- 2017年06月10日 13:56
がん新時代「見つけ方&治し方」超入門
1/2■がんは「慢性疾患」不治の病ではない!
全がんの全病期(I~IV期)をまとめた10年生存率は58.2%。2016年1月、国立がん研究センターなど専門施設で組織する「全国がん(成人病)センター協議会」から、がんの10年生存率が公表された。追跡対象者が診断・治療を受けた時期は今から15年近く前の1999~2002年で、がん医療が進歩した現在なら、さらに長期の生存が見込めると思われる。
ところが、14年11月に内閣府が行った「がん対策に関する世論調査」では、全がんの5年生存率がすでに50%を超えていることすら、4人に3人が知らなかった。
「いまだに『がん=不治の病』というイメージが根強いのだな、と驚きましたね。しかも現代人の2人に1人ががんを発症すると知っているのは、回答者の4分の1でした」
国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦氏は、今回のデータ公表で「がんは非常に珍しい、致命的な病気」という誤った認識が変わることを期待している。本人や周囲の誤解が、がん検診の忌避や診断後の社会生活に悪影響しかねないからだ。
事実、がんと診断された後に退職に追い込まれた例や、早まって「治療に専念するために仕事を辞めてきた」という例は後を絶たない。
しかし、今回明らかになったように、がんの多くは早期診断と適切な治療によって10年以上の生存が期待できる、いわば「慢性疾患」だ。
死亡者数が多い5大がん(胃・肺・大腸・肝・乳)のうち、乳がんの10年生存率は80.4%、大腸がんは69.8%に達する。III期の進行がんでも53.8%(乳がん)、69.6%(大腸がん)と比較的高く、I期の早期発見なら、ともに9割以上が治る公算だ。がん発症以降の人生は予想外に長い。
リンク先を見るただ、難治がんは今も存在する。任天堂前社長の岩田聡氏や女優の川島なお美さんを襲った胆管がんを含む胆のう・胆道がんの10年生存率は19.7%。難治がんの代表である膵がんは4.9%にすぎない。
「がんの生存率を左右する要因は、3つあります。1つはがんの性質の違いです。悪性度が高く進行が速いがんは総じて生存率が悪い。2つ目は、早期に発見できる診断技術が確立されているか。3つ目は当然ですが、そのがんに対する有効な治療法(手術、放射線、抗がん剤など)が確立されているか、ということです」(若尾氏)
胆管がんは管の壁に沿って発育するため、また膵臓は身体の奥深くに位置しているため、一般的な画像検査では早期発見が難しい。たとえば、新たに診断される膵がんの7割はIV期の進行がんだ。進行スピードも大腸がんに比べると段違いに速い。
したがって、手術で十分に取り切れる段階で見つけるのは困難だが、最後の砦の治療については手術療法が確立されている。また、一時は暗黒大陸とまで言われた切除不能な膵がんに対しても、有効な抗がん剤が出てきている。
2016年1月からの「5年生存率」が明らかになるのは22年。そのころには光明を見いだす事実が公表されることを期待したい。
■治療したために障害が起きることも
一方「進行が遅く、早期発見が可能な検査法がある」がんの代表は前立腺がんだ。全病期の10年生存率は84.4%。進行がんでも手術が可能であった症例を抜き出すと、10年生存率は100%に達する。
果たして、この中の何%が本当に治療を必要とする「悪性度の高いがん」だったのか疑問が残る。進行が遅い超低リスクの前立腺がんは、治療しようがすまいが、10年生存率は変わらない可能性があるからだ。むしろ、治療したゆえに性機能不全や排尿障害という不利益を抱えかねない。
欧米では低リスクの前立腺がんについて、血液検査やMRI検査を参考に経過観察を行い、がんがうごめき出したら即、治療を開始する「積極的監視法」がスタンダード。若尾氏がいう。
「早期発見・治療は基本ですが、早期発見による死亡率減少効果が認められず、治療による不利益が利益を上回る場合は、慎重な対応が必要です」(若尾氏)
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