私が担当した利用者さんなんですが、お姑さん(70代後半)の介護が原因で夫婦仲がこじれ、離婚してしまった方がいます」
と語り始めたのは女性ケアマネージャーのYさんです。聞けば、この利用者は50代半ばの夫婦で、共働き。育てた2人の子どもはすでに独立し、休日には一緒に旅行やゴルフに行くなど、とても仲がよかった。ところが、1年ほど前、姑が要介護2になったことで最悪の結末を迎えることになるのです(舅はすでに他界)。
「ご主人には2人の妹さんがいて、自分たち夫婦を含めた3家族はお姑さんが住む実家から、それぞれそう遠くないところに住んでいます。ご主人は妹さんたちとお母さんの介護について相談したんですが、格好をつけたのか『長男のオレが面倒を見るから』と言ったらしいんです。奥さんはその報告を受けた時、『勝手に決めないでよ』と憤ったらしいですが、すぐその後、義妹さんたちから電話があって『大変だったら言って。手伝うから』と言われたし、ご主人も『面倒を見る』と言った手前、介護を分担してくれると思い、やるしかない、と心に決めたそうです」(Yさん)
言うまでもありませんが、姑と嫁が良好な関係にあるケースはほとんどありません。むしろ折り合いが悪くて当たり前というのが世間の“相場”です。その奥さんもそうでした。そこへYさんが担当ケアマネージャーとして入ったわけです。Yさんは言います。
「私自身も嫁ですから姑に対する心理は理解できます。その私から見ても、奥さんは感情を抑え頑張っておられたと思います。利用する介護サービスもお姑さんの状態をよくすることを考えて選択されましたし、勤めもできるだけ早く終えて毎日実家を訪ね、お姑さんの食事を作ったりパジャマの洗濯をしたりしていた。ただ、越えられない一線はあって、排泄の介助はホームヘルパーさんに任せていました」
「お義母さんの介護を私ひとりにおっ被せている」
そんな介護が始まって半年くらいたった頃、Yさんは奥さんに愚痴られたそうです。
「主人が介護を全然手伝ってくれない。義妹たちも口では手伝うなんて言いながら、たまに連絡してくるだけで何もしない。お義母さんの介護を私ひとりにおっ被せている、と。その愚痴を聞いた時、不穏な空気を感じたのですが、案の定、ほどなくしてトラブルが起きました」
実は、姑はもともと外部の人間を家に入れるのが嫌で、嫁がホームヘルパーを入れことさえ気に入らなかった。介護の手抜きをしていると思い込んだそうです。また奥さんは仕事があるから日中のケアはデイサービスに頼らざるを得ないのですが、お姑さんは厄介払いされている、ととらえた。そのことを姑が携帯電話で娘たちに訴えると、事態はさらにこじれました。
妻に仕事を辞めさせたことが離婚の最大の原因
娘(義妹)たちは介護をしない自分を棚に上げて、兄である夫にそれを報告。夫はそれを真に受けて、奥さんに「なにやってるんだ」と。奥さんのほうも「私の苦労を知ろうともしないし、手伝ってもくれない」と応戦。そんな言い争いが繰り返されることになりました。
「実際、私が訪問してもご主人が対応されたことは1度もありませんでした。そんなところからも、介護を奥さんがひとりで頑張っていると感じました」(Yさん)
その後も奥さんは夫に介護の大変さを訴え続けましたが、夫は聞く耳を持たず、それどころか、奥さんに「仕事をやめてくれ」と言い始めました。自分の稼ぎで十分やっていけるし、奥さんに介護に専念してもらいたいというわけです。
奥さんの置かれた状況と気持ちを無視した夫の勝手な提案でしたが、奥さんはなぜかこの提案を受け入れて、仕事を辞めてしまいます。口論を続けることに疲れ、投げやりになっていたのかもしれません。ところが、この決断が夫婦仲に大きな亀裂を入れる決定打となりました。
「奥さんはある会社の経理を担当していました。ベテランとして仕事ぶりは周囲から評価され、頼りにされていましたし、奥さんもやりがいを感じているようでした。そして何より会社で働いている間は、お姑さんと離れ、介護のことを忘れることができた。気持ちをリフレッシュし、立て直す場でもあったわけです。しかし、会社を辞めたことで、そうした逃げ場がなくなった。お姑さんとは四六時中顔を合わせることになり、それが大きなストレスになりました」(Yさん)
姑の世話で疲労困憊の妻が起こした「ある行動」
精いっぱいやっているつもりの介護もお姑さんには評価されず、それどころか義妹さんたちに否定的に伝えられる。それがご主人に伝わり、文句を言われるという悪循環……。
我慢の限界がきた奥さんは、ある行動を起こします。
姑の年金収入や家の資産をチェックし、その条件で入所できる有料老人ホームを探したのです。そして夫にそのパンフレットを見せ、「お義母さんを施設に入れてください」と言ったそうです。しかし、夫から返ってきた言葉は「おふくろは、この家にいたいと言っている。施設に入れるのは無理だ」。奥さんの気持ちはこの返答で切れ、別居。ほどなくして離婚に至ったそうです。
介護によって良好だった家庭が崩壊してしまうことがあるのです。
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