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トランプの二大欠陥、虚栄心とプーチン政権に対する鈍感さ - 岡崎研究所

 トランプ大統領がロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使に同盟国より提供された機密情報を伝えたことが米国で大きな問題になっています。最初に報道したワシントン・ポスト紙は、この件について「トランプは機微な情報について信用できない。今や世界がそれを知っている」との社説を5月16日付けで掲載しています。社説の概要は次の通りです。

 ロシアの高官にトランプ大統領が高度な機密情報を開示した件は、彼が機微な国家安全保障事項を取り扱う準備が全く出来ていないことを示している。トランプは「イスラム国」の航空機攻撃計画についての情報を先週の会談の際に、ロシアのラブロフ外相に提供した。ワシントン・ポスト紙は、この情報(外国政府から提供された)がロシア側に情報の源を特定する可能性を与えると報じた。

 大統領の不注意の影響は大きい。情報の流れを止め、現場の工作員を危険にさらすことに加えて、トランプは世界に彼が機微な情報について信頼できないことを世界に知らせてしまった。  

 CIAと機密を共有している英国からイスラエルの政府は協力のあり方を見直さざるを得ないだろう。中ロのように協力関係を持たない国は、トランプへのアクセスを情報引き出しのために利用しようとするだろう。

 漏洩を弁護するホワイトハウスは混乱している。本件についての報道が出た後、マクマスター安全保障担当補佐官は「間違っている」と否定した。しかし、その後、トランプがツイッターでロシア側に「テロと航空安全に関する事実」を提供したことを確認、「そうする権利がある」と述べた。

 トランプのロシアとの関与はすべて彼の外交に関する知識の不十分さと彼を支える部下の弱さを反映している。慢性的に不正直なラブロフと会うとの決定自体、良くない判断である。オバマは2013年以来、執務室ではラブロフと会談しなかった。

 トランプの情報開示は彼の二大欠陥、虚栄心とプーチン政権に対する鈍感さからきている。彼は子供っぽく「情報通」であることを誇ったようである。後でトランプは、ロシアが対「イスラム国」でより多くの協力をすることを希望した、と述べた。これはナイーブで危険な結論である。トランプは情報関係者の話をよく聞かない。

 大統領を外国の指導者との会談のために準備するプロセスはショックを与えるほど、細っている。国家安全保障会議と国務省の重要ポストが空席の中、経験不足の義理の息子のクシュナーが多くの準備作業をしている。

 コーカー上院議員(共和党)は5月15日、トランプ大統領は「下向きのスパイラル」に入ったと適切にも述べた。降下を止めるためには無秩序と無知を規律と有能さで置き換えるようなホワイトハウスの再構築、またトランプによる矯正行動が必要である。

出典:‘Trump can’t be trusted with sensitive information — and now the world knows’(Washington Post, May 16, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-cant-be-trusted-with-sensitive-information--and-now-the-world-knows/2017/05/16/5f2a191c-3a3c-11e7-8854-21f359183e8c_story.html

 トランプの今回の行動は違法ではありません。なぜならば、大統領には国家安全保障関係の機密情報の機密を解除する権限があり、その権限を行使して、適切と思う人に機密情報を提供しても、法には触れないからです。トランプがツイッターで「開示は私の権利だ」というのは正しいです。

 しかし、開示が賢明であったか、適切であったかについては、大きな疑問があります。特に外国から提供された情報をその国に断りもせずにロシアのような国に提供するのは尋常ではありません。今後、当該国からの情報提供はより用心深いものになるのは確実ですし、他の国も用心深くなるでしょう。それだけでも大きなデメリットがあります。

順序が逆

 トランプはロシアが「イスラム国」に対する攻撃でより協力的になることを期待したとしていますが、これは順序が逆です。まずロシア側に対米協力の意思があることを確認したうえで、情報協力に進むのが普通です。

 情報の世界で最も機密度の高い情報は情報収集の「sources and methods」です。たとえば、敵国に侵入させたスパイはsourceであり、その名前を明かすなど、もってのほかです。  

 Methodは、たとえば盗聴器を仕掛けたというような収集方法のことで、これを明かすこともご法度です。マクマスター国家安全保障担当補佐官が出て来て、トランプの会談ではsources and methodsは話題になっていないと釈明しましたが、これは最も機微な情報が伝えられたわけではないというだけであり、かつ、ワシントン・ポスト紙の報道はsources and methodsについて何も言及していないので、報道が間違いという根拠にはなりません。今回のトランプの行動の不適切さはこういう説明では払拭されません。なお、ワシントン・ポスト紙は、トランプがロシアに伝えた情報を全部は報じていません。情報がとられた都市名は伏せて報道しています。おそらくCIAの要請があったのでしょう。

 トランプが情報通であることを誇りたいという虚栄心からこの情報提供をしたとすれば、この人は大統領にはふさわしくないと言わざるを得ないでしょう。

 共和党の国家安全保障を重視するマケイン上院議員はトランプのこの行動について不快感を示している他、同じくコーカー上院外交委員長も、この社説にあるようなコメントをしています。トランプの支持率は40%程度で低迷しており、トランプと一緒と見られると、選挙に不利になる状況が徐々に出て来ています。共和党の多くがトランプ離れを起こす材料が今一つ出てきたということだと思われます。ただし、弾劾への道のりはまだ長いです。

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