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スポンサー付きのマンガについて

もう昨日なんですけど、精華大での俺の講義「マンガプロデュース概論」に元小学館編集者の武藤伸之さんをゲストでお呼びしました。武藤さんと俺はかなり昔からの知り合いで、たぶん23年くらいになります。実は一緒に仕事をしたことはないんですが、スピリッツとかヤングサンデーとか、同じ雑誌で仕事をしていましたから、編集部ではしょっちゅう顔を合わせていてよく知っているんですけどね。

それで、授業では武藤さんが80年代はじめに小学館に入社してから、「殺し屋イチ』の山本英夫さんなどとの仕事の話をメインに「マンガ編集者の仕事」についていろいろ伺ったんですが、後半は例によって現在の「マンガ不況」の話になりまして、武藤さんがこの春小学館を辞めて別の会社で新マンガ雑誌を創刊することになったいきさつ(現在準備中)などを伺いました。学生にはちょっとディープな話になったかも。

http://www.shogakukan-cr.co.jp/news/n901.html
↑小学館クリエイティブとフィールズが出版事業で提携

武藤さんは小学館を辞めたとは言っても、小学館の子会社と別会社が共同で設立した新会社でマンガ誌の編集をされるわけです。今、この時期に紙の雑誌を出すというのは、普通に考えると無謀なんですけど、そこはそれなりのウラがありまして、このフィールズという会社は大手のパチンコ機器メーカーなんですね。

http://www.fields.biz/
↑株式会社フィールズ

久しい前から、この不景気下でもパチンコ屋さんの景気だけは天井知らずにいいということは、ご存じの方も多いと思います。(※)そのドル箱はマンガやアニメ・キャラクターのパチンコですよね。「パチンコ北斗の拳」とか「CRエヴァンゲリオン」とか。キャラ物パチンコ台がヒットすると、作家にも何億という原作料が転がり込むのだそうで、実は作家や版元にとって物凄くおいしい商売なんですよ。

※複数の方から最近はパチンコ業界も不景気で倒産するところも出ているとのご指摘を受けました。ここは俺の勘違いでした。しかし出版産業は間違いなくパチンコ業界より景気が悪いですから、この合同事業はお互いの苦境を脱する突破口を模索するという意図があるのかもしれません。

ところがパチンコのネタになるマンガの原作が一巡してしまって、この世界は深刻な「原作不足」に見舞われているとか。それで、パチンコ屋さんがスポンサーになってマンガ雑誌を創刊し、パチンコ化のためのマンガ制作から始めてしまおう、というのが小学館クリエイティブとフィールズの合同事業の目論見であるとか。

確かにこれから「紙のマンガ」を出していこうとすると、もはやスポンサーなしでは成り立たない時代なのでしょう。ひとつの動きとしては理解できます。気になるのは「金は出すが口は出さない」スポンサーなんてそうはいないということですが、武藤さんの話によれば、「基本的には自由に描かせてくれる」とのことです。しかし、まあオモチャメーカーがスポンサードする戦隊物やロボットアニメと同じく、スポンサーの意向がまったく反映しないわけではないだろうとは思います。

ところでこれまで「紙のマンガ」に出資するスポンサーの話をあまり聞かなかったのは、なぜなのでしょうか。マンガは、映像作品に比べればかかる費用は一ケタから2ケタも小さく、そのうえ当たるとデカイですので、テレビや映画みたいにスポンサーつきのマンガがもっと増えてもよさそうなものでした。

たとえばテレビアニメを1本作るのに制作費が1200万程度かかるわけですけど、マンガであれば、1200万あれば1年間は週刊連載ができます。ケタ違いに制作費が安くあがるわけです。

それなのに、どうしてマンガに出資するスポンサーがほとんど現れなかったのかというと、俺の推測になりますが、現れなかったわけではなく、出版社が外部からの出資を断っていたからではないかと思うわけです。つまり出資を受けなくとも自己資本で十分まかなえるビジネスだったんじゃないかと思うんですよ。すべて自己資本であるなら、もうけも独占できるわけですから、相当に「オイシイ」ビジネスであったのではないかと。

もちろんそれも過去の話で、今の出版界は、大手といえども自己資本でマンガを制作することが辛くなっていると思うんですね。それで、そのしわ寄せが作家や下請けの編プロに来る。作家は作家で、佐藤秀峰さんのようにマンガを「直販」することで生き残りを図ろうとするし、版元は、今回の小学館クリエイティブとフィールズの合同事業のように、共同利益を模索したスポンサー探しで生き残ろうとしています。

ところがこの間、講談社の子会社である光文社が50名の早期退職者募集を始めましたが、朝日新聞や日経BP社などは昨年から早期退職という名のリストラが始まっています。

いよいよ今年は出版界にとっての「正念場」になりそうです。一方で「期待」が寄せられる電子出版ですが、ここに来て「アップルの方針で、iPadで配信するマンガでは水着シーンもNG」であるとか、メチャクチャな自主規制の声が聞こえてきました。

http://news.livedoor.com/article/detail/4763712/
↑iPadでは日本の漫画が楽しめない可能性が高い? 講談社の漫画の30%がリジェクト(拒否)

アップルの自主規制はかなり深刻な話なのですが、今の俺には語るうえでの情報が乏しすぎます。何かわかったらエントリに書きたいと思います。

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