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- 2017年06月08日 10:31
金銭解雇の導入で給料は上がる。
2/2■なぜ外資系企業の給料は高いのか?
自分は普段FPとして住宅購入の相談に乗っている。そこで実感する事が外資系企業で働く人の給料の高さだ。男女問わず30代で1000万円を超えることは珍しくない。日本企業と比べても明らかに給与水準は高く、福利厚生も手厚い。多額の家賃補助やストックオプション、ノルマを上回った時にはボーナスが急増、死亡時には子供が成人するまで現在の給料を遺族に支払う等々、日本の企業では考えられないほど手厚い制度や福利厚生が準備されていることも多い。
当初はなぜここまで給与水準が違うんだろうかと不思議でしょうがなかった。外資系企業は大儲けしていて、そこで働く人は飛びぬけて優秀ということなのか? それだけでここまで大きな給料の格差は説明できるのか? と疑問は絶えなかった。
自分なりの結論は「解雇が出来るから」という事になる。解雇が出来る前提ならば今の仕事に将来の昇給で報いる、といった日本企業のような遠回しなことをする必要はなくなる。従業員の立場から見れば、解雇リスクを受け入れているから給料が高い、ということになるだろう。
当然、外資系企業とはいえ国内で経営する以上適用される法律は日本企業と同じである。一方的な解雇は許されていない。外資系企業が解雇にあたって何をやっているかは本稿の本筋からずれるため「ブラック社労士が必要とされる理由」を参考にして頂けばと思うが、現状では黒に近いグレーゾーンの行為であることは間違いない。ただし、それによって高い給料を実現していることもまた事実である。
■金銭解雇導入は極めて難しい。
自分は制度として金銭解雇には賛成する。それが労使双方にとってプラスになるからだが、導入は決して容易ではないと思われる。今回話し合われる事になった労働者が自ら申し出た場合に限る、といった制度でも徹底的な反対にあう事は間違いない。そして導入も出来ない可能性もある。なぜなら経営者も政治家も行政も、労働者から全く信用されていないからだ。つい先日、宅配便大手のヤマトホールディングス(HD)は未払い賃金(サービス残業)の存在を認め、7万人の従業員に対して190億円を支払った。厚生労働省のデータによれば日本全体の未払い賃金はここ数年おおむね年間100億円程度、対象は10万人程度となっている。
ヤマトHD一社で日本全体の未払い賃金を3倍に増やしたことになる。そしてこれだけの未払い賃金を発生させたにも関わらず、今に至るまで役員や企業が刑事的な処分を受けたとは一切報じられていない。
■コンプライアンス重視でもサビ残だけは別腹?
今のところ確認出来るものとしては、昨年末に労働基準法違反で法的な拘束力のない「是正勧告」を受けただけだ。この是正勧告が未払い賃金の支払いにつながったことは間違いないと思うが、それで経営者が処分を免れるのであれば、万引きが見つかったら商品を返却すれば罪をまぬがれる、というメチャクチャな話になる。これだけコンプライアンス・法令順守が叫ばれるご時世になっても未払い賃金に限ってはゴメンで済んだら警察は要らないという事なのか。
そしてヤマトHDは東証一部の上場企業でもある。190億円の未払い賃金とそれに伴って発生した社会保険料30億円、合計で220億円も過去の利益を水増ししていたことになる。
■190億円の未払い賃金も後払いすれば許されるのか?
ライブドアはかつて50億円の粉飾決算で強制捜査を受けて、役員は次々と逮捕され上場廃止となった。電通は新入社員が一人自殺したことで強制捜査を受け、上司と法人が書類送検もされている。
ヤマトHDは190億円もの未払い賃金を発生させたにもかかわらず、後出しじゃんけんのように2年分に限って支払うことで全ての罪が免れるのか。これだけ巨額の未払い賃金は粉飾決算にならないのだろうか?
軽々しく巨額の未払い賃金を発生させるような企業には証券市場からも圧力をかけるべきではないのか、と「ヤマト運輸で発生した空前絶後のサービス残業は数百億円分? 強制捜査の可能性は無いのか」でも書いたが、いまだにそのような動きは無いようだ。
証券市場は国内外の年金資産も運用されている。つまり日本人はもちろん世界中の国々に対して責任を負っている。先日は年金を運用するGPIFが東芝の監査法人を提訴したと報じられた。不正会計を見抜けなかったため年金資産にダメージを与えたことに対する損害賠償請求だ。東芝は今後上場廃止も濃厚と言われており、その際には現在と過去の役員も責任を問われるだろう。
上場企業として証券市場から資金調達をすることの責任はそれだけ重く、190億円分もの給料を「後払い」するような企業が何のペナルティも受けずに上場を許されている事は極めて問題がある。
企業がルールを守ること、行政がルールを守らせること、そして違法行為を行う企業には厳罰を適用すること、これが徹底されない状況では正しいルールすら導入できない。資本主義も市場経済もルールの無い弱肉強食の世界ではなく、サッカーや野球のように高度なシステムとルールが守られて初めて機能する極めて難易度の高いゲームである。
金銭解雇の導入は日本に残された岩盤規制を突破する起爆剤となりうる可能性がある。しかし現状では残業代すら払わない企業が多数あり、それを取り締まることも出来ず、後払いが許されるような状況で法改正は出来るのか。
今後行われる議論は全ての労働者に関わる重要な論点となる。改めて注目をしたい。
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中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長
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