- 2017年06月07日 14:23
【読書感想】子供の死を祈る親たち
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- 作者: 押川剛
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/03/01
- メディア: 文庫
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内容紹介
親子間の溝はますます深くなっている。自室に籠もり、やがて自殺すると脅し親を操るようになった息子。中学時代、母親の不用意な一言から人生を狂わせ、やがて覚醒剤から抜け出せなくなったホステス。刃物を振り回し、毎月30万も浪費するひきこもりを作ったのは、親の学歴信仰だった。数々の実例からどのような子育てが子供の心を潰すのか徹底的に探る。現代日本の抱える病巣を抉る一冊。
著者は「精神障害者移送サービス」の会社を運営しており、その20年間の経験をもとに、この本を書いておられます。
私は、家族からの依頼を受けて対象者を説得し、適切な医療や公的支援につなげた後にも、面会を通じて本人と人間関係を育み、退院後の就労支援など自立の手助けも行っています。
「移送サービス」と言われると、対象者を連れ出して施設に運ぶだけなのか、と思ってしまうのですが、実際は、事前の調査から家族との相談、本人の説得、そして、退院後の支援など、かなり幅広く活動されているようです。
民間企業でもあり、この本を読むと、それなりに費用がかかる、ということのようなので、ある程度経済的に余裕がないと利用が難しいのかもしれません。
こういうことこそ、本来は公的なサービスがあってしかるべき、という気がするのですが、現実には「扱いにくい人や状況ほど敬遠されがちで、支援につながらない」ことも多いのです。
「入院させる側」からすれば、マンパワーも限られているなかで、手がかかったり、他の患者さんとトラブルになるような人は、できれば避けたい、というのも事実でしょう。
この本で紹介されている、「困った状態にある、家族もどうしていいのかわからない状態の人」の実態には僕も驚きました。
(実際のところは、こういう状況から救急車などで病院に搬送されてくることもあるので、「こういう背景だったのか……」と合点がいった、というのもあるのですが)
「実は、とても言いづらいことなのですが……」
長い面談が終わる頃、母親がおずおずと切り出した。
「この半年くらい、桂一はトイレにも入れなくなってしまって」
「というと? 排尿や排便はどこでしているのですか」
「最初は……、自立して家を出ていった次男の部屋が空き部屋になっているので、そこに新聞紙を敷いて、その上で……。でもさすがにそれは困るので、今は、ペットシーツを買ってきて、そこでしてもらっています」
さすがの私も絶句した。しかもその排泄物は、母親が片付けているという。本人がやろうとすると、あまりにも時間がかかってしまうからだ。実際のところ私は、この両親が事務所に入ってきたときから、普段とは異なる臭いに気づいていた。
私への相談では、笹川家のように、子供が何年も入浴していないケースはよくあるし、自宅がゴミ屋敷化しているケースもある。とくに最近は、「子供がトイレを使えずに、部屋で排泄している」という相談は、私にとってもはや「普通」と言えるほど、ありふれている。彼らはトイレの代わりに、ペットボトル、スーパーのビニール袋、バケツなどに排尿をしているのだ。
ここに至るには、精神疾患の要素も含まれているのですが、家庭内という密室であれば、外部からの介入は難しいのです。
周囲もあえてそこに踏み込もうとは思わない。
親も「本人の言いなりにしていれば、とりあえず暴力も振るわれないし、自傷行為も抑えられる」ということで、「その日をやりすごす」うちに、どんどん状況は悪くなっていくのです。
ちなみに、専門病院に入院後、状態が改善した桂一さんと著者に、こんなやりとりがあったそうです。



