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「自動運転タクシー」で東京五輪の選手を迎えたい〜日本交通・川鍋会長が語ったタクシー業界の「近未来」

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撮影:亀松太郎

「Uber、ライドシェアリング、そして、日本のタクシー業界」。そう題された記者会見が5月30日、東京・有楽町の外国特派員協会で開かれた。スピーカーは、タクシー大手・日本交通の川鍋一朗会長。その口から飛び出したのは「自動運転タクシー」や「自動音声翻訳」という先端テクノロジーの用語だ。

コンサルティング会社マッキンゼーの出身で、これまで様々な改革案を打ち出してきた川鍋会長は、東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年に向けて、自社やタクシー業界がどんな新しい「打ち手」を展開していくのかを海外メディアの記者に向けて語った。もしそれらが構想通り実現していくならば、日本のタクシー事情は大きく変わる可能性がある。川鍋会長の記者会見の全文を以下に紹介する。(亀松太郎)

「タクシーのIT化」で日本の公共交通を良くしたい

みなさま、こんにちは。川鍋でございます。(普通の経歴ではないと司会に紹介されたが)私のキャリアが将来、タクシーマンとして普通のキャリアになればと思います。

当社、日本交通のタクシーは都内で4000台走っていますが、そのボディの広告で、タクシーアプリの「全国タクシー」の宣伝をしております。まさにこれが日本のタクシーが置かれている状況のそのままを表していると思っています。

撮影:亀松太郎

今、Uber(米国発の自動車配車アプリ)がありますが、日本にはもともとタクシーがあり、それなりの品質を担保しているので、それをIT化して、国民の足である公共交通機関のタクシーをより良いものにしていきたいと思っています。

特に(2020年に)東京オリンピックがあるので、どうやったら海外からいらした方にタクシーをよく使っていただけるかを考えています。最初に手をつけたのはタクシーの運賃で、東京のハイヤー・タクシー協会の会長として、初乗り運賃を730円から410円に下げました。

今日の為替レートでいうと、3ドル69セントです。しかもチップはなしです。いかがでしょうか。これで十分安いと言っていただけるのか。東京は大きな都市なので、実際の支払いは結構高くなるかもしれませんが、少なくともロンドンやニューヨークのタクシーとは同じか、少し安いくらいの値段にまで下がったと思っております。

外国人の乗客が「自国の言語」で行き先を伝えられるように

(次の問題は)その運賃をどうやって車で支払うのか、です。

東京のタクシーの97パーセントはアプリや電話ではなく、道端で拾ったり、駅の間で拾う需要になっています。ということは、パッと乗ったタクシーで、どうやって2つのことを成し遂げるかが、問題になります。

1つは、行き先を伝える。もう1つは、支払いをする。突き詰めると、この2つの利便性をタクシーで担保したいと思っています。

撮影:亀松太郎

(タクシー車内に設置された)このタブレットで、自分の国の言語でGoogle Mapで行き先を入れていただいたり、自動音声翻訳ができます。今はまだできませんが、オリンピックまでにはできるようにします。

すでに、当社の東京の4000台はペイメント(支払い)機能はできています。中国の方だとAlipayやWeChatPay、日本だとSuica、韓国だとKakaoPayなど、世界で広がっているスマホペイメントで決済をいたします。

いまこのタブレットは、タクシー会社にはただで提供しています。そのため(タブレットに表示される)デジタルサイネージ広告で収入を得ています。東京のタクシーの4万5000台のうち、1万5000台は個人タクシーですが、私が会長を務める協会の3万台の法人タクシーには全部これを載せ、なおかつ、全国のタクシーにもできるだけ広めたいと思っています。

「広重ブルー」の新しいタクシーを東京のアイコンに

今年の11月から、新しい「JAPAN TAXI」という車両が走り出します。日本専用に設計された、トヨタの全く新しいタクシーです。ロンドンのブラックキャブ、ニューヨークのイエローキャブ、そして、日本の東京にはJAPAN TAXIがある。というように、東京のアイコンにしたいと考えております。タクシー業界全体で濃紺の「広重ブルー」で揃えて、東京の法人タクシーの3万台のうち1万台、つまり3台に1台を2020年までにそうしたいと思っています。

