- 2017年06月02日 08:03
前川元次官の出会い系バー通いは本当に「女性の貧困の視察」のためかもしれない
1/2両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]
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前川喜平前文科次官の告発会見を受けた政府側の反応は異様でした。菅官房長官は記者会見で、天下り問題では地位に恋々とし、出会い系バーで女性にお小遣いを渡すなど・・・と前川氏の人格を貶める「口撃」に語気を強めました。
いずれも加計学園問題とは無関係の話です。この手法は籠池氏を信用ならない人間と攻撃したのと同じですが、攻撃の内容、言葉の選択、表情や言い回しの冷酷さは籠池氏の時の比ではありません。この政権の振る舞いに異様さと恐怖感をおぼえた方も少なくないでしょう。
これと呼応するように、いつも政府側の情報を柔らかく伝えるコメンテーター、時事通信の田崎史郎氏のテレビ発言もいつになく余裕のないものでした。TBS「ひるおび」では勢い余ってか、政府の姿勢は前川証言を「殺す」とまで言い出したのには驚きました。
さらに田崎氏は、5月22日に読売新聞が「前川前次官出会い系バー通い」と伝えた記事について政府筋からのリークが囁かれる中、筆者の知る限り田崎氏はただひとり「読売の独自取材」と断言し、返す刀で「会見で前川氏はこの件を聞かれた時に大粒の汗をぬぐっていた」とコメントしました。あの会見場は暑く、当初から前川氏も弁護士も汗をぬぐっていたのですが。
読売テレビの「ウエークアップ+」では読売新聞の特別編集委員・橋本五郎氏が政府筋から読売へのリークかどうかの質問にストレートには答えず、「教育行政のトップがこういう所に出入りするのを無視して伝えなくて良いのか」とのみコメントしました。
それにしても読売の記事は不可解です。前川氏が買春などの不法行為もしくは破廉恥な行為に及んでいたという事実を掴んではいません。記事に書かれたファクトとしてはおおっぴらに営業している店へ行っていたというだけの話です。前川氏の説明も取材に応じなかったとして記事にはありません。およそ天下の読売新聞が書くほどのネタではありませんし、取材もまったく不十分です。
【参考】<山口敬之氏重大事案>深層徹底解明が不可欠 -植草一秀(http://mediagong.jp/?p=23033)
掲載も昨年末までの出来事なのに記事になったのが半年後の5月22日で、加計学園問題で前川氏の名前が世間にチラチラしてきたタイミングです。さらに東京・大阪・西部の3本社共通で社会面、3段見出しという、元大阪読売の事件記者大谷昭宏氏が言う「わけあり」扱いです。
この記事が政府筋からのリークによるものか読売独自ネタなのかはともかく、もし加計学園問題で政府が窮地に立つ前に前川氏を牽制するオトナの忖度で大読売が書いたとしたら、それはあまりに怖ろしい話です。
しかし、読売のこの記事にある種の恐怖を感じると同時に、一方で事務次官であろうが男は男、こういう店へ行くのは男の性かもしれないと思ったのも事実です。テレビでも、前川氏の「視察・見学」という説明に多くのコメンテーターたちが失笑し、菅官房長官の思惑通りの展開になっていました。
一方で記者会見での前川氏の語り口は誠実で理路整然としており、それは出会い系バーの話でも変わることはなく、嘘や印象操作の臭いを感じることはありませんでした。その誠実さは前川氏が天下り問題で国会に呼ばれた時の答弁を思い出させました。
自身の責任を問われて前川氏は「万死に値する」と言い切りました。退職後とは言え、役人が自己弁護の欠片もなく自身を「万死に値する」と断じるなど見たこともなく、強く印象に残りました。その連想から、もしかしたら、「出会い系バーで視察・見学」という前川発言は必ずしも失笑すべきものではないかもしれないと感じたのです。



