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トランプ弾劾はいかに?過去に2回、不倫で訴追も - 樫山幸夫

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国の団結守るための“政治的判決”

 大統領自身を含む関係者の大陪審への喚問、特別検察官の議会証言、捜査報告書の公表など、一年近くにわたった熱狂の末、下院本会議は98年12月、弾劾訴追を可決した。

 訴追条項は、セクハラ事件で大統領が連邦大陪審で行った証言での偽証と、隠ぺい工作など証拠隠滅―だった。

 弾劾裁判は翌99年1月から上院で始まり、翌2月12日に投票が行われた。

 筆者は採決当日、議場に陣取って見守っていたが、事前の票読みで、いずれの条項も過半数を獲得できないだろうと予測されていたにもかかわらず、議場が異様な緊張感につつまれていたのをおぼえている。

 採決は予想通り、いずれも、3分の2はおろか過半数にも届かず、大統領は「無罪」の評決を受けた。

 この事件はスキャンダルが発端であり、それだけがことさら大々的に報じられたためか、日本でも、クリントン大統領は不倫よって弾劾裁判にかけられたと思っている人が少なくないだろう。しかし、そうではなく、司法妨害という深刻な犯罪で訴追されたことを理解する必要がある。

 それにしても、証拠、証言などから有罪は濃厚だったにもかかわらず、なぜクリントン氏は失職を免れたのか。

 当時、米上院民主党の長老だったロバート・バード議員の言葉が含蓄に富んでいる。「大統領の行為は、重大犯罪という弾劾の要件を満たすが、国の団結を守るために無罪評決に賛成した」―。その後に襲ってくる政治的、社会的混乱を防ぎ、国民の間に生じた対立を解消しようという政治的な判断で投票したという告白だ。反対票を投じた多くの議員も同様の認識ではなかったか。

 クリントン氏は、こうした破廉恥な行為を暴露されたにもかかわらず、その後も高い支持率を誇った不思議な大統領だった。退陣後の2012年の調査でも「好感を持っている」という市民は6割を超えていたというから驚く。

 ところで、弾劾といえば、1970年代に米国を揺るがせたウォーターゲート事件におけるニクソン大統領のケースを無視するわけにはいかない。

 1968年の選挙で当選した共和党のニクソン氏は72年に圧倒的な強さで再選された。しかし、この選挙中、陣営のスタッフが民主党選対本部に侵入する事件を起こし、その隠ぺいに大統領自ら関与したとして、下院司法委員会で弾劾決議がなされた。

 ニクソン氏はその時点で辞職、弾劾裁判が行われることはなかったが、クリントン氏の弾劾裁判の際、共和党による遺恨晴らしだーなどとささやかれたこともある。

立証困難な“捜査妨害”

 さて、今回のトランプ大統領のケースに話を戻そう。

 “ロシアゲート”を捜査しているミュラー特別検察官(元FBI長官)が、大統領も捜査対象としているーというニュースは今月15日、ワシントン・ポスト紙が報じた。

 上院情報委員会でのコミー証言によると、大統領は、ロシアとの不適切な接触のために解任されたフリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の捜査に関して、「放っておいてくれ」と迫ったという。コミー氏は「大統領の指示と受け止めた」と証言している。

 コミー氏によると、大統領は他にも捜査への介入めいた言辞を弄したという。

 ミュラー検察官は、大統領選挙でロシアの不正な干渉はなかったか、ロシアとトランプ陣営との癒着、不適切な接触がなかったかなどロシアゲート全般を捜査しているが、当面は、大統領のこれらの言動を捜査の核心に据えているという。

 しかし、捜査の行く手は険しい。

 トランプ氏側は、コミー証言によって「捜査妨害などなかったことがむしろ明らかになった」(共和党全国委員会)と強気の姿勢を見せている。

 言葉のニュアンスは微妙であり、その場にいた者にしかわからない。しかもトランプ氏は“人払い”したうえで口を開いている。コミー氏の感じ方だけでは、大統領の捜査妨害を立証するのは容易ではないと指摘する専門家は少なくない。 

 「大統領の犯罪」が立証されても、現職にある間は刑事訴追されないから、それに代わる代償、制裁措置が弾劾だ。

 すでに米議会は、民主党のベテラン、ブラッド・シャーマン下院議員(カリフォルニア州)が、捜査介入を具体的な理由として、他の議員にも弾劾へ同調するよう呼び掛けている。アル・グリーン議員(民主党、テキサス州)ら一部に賛成する動きがみられる。

 これまで米国で、政府高官らのスキャンダルを捜査する目的で特別検察官が任命されたケースは16回。捜査に要した期間は平均で1100日を超えるという。

 ミュラー検察官の捜査は始まったばかりであり、まさに「千里の道の一歩」だ。今後長い間にわたって、紆余曲折をたどることになろう。   

 仮に立証にたどり着いたとしても、上下両院いずれも共和党が多数を占める中で、下院での訴追決定、上院での有罪評決は現時点では、かなり困難といわざるを得ない。

 トランプ弾劾といっても、政治ショーとしては面白いかもしれないが、実現へのハードルは高い。

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