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「共謀罪」の何が問題か?ー迷走する政府の国会対応の背景にありうるもの

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 5月19日、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(いわゆる組織犯罪処罰法等の一部を改正する法律案、野党的には共謀罪法案)が、衆院法務委員会で可決(強行採決)された。当初与党は19日に衆院本会議可決までもっていく腹積りだったようだが、金田法務大臣の不信任決議案が提出された関係で委員会での審議が止まり、委員会採決は19日、本会議採決は23日という日程に後ろ倒しになった。24日は参院に送付して参院でも審議入りして、今国会での成立に漕ぎ着けたいというのが与党側の考えのようだが、さてどうなることか。(もっとも、大島衆院議長は、職権で委員会を立てて強行採決というようなやり方には当初から難色を示してきているようであるから、衆院本会議の時点でどうなるか。)

 度重なる閣僚や各省政務三役の不祥事や不規則発言等で、審議の延期や予定していた委員会の流会が頻発した影響で審議が延び延びになっていた法案が積み残されていることともあいまって、一月ほどの会期の延長も検討されているようで、たとい会期内成立が難しくなっても、延長された会期内での成立は確実だろう。

 さて、この法案、与党はテロ等準備罪を新設するための法案と言い、野党民進党は「共謀罪」を新設するための法案であると言う。更には共産党や左翼系勢力の中には「平成の治安維持法」と呼ぶ者もいるようで、国会周辺のデモ隊からは様々な呼称が聞こえてくる。まあこれはこの法案が素人目には分かりにくく、野党も審議には法曹経験者の議員を投入しているように、極めて専門的な議論にならざるをえないことによる。だからこそ、例えば「平成の治安維持法」というある種のレッテルによって、自由を束縛する恐ろしい法案であるというイメージを醸成するといった手法が使われ、反対が呼びかけられるわけである。一方の与党側は2020年の東京オリンピック開催にはテロ対策が必須であり、そのために必要であるとか、国際条約の批准に必要であるとか、ある種の「外圧」というか後光効果を使って必要性を強調し、支持を呼びかけてきている。

 ではこの法案の本当の姿、本質は何かと言えば、これについても分かりやすい表現で言えば、対象範囲が広すぎ、定義が曖昧な法案で、本当に機能するのか不明な法案である。そしてここが与党にとっても野党にとっても最大の問題であり、野党側はこれを各論についての質疑を通じて指摘してきた。ところが与党側は野党側の質問には真正面から答えることをせず、というより答えることができなかった。それもそのはず、成案が得られる前の拙稿「バランスを欠いた「共謀罪」論議ー噛み合わぬ質疑、飛ばされる論点」でも触れたとおり、小泉内閣以降何度も同様の法案が出されては廃案となってきたが、その過程で与野党で積み重ねられてきた建設的な議論の成果を、現政権は賽の河原よろしく見事に崩し、その代わりに短期間で作った生煮えの法案であるからである。(元役人的には、よくもまあ内閣法制局を通ったものだと不思議で仕方がない。)

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