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釜山総領事の更迭にみる「共謀罪」の片鱗(西谷玲)

国会は6月18日の会期末を控えて、最終盤に入った。加計学園の獣医学部新設問題など解明すべきことはたくさんあるが、7月2日に東京都議選があることに加え、そして政府は種々の問題を解明したくないのであろうから、大幅延長は望むべくもない。

その限られた会期末までの期間の中で、政府が何としても成立させようとしているのが「共謀罪」法案である。政府の答弁は安定せず、大臣と官僚の言うことが違い、いったいこの法案が通ったら、どうなるのかよくわからない。捜査権が乱用され、監視社会を招く懸念は一向にぬぐえない。

「安倍政権むかつく。秘密結社つくって革命だ」。筆者が実際に最近送ったメールの一節である。こんなメールだって、問題にされかねないのである。

安倍晋三首相に近いある幹部級の官僚にそう言ったところ、「運用次第ですよね」とこともなげに答えた。ほら、やはりそうなるじゃないですか、と言うと、「すべての法律はそういうものだから」。なるほど、そういうものだろう。だから、人権ができるだけ侵害されないように配慮することが重要なのだ。今の法案審議の中では、政府からその姿勢は見られない。

そんな中、ある人事のニュースが流れた。新聞もテレビもごく小さい扱いだった。何かと言うと、韓国・釜山の総領事が6月1日付で交代するというのである。昨年6月に着任したばかりであって、通常、外交官や官僚の人事というのは2年が一つの単位だから、1年で交代というのは異例である。

新聞によっては理由を報じていないところもあったが、数紙には書いてあった。それによると、前総領事は、昨年12月に釜山の日本総領事館の前に少女像が設置された後、一時帰国した。この間、知人との私的な会食で政府の対応を批判したことを首相官邸サイドが問題にしたというのである。

記事にはさらっと書いてあったが(書いてあるだけましだが)、これ、よく考えてみると恐ろしい事態である、私的な会合での会話が問題にされての更迭である。

つまり、その場にいた誰かが、「あいつがこんなことを言っていた」と流し、政府がそれをキャッチしたわけである。共謀罪が通ったら、この種のことが多くなる、というか、国家権力の元で行なわれないとも限らない。おちおち国家の悪口を言えない。すでにその萌芽は見られるのだ。

また、最近の別の記事。2013年、特定秘密保護法が通った。その後、同法の運用をチェックする独立公文書管理監が、防衛省や経済産業省の特定秘密を含む文書の廃棄を「妥当」と判断したそうである。今年5月の管理監の報告書で明らかになった。

このまま文書が廃棄されると、何が特定秘密なのかわからないままである。一体どういう政策がどのように政府内で検討されて意思決定されていったのか検証できず、闇の中に消えていってしまうかもしれないのである。これは、法案の審議段階から指摘されていた。いざ法律が施行されて、本当にその通りになっているのである。

共謀罪だって、だから「ほらやはりあの時言った通り、心配した通りになったじゃないか」となりかねないのである。その時に後悔したとしても、あまりに代償は大きい。すでにその片鱗はあるのだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、6月9日号)

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