記事

警察官が被害者に「処女ですか?」と聞く必要はない

1/2

 インターネット上で、警察官が性暴力被害者に「処女ですか?」と聞くのは、「処女の被害であれば強姦致傷になるからだ」という流言が飛び交っている。警察のセクシュアルハラスメント行為を正当化する言説であるので、訂正を求めたい。

 以下で(1)「強姦」と「強姦致傷」(2)処女膜損傷が「強姦致傷」と認められた判例(3)「強姦致傷」には診断書が必要(4)レイプシールド法の必要性について順番に書いていく。タイトル部の答えだけを読みたい場合は(3)から読んでほしい。

 なお、私は法律の専門家ではない。本来は専門家による解説が適切であるが、取り急ぎ書いておく。

(1)「強姦」と「強姦致傷」

 刑法では、「強姦」と「強姦致傷」は以下のように定められている。

177条(強姦)

暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

181条(強制わいせつ等致死傷)

②第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。

 上でわかるように、「強姦」とは「女性対するレイプ」のことであり、「強姦致傷」とは「女性に対するレイプの際に、怪我をさせたり、死なせたりすること」である。なぜ女性に限っているかというと、日本の刑法では強姦は性器主義をとり、「男性の陰茎を女性の膣に挿入する」ことだからだ。男性に対するレイプは、強姦と認められていない。6月2日から始まった刑法改正の審議*1では、この強姦の定義を変更し、男性に対するレイプを認めることが含められている。

 「強姦」と「強姦致傷」の違いは、親告罪であるかないかである。強姦の場合は親告罪であるため、被害者が望まない限りは、検察官は起訴しない。それに対して、強姦致傷の場合は、検察官だけの判断で起訴が行われる。そのため、強姦の場合は被害者が起訴する/しないを判断しなければならないという重圧があり、「自己責任」状態になってしまっているので、こちらも現在の刑法改正の審議で「非親告罪化」が検討されている。ただし、性暴力の場合、裁判をするとなれば被害者の負担は大きくなる。そのため、検察官が一方的に起訴をすることが被害者にとって有益であるのかは定かではない*2

 さらに、「強姦」の刑期は「最低三年の有期懲役」である。他方、「強姦致傷」の刑期は「無期又は五年以上の懲役」である。懲役とは刑務所に入ることである。「強姦致傷」のほうが、刑期は長くなるが、それよりも重要なのは「裁判員裁判の対象になること」である。裁判人裁判の対象は、「無期又は死刑に相当する重犯罪」であるため、「強姦致傷」も含まれる。そのため、(ある程度の遮蔽はあるものの)一般の市民の前で、性暴力被害者は証言せざるをえなくなる。そのため、「強姦」ではなく、「強姦致傷」で起訴することは、被害者の精神的負担を大きくする可能性がある。このことについては、以下の記事が詳しい。

「強姦致傷罪での起訴は裁判員裁判以降、激減した」
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/prosecutor-did-not-indict-takahata?utm_term=.qbe0LrKK2V#.rpX6KkDDP3

 以上のように、より刑期の長い「強姦致傷」での起訴が、「強姦」での起訴よりも被害者に有益だという確証はない。また、法の運用上は、検察官の操作的な線引きになっている。

(2)処女膜損傷が「強姦致傷」と認められた判例

 それでは、処女膜の損傷を理由として「強姦致傷」が認められた判例を見ていこう。これは私がインターネットで調べて見つけただけなので、実際の運用上で、どの程度、この判例が使われているのかはわからないが、参照する。

事件番号  昭和34(あ)1274

事件名  強姦致傷

裁判年月日  昭和34年10月28日

法廷名  最高裁判所第二小法廷

裁判種別  決定

結果  棄却

判例集等巻・号・頁  刑集 第13巻11号3051頁

原審裁判所名  東京高等裁判所

原審事件番号  

原審裁判年月日  昭和34年5月30日

判示事項  強姦して処女膜裂傷を生ぜしめた場合と刑法第一八一条の罪の成立。

裁判要旨  処女を強姦して処女膜裂傷(処女膜の左後方に粘膜下出血を伴う〇・五糎の裂創)を生ぜしめたときは、刑法第一八一条の強姦致傷罪が成立する。

参照法条  刑法181条

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55811
 ここで注目してほしいのは、1959年の判例だということである。今から50年近く前に下された判断であり、当時の性意識が反映されている。

あわせて読みたい

「性犯罪」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    立民党はなぜ全く期待できないか

    宇佐美典也

  2. 2

    社民党を食いつぶした福島瑞穂氏

    文春オンライン

  3. 3

    投資家がマイホームのリスク指摘

    内藤忍

  4. 4

    桜疑惑 安倍氏かばう議員に疑問

    猪野 亨

  5. 5

    人気のセ・実力のパに「違和感」

    中川 淳一郎

  6. 6

    トヨタが学校推薦を廃止した衝撃

    城繁幸

  7. 7

    非効率すぎる日本の医療救急行政

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  8. 8

    猫の目が…奇跡の失敗写真が話題

    BLOGOS しらべる部

  9. 9

    豊洲市場 なぜクラスター認めぬ?

    NEWSポストセブン

  10. 10

    自民重鎮 王毅外相何しに日本へ

    深谷隆司

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。