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権力中枢の情報をキャッチしようとする防衛省――現役自衛官が『産経新聞』記者に

 防衛省が「教育の一環」として、現役自衛官を全国紙『産経新聞』に派遣し続け、派遣された自衛官「記者」は首相官邸などで「総理番記者」等の任務をこなしている実態が、改めて明らかになった。


 自衛官「記者」は、他社の記者と同様、実際に取材、原稿執筆等をしている模様だ。


 この事実は本誌二〇〇四年六月一一日号「現役自衛官に“総理番記者”をやらせていた『産経新聞』」でも指摘しているが、一九九二年から始まった防衛庁(現・防衛省)による『産経』への人材派遣は常態化しているようだ。


 今回、発覚したのはある会合でのこと。挨拶を交わし、名刺交換をすると「産経新聞東京本社 編集局政治部」の肩書き。続けて「私は自衛隊から派遣されているんです」と驚くべきコメントを添えてくれた。「取材などもされているのですか」と聞くと、「菅首相(当時)の番記者をしています」と返ってきた。


 物怖じしない、どっしりした構えには好印象さえ持ったが、これはどういうことなのか。


 防衛省は本誌に対し、「部外委託教育の一環として、民間会社の有するノウハウや知見を実地で学ぶため、人材を民間会社に派遣している」(広報)とし、派遣している自衛官の階級や、研修期間などについては「陸海空自衛隊とも、二佐から三佐クラス。約二週間から一年を派遣期間とし、業務運営手法の理解、技術の習得を通じ、各幕僚監部や部隊等における業務能力向上を図る(ことを目的とする)」(同)と説明した。


 一方、『産経』によれば「(派遣された自衛官のうち)長期の研修生には政治、経済、社会など数カ所の部門で取材現場を体験していただいております」とのこと。


 しかし、派遣先がなぜ『産経』なのか。他の全国各紙に確認したところ、『朝日』『読売』『毎日』『日経』すべて、防衛省からの派遣受け入れは「ありません」(各社広報)という回答だった。防衛省はこの点について「お答えできない」(広報)としている。


 軍事史に詳しい明治大学教授の山田朗氏は、戦時中の軍とマスコミの関係について「軍がマスコミ対策の重要性に最初に気付いたのは、一九二七年に首相になった田中義一です。田中は、陸軍大臣だった一九年に、軍が新聞に叩かれることを恐れて陸軍の中に新聞班を作りました。大臣や次官直轄の組織で、この班は後々、世論誘導に大きな役割を果たしました」と話す。原発「安全神話」を築くために原子力ムラの人々が各メディアを活(利)用していた実態にも通じるメディア対策だといえる。


 防衛省が『産経』に自衛官を派遣していることについて山田氏は「自衛隊員にいろんな体験をさせるという名目を掲げながら、実のところは情報戦的な色彩が強いのではないでしょうか」と指摘。「自衛隊は、マスコミにどう描かれるのか、国民にどういったイメージを持たれているのかを一番気にしている。そのためには情報が多く集まるマスコミ業界に人材を派遣し、そこで研修を積ませることが防衛省にとって利益になるという目論見ではないでしょうか。また、マスコミ内部で人脈を築けるというメリットもあります」と話す。


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マスコミ内部に働きかけようとする防衛省の試みは、戦前から続いている。(撮影/編集部)


 そもそも、権力をチェックする使命を持つマスコミ内部に、チェックされる側にある役所の人間が入り込み、その動向を探るというのはおかしいと感じるのが普通ではないか。ましてや違憲の疑いのある“軍事組織”である自衛隊が、世論形成に大きな影響力を持つマスコミの当事者になることなど、言語道断だろう。


 情報公開クリアリングハウスの奥津茂樹氏はこの件について「とんでもない話。防衛省との癒着ではないのか。後ろめたいことがないなら事実を情報公開すべきだ」と話している。


(野中大樹・編集部、9月23日号)


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