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永守家の次男がつくる「AI搭載会話ロボ」 MJI代表 永守知博

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【田原】お父さんは、日本電産にこいと言わなかったのですか。

【永守】言われませんでしたが、富士通は反対していました。会社が大きすぎるからダメだって。

【田原】大きいとなぜダメなんだろう。

【永守】大きすぎると全体像が見えない、将来経営者になりたいなら1000人くらいの会社がいいと言ってましたね。当時、私の同期は700人いて、川崎工場は昼間の人口が3万人と聞きました。その中で、私は磁気ディスクの事業部に配属されて、ひたすらオシロスコープという機器で波形を見る仕事をしていました。たしかに会社や社会の仕組みを知ることは難しかったです。

【田原】2年で富士通を退職する。やはり大企業の仕事は退屈だった?

【永守】つまらないというより、サラリーマンの世界で上にいくのは無理だなと思いました。組織の歯車という表現はサラリーマンを揶揄するときに使われますが、歯車になれる人は優秀なんです。欠けていると歯車になれないですから。私はそこまでたどり着けないなと。

【田原】そこで転職ではなく、アメリカのサフォーク大学に留学されます。お父さんは何か言ってましたか。

【永守】アメリカはいいと。父の世代はアメリカが好きな人がもともと多いですが、父は創業当時、日本の会社で相手にされず、アメリカに営業に行ってチャンスをもらった経験があるそうです。「アメリカにはドリームがある」と好意的でした。

【田原】帰国後、日本電産に入社。父親の会社に入るのは、どうですか。

【永守】父に「いま一番勢いがあるのはここだ。勉強になる」と言われまして。でも、本音はコマが足りなかっただけじゃないかと。入社後、私は買収先の東北の工場で事業再生を担当しました。そのコマとして、身内がちょうどよかったようです。

【田原】わからない。どういうこと?

【永守】当時、日本電産は売り上げ5000億~6000億円の会社でした。一方、私が派遣された先は売り上げ20億~30億円。はっきり言って、そこを立て直すより為替が数円動いたほうが影響は大きい。だから、わざわざ幹部を派遣するほどではありません。かといって、事業再生ができる若手が社内にいるわけでもない。それで私に白羽の矢が立った。成功したらそれでいいし、失敗しても創業者の息子だったからで済みますから。

【田原】日本電産を2009年に辞めて、エルステッドインターナショナルという会社を立ち上げます。

【永守】父は日本電産を同族企業にしないというスタンス。私もその気はなくて、もともと修業するつもりで入れてもらった。どちらが言い出したわけでもなく、そろそろ免許皆伝だねということで独立しました。

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【田原】普通と逆だ。創業者の多くは、子どもを外で修業させてから自社に入れる。それで、独立して何を?

【永守】私は“製造業LOVE”。製造業はヘッジファンドみたいに特殊な人たちの集まりではなく、博士を取るレベルの人からそうでない人まで、みんなが一緒に仕事ができる。そして世の中に大きなインパクトを与えられる。その意味で、とても尊い仕事。だから最初はメーカーをつくりたかった。ただ、メーカーを起業するにはお金や技術が必要で、いきなりは難しい。そこでまずはメーカーを応援する事業で起業しました。具体的には、小さなメーカーさんの海外進出を手助けする事業です。

【田原】その事業はいかがでした?

【永守】「メーカーズイン」というポータルサイトをつくって、上場企業1300社の経営者に「加入してほしい」と手書きのハガキを出しました。でも、返事をいただけたのは、名古屋でPC周辺機器をつくっているメルコホールディングスさん1社だけ。創業者の牧誠さんとはいまもおつきあいさせていただいていますが、ほかはなしのつぶてでした。

【田原】1社じゃビジネスにならない。

【永守】はい。失敗しました。外に出たい企業は20~30年前から出ていて、残っている企業は国内と決めている。じっくり需要を掘り起こしてやっていく余裕はなかったので、約1年後に事業を切り替えました。

【田原】そこからは何を?

【永守】電気関係の商社です。LEDなどの節電商材を海外に販売しています。この事業はいまも継続してやっています。

【田原】15年7月にMJIをおつくりになる。経緯を教えてください。

【永守】社長を務めるトニー・シュウとは以前から仕事でつきあいがありました。14年の年末にトニーと食事をしたとき、ロボットをやろうと声をかけられて、おもしろそうだなと。社会的使命といった大げさなものではなく、とりあえず楽しそうだからやりながら考えてみようという感じで一緒にやり始めました。

【田原】お金や技術者はどうしたのですか?