撮影:亀松太郎

この車には、衝突防止ブレーキという先進安全装置がつきます。タクシーの事故は半減すると思われます。そして、2020年のオリンピックのときには、車椅子でそのまま乗ることができる「自動運転タクシー」にしようと、トヨタとタクシー協会で議論を進めております。

パラリンピックにいらしたパラリンピアンが、当社のタクシーの自動運転車で羽田空港からお乗りいただくと、運転席には当社の若い女性の運転手がいると思いますが、お乗せしてボタンをピッと押すと、ハンドルにもアクセルにも触れずに、そのまま首都高速に乗り、晴海で高速を降り、オリンピックの選手村までいく。これは必ず実現すると思います。

そのとき、そのタクシー運転手の仕事は運転ではなく、おそらく英語で「あれが東京タワーです」「レインボーブリッジです」と、観光案内をして、おしぼりを出し、日本人としてのホスピタリティを演出することになると思います。

今年12月から「相乗りタクシー」の実証実験を開始

(タクシー配車アプリの)「全国タクシー」については、全国のタクシー24万台の2割以上にあたる2万台が参加しています。

このアプリで「JAPAN TAXI」の車両を呼ぶのですが、(ワゴンタイプの)この車両ですと広いので、相乗りをして、いままでのタクシー運賃よりも安くできる。この「相乗りタクシー」は、今年の12月から国土交通省と実証実験をいたします。

撮影:亀松太郎

最終的には、たとえば千代田区と港区と中央区の間で、1カ月間タクシー乗り放題で3万円、などの乗り放題プランもできればと、頭の中では考えております。

このアプリがUberと違うのは、海外から来て3日間だけ日本に滞在する方にとっては、アプリをダウンロードするのが大変ということです。そこで、海外からいらした方が使うアプリと連携しています。

東南アジアの方だとLINE、アメリカや欧米の方だとGoogle Mapから経路検索をすると、当社のアプリが出てきます。

ちょうど2週間前、韓国で有力なタクシー配車アプリであるKakaoTaxiとグローバルローミング連携を発表しました。これによって来年2月の平昌オリンピックのときには、このアプリを持った日本人が平昌に行くとそのアプリで現地のタクシーを呼ぶことができます。

その逆もまた真なりで、東京オリンピックまでには韓国人の方はKakaoTaxiのアプリで東京のタクシーを呼べる。こういったことを各地のナンバーワンアプリと連携をしていくつもりです。

タクシーの進化で「世界最高の乗車体験」を届けたい

さきほど「日本には24万台のタクシーがある」と申し上げましたが、日本全国津々浦々、それなりのホスピタリティを持って、高いサービスをさせていただいております。おそらく海外のタクシーと違うのは、(法人タクシーの)運転手の全員が社員ということです。

我々はレーティング(Uberなどの乗客によるドライバー評価)も有効だと思いますが、プロの運転手として、安全性はもちろんのこと、サービスのレベルもきちっと教育をしていきたいと考えています。

撮影:亀松太郎

日本でもこちらのグラフ(プロジェクタに表示)を見ていただきますと、緑色の部分が、人々が「自家用車」で移動する人口になります(69%)。黄色が「電車」(24%)、赤色が「バス」(5%)、「タクシー」はピンク色、全体のわずか2%です。

これだけの人がたくさん移動しているわけですが、これからタクシーがテクノロジーによって、たとえば「相乗り」で半額になったり、さらに「自動運転」でもっと値段が下がったりする。そうすると、緑のところ(自家用車)がピンク(タクシー)に変わっていく。したがって、タクシーをIT化することで、新しい日本の公共交通インフラを作れると、私は思っています。

最後になりますが、(Uberなどの)ライドシェアに直面して、タクシーがやるべきことはなにか。レボリューション(革新)というのも大事ですが、せっかくいいスタンダードがあるのですから、それをさらに進化(エボリューション)させることによって、日本のみなさまに、そしてビジターのみなさまに、世界最高の乗車体験をお届けしたいと思っております。ありがとうございました。

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