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スクープ!笹子トンネルの天井板落下事故で新事実大成建設施行の天頂部だけが波打っていた(明石昇二郎)

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トンネル内を調査した「笹子トンネルの真相を探る会」メンバー。(撮影/明石昇二郎)

 やる気のない警察の捜査を尻目に、民間人による手弁当の調査が新事実を炙り出した。2012年12月に発生し、9人の尊い命を奪った中央自動車道「笹子トンネル天井板落下事故」。発生から4年半が過ぎた今も捜査は終結しておらず、今回判明した新事実の活用が望まれる。

中央自動車道上り線の「笹子トンネル」で天井板落下事故が発生したのは、2012年12月2日のこと。すでに4年半が経過している。同事故では、トンネルの天頂部に接着剤で固定したアンカーボルトによって吊り下げられていたコンクリート製の天井板と隔壁板が約140メートルの区間にわたって落下。走行中の車両を直撃し、9人が死亡、2人が負傷した。

被害者に落ち度はなく、事故を招いた責任は、道路管理者である中日本高速道路(NEXCO中日本)等にあることは明白だった。現に警察はNEXCO中日本に対し、業務上過失致死傷の容疑で家宅捜索を実施している。

だが、これまで誰一人として、逮捕も書類送検もされていない。いまだ「捜査中」(山梨県警本部)なのだという。

そこで、大学教授や元トンネル施工業者、そして技術士などの民間人によって結成された「笹子トンネルの真相を探る会」(真相を探る会)が4月17日、笹子トンネルの内空調査を実施。その結果、事故現場付近のトンネルが沈下していたことを突き止めた。

測定費用は10万円

真相を探る会が着目したのは、天井板落下事故が発生する以前に繰り返し発生していた「天井板への接触事故」だ。

08年6月に発生していた天井板接触事故では、高さ4・95メートルのコンテナ車が高さ4・7メートルのトンネルを通過した際、約3キロメートルにわたって天井板に擦過痕をつけたとされていた。これが事実だとすると、そのコンテナ車はそもそもトンネルに侵入することができない。

なぜ、こんなことが起きたのか。しかも、この天井板接触事故が起きた区間(約3キロメートル)は、天井板の落下区間(約140メートル)を含んでいる。さらには、05年9月のトンネル点検で発見されていた天井板の損傷全49カ所のうち、なんと42カ所までが天井板の落下区間とその直近で見つかっていたのだ。真相を探る会では、天井板を吊り下げていたトンネル自体が沈下してきているのではないかと考えた。

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図1 トンネル内空計測で測定した「長さ」。(提供/「真相を探る会」)

この仮説の下、4月17日の笹子トンネル内空調査では、実際に笹子トンネルを車で走り、天頂部の沈下具合を測定。使用したのは10メートル先の距離を1ミリメートルの誤差で測定できるライカ社製レーザー距離計「DISTO D2」3台。これと自前のノートパソコンを連動させ、測定費用を10万円以内に収めることができた(図1参照)。

天井板は波打っていた

笹子トンネルでは送気と排気のため、落下した天井板の上を空気が通る構造になっていた。天頂部から吊るされた隔壁板を境にして、片方がトンネル内にたまる自動車の排気ガスを吸い出す排煙用の道(排気ダクト)。もう片方が新鮮な空気を送り込むための道だった。

同トンネルには大きさの異なるS、M、Lの3種類の掘削断面がある。路面から天井板までの高さ4・7メートルはどこも一定で、その代わり、一番大きなL断面では天頂部から天井板までの長さが5メートル以上になっていた。

今回の実地調査により判明したのは、天井板の落下が発生した区間(L断面)の「路面から天頂部までの高さ」が一定でなかったことだ。真相を探る会では、「トンネルの一部で沈下が起きているとみて間違いないだろう」と判断した。

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図2 大月側と甲府側の「L断面」比較。○をつけた箇所でトンネルの天頂部が際立って下がっているとみられる。(提供/「真相を探る会」)

図2に示すように、問題のなかった甲府寄りのL断面は大変滑らかに施工されているのと比べ、事故が起きた大月寄りの天頂部はデコボコして波打っていた。となれば、その天頂部から吊り下げられていた天井板も一緒に波打っていたことになる。天井板接触事故が頻繁に起きていたのはまさにこの区間(約420メートル)であり、天井板が落下した区間(約140メートル)を丸々含んでいる。

もうひとつ、判明したことがある。天井板落下とトンネル内の「非常駐車帯」との関係だ。

大月寄りのL断面に入ってしばらく走ると非常駐車帯の「A―3」(長さ32メートル)がある。そして、このA―3を通過してすぐのところで、42カ所の天井板損傷が集中発生していた。

非常駐車帯のA―3部分は、一番大きなL断面よりもさらに巨大な掘削断面になっていた。掘削断面積はL断面が123・1平方メートルであるのに対し、A―3部分は171・5平方メートル。これに伴い、打設するコンクリートの厚みも増し、L断面では55センチメートルなのが、A―3部分では1メートル近い90センチメートルにもなっている。このような施工区間は笹子トンネル上下線の中でもここだけだ。

この非常駐車帯に関し、会計検査院が1976年11月、気になる指摘をしていた。同院の調査により、笹子トンネル上部のコンクリートの厚さが不足する等の施工不良が見つかり、設計よりも強度が低くなっていたことが判明。全国各地で同時期に行なわれた調査では、コンクリートの厚みが半分の量しかなかったところや、コンクリートと土の間に1メートルほどの隙間が空いていたところもあったのだという。

同院では、笹子トンネルのどの箇所でどのような施工不良が見つかったのか、詳細を明らかにしていないが、問題が見つかった箇所について、設計上の覆工コンクリートの巻き厚が「55㎝から90㎝」だと具体的に記述していた。「55㎝」は笹子トンネルのL断面、「90㎝」はA―3非常駐車帯の設計とピッタリ符合する。

施工不良の原因は「監督及び検査が適切でなかったため」と結論づけられていた。指摘を受け、当時の道路管理者である日本道路公団は補強工事を行なったとされる。それでも、トンネルの天頂部は波打ち、天井板落下事故は起きた。

同トンネルの施工には、大成建設、大林組、飛島建設、前田建設工業の大手ゼネコン4社が関わっており、天井板落下事故が起きた区間を請け負っていたのは大成建設である。トンネル天頂部の施工がデコボコしていたのは、大成建設が担当していたところだけ。他のゼネコンが施工した天頂部では目立った「波打ち」は見つからなかった。

そこで、大成建設にコメントを求めたところ、
「(真相を探る会は)刑事告発をされていることですので、当社からのコメントは控えさせていただきます」(同社広報室)
とのことだった。

16年に刑事告発していた同会は、4年半が過ぎても立件しない天井板落下事故の捜査を指揮監督する立場にある最高検察庁の「監察指導部」に対し、今回の測定結果を無償で提供。迅速に立件するよう促した。

調査を立案した、真相を探る会メンバーの西山豊・大阪経済大学教授は語る。
「忘れてならないのは、国内8000万ドライバーすべてに崩落に遭う危険があったということ。再発防止のためには、徹底した科学的な原因究明が必要です」

(あかし しょうじろう・ルポライター、2017年6月2日号)

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