主に残業時間の規制が話題の中心となっている感のある働き方改革ですが、他にもさまざまな施策が政府の「働き方改革実行計画」に盛り込まれています。計画では会社員の副業に関しても触れられており、厚生労働省が就業規則作成の参考のために公開している「モデル就業規則」では、原則、副業を認める方向で改定を進めるとのことです。
■年齢層別の副業率は?
主たる職業に影響のない範囲であれば、副業は給料とは別の収入が見込める他にも、勤務上のつきあい以外の交流が広がるなどのメリットもあるといわれています。では実際に、どのぐらいの人が副業をしているのでしょうか?厚生労働省が5年毎に実施している「就業構造基本調査」では副業の有無についても調査しています。平成24年度の調査結果から、年齢層別の副業の比率を計算してみることにしましょう。
(雇用されている人のみ集計)
「副業比率」
20~29才 2.2%
30~39才 2.3%
40~49才 3.2%
50~59才 4.4%
全体 3.0%
全体の比率は3.0%となっており、100人中3人程度しか副業をしてないようです。
年齢層別にみると、それほど差は大きくはありませんが、年齢層が高くなるにつれて、副業率が高くなる傾向がみてとれます。単純に考えると、社会人経験を積み重ねることで、副業の機会を得たのかもしれませんし、もともと家業で農業や不動産賃貸をおこなっており、親の引退などの理由により、事業引き継いだということも考えられます。
■主業の所得軸を加えた年齢層別の副業率は?
「就業構造基本調査」では年齢別に加えて、主たる職業の所得層別の調査も行われています。「副業比率」
主業所得 全体 100万未満 100-400万 400-700万 700-1000万 1000万以上
20~29才 2.2% 6.4% 1.6% 0.5% 7.9% 7.1%
30~39才 2.3% 5.3% 2.4% 1.1% 1.7% 9.8%
40~49才 3.2% 6.3% 4.3% 1.6% 2.1% 3.3%
50~59才 4.4% 6.9% 4.9% 3.5% 2.6% 4.4%
全体 3.0% 6.3% 3.0% 1.8% 2.3% 4.5%
まず注目すべきは、主たる職業の所得が100万未満の層でしょう。どの年齢層でも全体平均の倍以上の比率となっています。生活の足しとして、パートやアルバイトをするような立場ではなく、家計を支えるような立場の場合、主たる職業での所得が100万円未満では、生活はなかなか立ち行かず、複数の仕事を抱えざるえない人がいると考えられます。
一方で、主たる職業からの所得が20代は700万円以上、30代は1000万円以上ある層も、副業率が他の層と比較して高くなっています。若い年齢層にも関わらず、これだけの所得を得ていることから、主たる業務で、それなりの地位につき、生活に余裕があると推測されます。副業に投資をする金銭的余裕もあり、副業につながるような機会も頻繁にあるのでしょう。
■副業率上昇の鍵は中間層
このようにみていくと、そもそも主たる職業で生活が賄えない年齢層か、生活に余裕がある年齢層で副業比率が高いことがわかります。いい換えれば大多数を占める中間層の副業比率が低いことを意味しています。今回の働き方改革により、この中間層の生活に余裕が生まれ、社会的風潮が副業を肯定的に捉えるようになっていけば、中間層の副業比率の上昇も期待できそうです。どんな副業なら自分でもできるか、今のうちから検討しておくべきかもしれません。
《参考記事》
■承認欲求が満たされない社会が原因?なぜ「一流」が書籍や記事で使われるのか?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49594313-20160920.html
■働き方は「人並みで十分」と考える新入社員に教えたい人並みの給与額(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49126099-20160720.html
■テキストマイニングでわかる!経営理念、企業理念には何が書かれているのか?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48670625-20160523.html
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
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http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
村山聡 中小企業診断士
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