【永守】トニーも私も自分の会社がありますから、お金はある程度用意できました。生産は中国の工場に委託しています。つくるのに、ざっと2億円はかかりました。最初の資金だけでは足りなくなってきたので、いままた資金調達したところです。開発に関しては、優秀なエンジニアをどんどん雇っています。うちは日本語でしか求人を出していないのですが、なぜか外国人の応募が多く、台湾、香港をはじめ、アメリカ人、フランス人、そしてこんどインドネシア人が入ってきます。みんなすばらしい人たちですよ。現在、日本に15人。あと台北とソウルに人がいて、合わせて24~25人です。

受付から電子決済見守りや防犯まで

【田原】お金と技術があって、委託先もあった。条件はそろいましたね。

【永守】自慢したいのですが、私たちは15年7月に会社をつくって、16年1月のラスベガスの世界的展示会であるCESでタピアを発表しました。そこまで半年。16年6月末に販売をスタートしたので、企画から販売まで1年というスピードでした。

【田原】すごいスピード感ですね。どうしてそんなに早くできたのですか。

【永守】逆に、他社はなんでそんなに時間をかけているのかと聞きたいくらいです。おそらく日本企業は、コピーされないような完璧なものをつくろうという発想なのでしょう。私たちはアジアの発想で、コピーされたらこっちもやり返すぞという勢いでやっています。

【田原】こういうロボットはほかから出てないのですか。

【永守】出す出すと言っている会社はアメリカを含めていくつかあります。でも、今日の時点で一般向けに販売されているのは、私たちのタピアと、シャープのロボホンだけかな。

【田原】何台くらい売るつもりですか。

【永守】今年中に10万台が目標です。仮に、企業の受付だけでも10万台を超える市場があります。さらにBtoBはさまざまな活用が考えられる。ある商社さんが全国の小中学校4万校と契約していて、教室でいえば100万クラスあるそうです。その1%にタピアを置いてもらえば1万台。ほかに塾なども考えられます。

【田原】将来はロボットだけですか?

【永守】購入してもらった後の世界で利益を生まないといけません。わかりやすいのは買い物でしょうか。タピアにはNFCがついていて、電子決済が可能です。さらにいまは視覚のAIの開発に力を入れています。

【田原】視覚のAI?

【永守】見たものをテキスト化するAIです。これができると、おばあさんが部屋で転倒したとき、それを目撃したタピアが家族に「おばあさんが倒れました」とショートメッセージを飛ばせます。あるいはいままで映像を巻き戻してチェックするしかなかった防犯カメラも、テキストでログファイル化されていれば簡単に調べられるでしょう。こうしたAIをタピア以外のロボットやカメラに積んでもらえば、大きなビジネスになります。

【田原】タピアはお払い箱ですか。

【永守】タピアは必要です。映像をテキスト化するAIは他社も開発していますが、私たちはロボットという武器があるので、実際にタピアに搭載してユーザーの反応を早くダイレクトに聞くことができます。それは他社にない強みです。

【田原】最後に一つ。ロボット事業で日本電産とタッグを組むことは?

【永守】関係はしたいですよ。でも、相手はいわゆる大企業。NECさんとか日立さんとつきあうのと同じぐらい難しいと思います。身内だからといってハードルを下げるような甘い父親ではありませんから(笑)。

永守さんから田原さんへの質問

Q. 高齢になっても元気で働ける秘訣は?

永守さんのお父さんに聞いたほうが早いんじゃないかな。72歳だそうですね。まだお会いしたことがないですが、バイタリティ溢れる方だと聞いています。その血を受け継いでいる永守さんは心配いらないはずです。

質問にお答えすると、元気の秘訣は好奇心です。僕は新聞を6紙取っていて、各紙で違うことが書かれていたら、記者や関係者に直接電話して確かめます。わからないことを放っておけないタチで、待っていられないのです。

ちなみにジャーナリストの池上彰さんは、地方紙も含め10紙読むと言っていました。あの人も元気ですよね。知識の欲があると、人は年を取らないのかもしれません。

田原総一朗の遺言:知識に貪欲になれ!

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編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、dely 代表取締役 堀江裕介氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、6月12日発売の『PRESIDENT7.3号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。 

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(MJI代表 永守 知博、ジャーナリスト 田原 総一朗 構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)

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