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いじめ重大事態への対処―取手市教育委員会の不適切な対応―

取手市で、平成27年11月に、「いじめられたくない」と日記に書き残して自殺した、市立中学3年生への対応で取手市教育委員会の対応が批判を招いています。

1日、私は親しい取手市議会議員と意見を交換しました。市議会では、「いじめによる重大事態ではなかった」という教育委員会の説明を受け容れて、この事件に関して議会で大きな議論になることはなく、一般質問でも取り上げる議員はいなかったということでした。

事件の概要は、平成27年11月に「いじめられたくない」と日記に残して茨城県取手市立中学3年生が自殺しました。その後、自殺した生徒の遺したノートから「いじめ」を受けていたと思われる記述が見つかり、両親から市教育委員会に、第三者による調査委員会の要望がありました。要望を受ける形で調査委員会は設置されました。

しかし、平成28年3月、取手市教育委員会は、学校からの報告を受けて、生徒へのアンケートや面談の結果、いじめにより心身に大きな被害があったとする「重大事態」に該当しないと議決してしまっていました。

文部科学省は、「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」を、以下のように解説しています。それは、「はじめに」に記載されており、「重大事態」とは、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」事態、だとしています。

そして、「いじめにより」とはどのようなことか、「疑いがある」とはどのようなことか、を解説しています。詳細は、書き切れませんが、学校、教育委員会、総合教育会議等の対応についても記載があり、それらと照らし合わせてみると当時の取手市における、学校、教育委員会、総合教育会議等の対応が不適切であることは認めざるを得ないのではないかと思われます。

市教育委員会の調査委員会設置は、「いじめによる自殺ではないが、遺族の要望もあり、設置する」というようなもので、「いじめがあったことを前提としない調査委員会」ということになります。

平成28年5月1日に取手市立中学校生徒の自殺事案に関する調査委員会は設置されました。設置要綱(設置)では、設置目的を以下のようにしています。

第1条 平成27年11月11日に発生した取手市立中学校生徒の自殺(以下「本件自殺」という。)について,本件自殺に至るまでの事実経過,背景等に関する調査・検証,本件自殺の原因の考察,当該自殺した生徒(以下「本件生徒」という。)が在学した取手市立中学校(以下「本件学校」という。)及び取手市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の本件自殺後の対応の調査・検証を行うとともに,今後の再発防止を図るため,取手市立中学校生徒の自殺事案に関する調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置する。

第2条 調査委員会は,次に掲げる事項を所掌する。
(1)本件自殺に至るまでの事実経過(本件学校及び学校外における事実経過を含む。)及び背景を含め,本件生徒に起きたことの調査
(2)本件自殺に至るまでの事実経過に係る本件学校の本件生徒に対する対応及びその背景の調査及び検証
(3)前2号の規定による調査及び検証を通じ明らかになった事実を踏まえた,本件自殺の原因に関する考察
(4)第1号及び第2号の規定による調査及び検証を通じ明らかになった事実に対し,本件学校及び教育委員会の本件自殺の前後における対応が適切であったかの検証
(5)前各号の規定による調査,検証及び考察によって明らかになった事実経過及び考察に基づく,今後の再発防止に関する提言(以下「本件提言」という。)

というものでした。しかし、設置から1年以上過ぎた5月30日、市教育委員会は、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」に該当しないとした議決について臨時会を開き、議決を撤回し、調査委員会の解散も決めてしまいました。

この間、調査委員会から中間的な報告もなく、結論も提言もなく調査委員会は閉じられてしまいました。調査委員会は、これまでの調査や議事録を全面的に公開して、どのような調査が行われてきたのか、どのような議論が行われてきたのか、どのような報告書をつくろうとしていたのか、明らかにすべきです。

新聞報道によれば、取手市教育委員会を本庁に呼び出して「対応不適切」と指導した文科省の児童生徒課の担当者は、「法律の理解不足という批判は免かれない」とコメントしたと言います。取手市教育委員会は、謝罪はもちろんですが、なぜ「いじめはない」との前提を議決したのか、その経緯を全て明らかにすべきだと思います。

今後、特に自殺した生徒が自殺前に学校で起きた「ガラス窓破損事件」が重要な意味を持ってくるのではないかと推察されます。自殺した生徒が実行者として認定され、損害賠償にまで至ったと言われるこの事件の対応のまずさ、真実を見抜く力が不足していた教師、連携して事実解明や指導に当たれなかった学校管理者、報告を受けた教育委員会、総合教育会議を主宰する市長など、全体として大人の対応のまずさが目立っています。

教育委員会制度は、平成27年4月から、「地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携強化」を図る目的で一部が改正されました。

改正の大きな要因となったのは、滋賀県大津市におけるいじめ問題でした。また、仙台市ではいじめによる自殺が相次ぎ、また教師による体罰も明らかになるなど、取手の事件の先例となるべき事件が数多くあったにもかかわらず、いじめ防止の教訓となりませんでした。

こうした、例は全国の市町村で起こりうることで、自分の自治体ももう一度しっかりと見直さなくてはならないと思いました。

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