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キューバ革命を勝利に導いた英雄たちの引き裂かれた友情――ゲバラ・カストロ

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英雄は最後まで優遇されるとは限らない

 この作品では1960年の貴重なカストロによるニューヨーク・国連総会におけるカストロの4時間半に渡る演説の一部も出てくる。「我々は共産主義者ではない。」と言いながらアメリカのど真ん中でアメリカの横暴をカストロは非難したのだ。

 生涯、カストロは「資本主義最大の敵」として50年間で638回もの暗殺計画の対象となった。これは「世界で最も暗殺計画の対象になりながらも生き延びた人物」としてギネスブックにも登録された。


『ザ・ライバル』マンデラVSデクラーク ~平和へのライバル~より

 1962年。ソ連の最高指導者フルシチョフが休暇中にとんでもない事を思い付く。

 「そうだ、アメリカに対する抑止力の為にキューバに核ミサイルを置こう。」

 アメリカの鼻先のキューバにである。間もなくアメリカのU-2偵察機がこれを発見し、米ソ入り乱れての核戦争の可能性を含むいわゆる「キューバ危機」が訪れる。あわや世界戦争という直前、どうにかフルシチョフとケネディが交渉の場に立ち危機を回避したが、キューバとアメリカの関係は最悪になる。

 米国と敵対するキューバはソ連に様々な援助を頼るしかなかったが、あろうことか純粋革命家チェ・ゲバラは外遊中の北アフリカのアルジェリアでソ連を非難、「帝国主義的搾取の共犯者」と呼ぶ。ソ連が東欧諸国等に対して搾取的であると言い放ったのだ。

 ソ連首脳陣は激怒。キューバに「ゲバラを追放しなければ援助を削減する」と通告。ゲバラはその事を知り妻と子供を置いて自らキューバを離れる。

 「カストロは権力者」とこの作品では言っているが、これは日本でも海外でも、よくある事だろうと思う。「創業者」「英雄」は必ずしも最後まで優遇されるとは限らないし、この半ば追放に近い出来ごとはひとつの悲劇でもあるし、ゲバラの出国を止めることすらしなかったカストロによる国や組織を守る者の「苦渋の決断」とでも言うのだろうか。

 そしてゲバラはアフリカのコンゴ、南米のボリビアと渡り死去。彼は生前「第二第三のベトナムを作るべきである。」との言葉を発し、大国の支配から小国はいち早く離脱すべきだと説いていたので、当時のソ連の横暴をどこかで感じていたのかも知れない。


『ザ・ライバル』カストロVSゲバラ ~革命に引き裂かれた友情~より

 南米諸国はラテンアメリカで、まるで宗主国の様に振舞い続るアメリカ合衆国に対抗するカストロの姿に主義主張を問わず共感した。政治家・カストロは同じ共産圏である中華人民共和国にも接近し一時、友好関係を結ぶが、ソビエト連邦と中国の間で対立が起り、キューバ・中国間の関係は悪化する。

 しかし、毛沢東死去後、経済成長を遂げた中国はキューバにとって重要な援助国になっている。2008年5月「四川大地震」が発生したとき、即座に多くのキューバの医療チームがカストロの指示によって送られる。

 両国の絆はさらに深まる。カストロの政治的感覚は晩年になっても衰えていなかったのだ。そして2016年11月25日死去。

ゲバラが受けた「ヒロシマでの衝撃」

 一方、最後にこんな逸話も紹介しておこう。

 1959年7月15日、革命からわずか半年後、チェ・ゲバラは日本にキューバ使節団の団長として訪問している。戦後、奇跡の経済成長を成し遂げつつある日本にやって来た。自動車工場などを見学し、その時「ヒロシマ訪問」を望んだ。

 しかし、革命を成し遂げたゲバラの重要性をあまり認知していなかった日本政府はそれを望まなかった。そこでゲバラは秘密裏にヒロシマ入りし、広島平和記念公園内の原爆死没者慰霊碑に献花し、原爆資料館と原爆病院を訪問した。大きな衝撃を受けたゲバラはその時、中国新聞の記者・林立雄氏にこう語っている。

「なぜ日本人はアメリカに対し、原爆投下の責任を問わないのか。」

また、宿泊先で故国に即手紙を書き

「全ての人はここに来なくてはならない。」

と伝えた。

 ゲバラはキューバに帰国後「ヒロシマでの衝撃」を報告し、キューバではそれ以来、初等教育から広島・長崎への原爆投下の経緯とその結果がかなり丁寧に教育されていると言う。

 それは「キューバ政府とゲバラによる反米教育」だったのか? 「純粋革命家ゲバラの感じた無抵抗な市民への大国アメリカの攻撃に対する怒りの表現」であったのか?

 キューバで育ち、後に小児科医になったチェ・ゲバラの娘、1960年生まれのアレイダさんは2011年の東日本大震災後、福島と宮城を訪れ

「キューバなら国家が先頭にたって復興させる」

と語った。

 そして、現代。米国トランプ大統領はメキシコからの不法移民を一掃すると言った。

 しかし、メキシコを通過してアメリカに入って来るのはメキシコ人だけでなく、国情不安定で国を脱出せざる負えない南米諸国からの移民も多いと聞く。それは歴史的にアメリカや欧州諸国の半ば植民地化され搾取・蹂躙され、過去の清算ができないまま独立したとしても、なかなか安定出来ない貧しい国から脱出してきた人たちである。


『ザ・ライバル』カストロVSゲバラ ~革命に引き裂かれた友情~より

 今は亡きゲバラとカストロが生きていたら、このトランプ発言に対しどう反応したのであろうか? 我々はこのカリブ海の小国「キューバと革命家」についてもっと知るべきではないのだろうか。

関連サイト
【ニコニコ動画】【予告編】ニコニコドキュメンタリーシリーズ『ザ・ライバル』 ~世界が注目する12のライバルたち~

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