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「自民党一強」「安倍一強」、一強の2乗がもたらす強引さ!

本日、テロ等準備罪(いわゆる共謀罪)を創設する改正組織犯罪処罰法が可決成立しました。

私は、東京地検公安部長として、この法律を実際に運用していたので、この改正案におけるテロ未然防止の実際の効果につき、国会議員・官僚を含めて一番知見を有していると自負しています。

その立場もあって、私はこの改正案を審議する自民党内部の会議において、強く言い続けたことがあります。

それは、「今回のテロ等準備罪を創設しても、テロ未然防止の効果が極めて乏しい。そのため、安倍総理をはじめとして『これを創設すれば、テロ未然防止に効果があり、これを創設しなければ東京オリパラが開催できない』と発信する言葉は、国民に対し、この罪を創設させればテロ未然防止に効果があると錯覚させ、国民を騙すことになるからやめるべきである」「その意味で、テロリズムという言葉を入れて『テロ等準備罪』の名称を付することも絶対に反対」ということでした。

国民に間違った印象を与え、ミスリーディングすることは、私の政治信条に反するので、こうした私の考えを訴えていたのです。

しかし、多くの同僚議員は、法案を通しやすくするため、今回の改正案の目的についてテロ防止が大きい旨、国民に訴えるべきであると主張していました。

善意で解すれば、同僚議員は、捜査の実情や裁判官の令状がどのように発付されるかをよく知らないため、法律上この犯罪を創設すれば、それだけでテロの防止になると本当に思ってしまっているのかもしれません。

ところが、私は、法律家であるばかりか、この種の捜査の責任者として、実際の捜査を知り尽くしている立場にあり、テロ未然防止に役に立つという言い方は、明らかに間違っています。

主な理由としては、例えば、オウム事件でも、麻原こと松本死刑囚などが計画に関わり、共謀が認められるに至ったのは、数ヶ月にわたる関係者の詳細な取調べなどの捜査を尽くしたからです。

オウム事件は、実際に殺人という犯罪結果が出ているから、まだとらまえやすいですが、いわゆる共謀罪は、未だ殺人などの結果が出ていません。その上、いわゆる共謀罪の成立要件である、「テロを計画した」という証拠が収集できる見込みがありません。

計画に加わった者が反省悔悟して、警察に出頭して詳細を自白すれば「計画」に関する証拠か得られますが、そのようなことは自爆まで想定しているテロリストの場合、現実的でありません。

要は、今の法制度のもとでは、証拠収集手段が乏しく、「計画」、「共謀」の立証が困難です。証拠が収集できないのであれば、裁判官が逮捕令状を発付することができません。

それにもかかわらず、いかにもテロ等準備罪を創設すれば、テロ防止に役立つような印象を与えるのは、国民を騙すことになるのです。

いずれにしても、本日の参議院において、法務委員会の議決を経ずに、いきなり本会議で採決するやり方は異常であり、国民目線ではないと思います。

私は、今の自民党政権は、いわゆる「自民党一強」といわゆる「安倍一強」の2乗問題が影を落としていると思います。つまり、1強同志が単に2つ加算されているというよりも、それが2乗になっていると思います。例えば、単なる10+10の20ではなく、10×10の100となります。それにより、強引なやり方に対し自民党内で異議を唱える人がほとんどいなくなり、官僚も政権を忖度するようになり、政治の劣化が益々進んでしまう素地になっていると危惧しております。

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