記事

ネットの女王は「新聞」を見捨てたのか

かって「インターネットの女王」とも称されたメアリー・ミーカー(Mary Meeker)女史が毎年、この時期に公表するInternet Trendsは、Tech Crunchによれば「テクノロジーの世界の『大統領一般教書』と思えばよい」とまで評されるものです。

私も彼女がMorgen StanleyからベンチャーキャピタルのKPCBに移って最初の2011年版からブログの右側ピラーにリンクを貼るなどして注目している一人ですが、その2017年版が公開されたので、昨日は半日、眺めていました。

今年のスライド枚数はなんと355ページ!2011年版は66ページ、それから徐々に増えましたが、それでも昨2016年版が213ページでしたから、大幅なボリュームアップ。分析内容も多岐に亘ります。その中で、2011年版から一貫して同じ体裁で変化を示すグラフが今年も残っていることを発見しました。新聞のこの先に関わるものです。

それがこれ。各メディアの消費時間の割合とそこに投じられた広告費の割合を表したものです。「Print」は新聞+雑誌で、「Internet」はデスクトップ+ラップトップその他の接続機器だと脚注にあります。

Printの消費時間はわずか4%を占めるに過ぎませんが、全広告費の12%が投じられている。一方、Mobileは消費時間の28%を占めるものの、全広告費の21%に止まっている。

紙の新聞好きとしては、「衰えたりとはいえ、新聞への信頼感のようなものが、こうした数字を支えているのではないか」と思いたいところです。

そこで2011年版のグラフを探して見ました。

新聞の消費時間割合は今の倍の8%で、広告費は全体の4分の1以上を集めています。一方、メディアとして注目されたばかりのMobileは新聞と同じ消費時間割合に達していますが、広告費支出の0.5%を占めていたに過ぎません。

グラフの上の説明には「増えるモバイルと減るプリントでは、消費時間と広告支出の平仄(ひょうそく)が合わない」と書いています。それが、年を追うごとにモバイルに関しては改善されていきます。その後の3年分をまとめてご覧ください。

ここまでは徐々の変化でした。プリントの消費時間割合は5%まで減りましたが、広告支出は2割を割る一方、モバイルは2011年の消費時間割合10%から2年後に倍増、広告支出は4倍になっています。そしてここから、モバイルの消費時間割合と広告支出割合がどんどん近づいて行くのです。

2014年には消費時間割合が4%しか増えなかったのに広告支出割合は倍増し、翌2015年の消費時間割合が1%しか増えてないのに広告支出は5割増しになったのです。それでもミーカー女史のコメントは「広告主はレガシーメディアに払い過ぎ」というものです。そして、2016年の数字を入れた最新版ではこうなっているのを再掲します。

消費時間割合が4%に落ちても、過去2年はなんとか広告支出割合が10%台後半だったプリントが一気に25%減の12%に落ち込み、一方で、モバイルの消費時間割合が3%しか伸びていないにも関わらず、広告支出割合は6割近くも増えたのです。

他のメディアを見ると、ラジオもテレビも、そしてパソコンインターネットも、消費時間と広告支出の割合が一致しています。とすると、今後、上げ潮のモバイルの広告支出割合がそこに近づけば、削り取られるのは、どうやらプリントだと推測できます。これ以上、新聞への広告支出が減ったらどうなることやら・・・・。

ちなみに、2017年版のスライドを検索したところ「newspaper」という単語は、先に紹介した「プリントはnewspaper+magazine」という脚注と、中国のネット事情を分析する中でのグラフに1箇所と計2回登場しただけでした。かっての女王にしてベンチャーキャピタリストであるMeeker女史の視界からnewspaperは消えているようです。

あわせて読みたい

「新聞」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    「韓国に学べ」となぜ報じないか

    水島宏明

  2. 2

    瞳から家バレ 襲われたアイドル

    阿曽山大噴火

  3. 3

    休業要請 ネカフェ難民どうする?

    水島宏明

  4. 4

    リーマン当時と違う業界別壊滅度

    Chikirin

  5. 5

    よしのり氏 恐怖煽る報道に苦言

    小林よしのり

  6. 6

    家賃支払いが不安な人への支援策

    中川寛子

  7. 7

    専門家組織がたばこ生産停止要請

    ロイター

  8. 8

    二郎を残す客にALS患者が怒り

    恩田聖敬

  9. 9

    都からの移動者 厳しい対応必要

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    緊急事態の効果示したテレ朝番組

    水島宏明

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。