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ヨーロッパの対日観(EUでの議論を通じて)

 ここ数日、欧州連合(EU)と欧州議会に招聘され、ストラスブールとブリュッセルで、欧州議会の議員やEUの幹部、またベルギーの国会議員等と議論の日々を送っています。招かれた枠組みはEUVPというEUのプログラムで、EUのソフトパワー外交の一環という位置づけで、世界各国から政治家やジャーナリストなど若手の将来のリーダー候補を数名ずつ招聘するというものです。私の場合は自民党を通じてEU側からのオファーがあり、党務として参加しています。

 国内にあっては政局も混乱しており、なかなか政治が前に進んでいない状況ですが、当地でもいろいろな方との会談を通じて、日本の政治的存在感のあまりの低さに愕然とさせられています。

 せっかくの機会ですので、中国の抱えている様々なリスクとそれに対する我が国やアジア諸国の対応、そして、今後のエネルギー政策と省エネ社会のあり方について世界的にどういう流れを作っていくべきか、さらにはEUという壮大な実験の中で現在のヨーロッパ経済が抱える構造的な問題についてEUとしてどのような方向に持っていくのか、といった点を中心に意見交換をし、また我が国の立場を理解してもらうよう努力しているところです。
そんな中で、感じたことについて若干触れさせていただきます。
 
 まず、ほぼ全ての人が福島原発の問題、日本が本当に立ち直れるかに非常に強い関心を持っている点。予想はしていましたが正直それ以上の関心を持たれているといっていいと思います。ちょうど私が訪問している間にも欧州議会でも既存の原発に対するストレステストについての議論が熱心に行なわれているところでした。

 日本政府の事故についての情報開示のあり方に対しての批判的な見方が非常に強かったのと、今起こっていることに対する日本政府からの世界への発信があまりにもないことを指摘されました。「日本にビジネスに行って大丈夫なのか、旅行にいって大丈夫なのか」という話が有権者や企業からもくるらしく、出身国、ベテラン、若手問わずそろって関心をもたれています。

 また原発の事故に関して地震と津波の影響が混同されている点や、地震については日本の建築や新幹線など高い技術のおかげで被害を最小限に抑えられたことが一部の人を除き殆ど知られていない点も大きな問題です。こうした点についてはこちらから説明すると「ようやく理解できた、じゃあしっかり宣伝しておく」となるわけですが、日本に関心が高い議員に対してすら正確なPRをできていない点は日本にとってもビジネスチャンスを失っているわけで、いわばIR・PRの観点からも明らかに問題であり政府として改善が必要です。

 原発の問題については、先進国にあっては「安全」の基準、つまりどこにレッドラインを引くのかを明確にすること、さらに盲点になりがちですが、これから原発を必要とする途上国についても安全性の低い安価な物を建設しないように国際機関を含めて第三者による認証を行い、場合によっては安全なスペックの高いものの導入に開発援助資金を提供できるように基金を創設するなど、G20等の首脳レベルの場で具体的なフレームワークを早急に作ることが必要な点等の指摘を議論の中でもしているところです。
 
 また一般的な問題として、中国の軍事的拡張に対するアジア諸国の懸念、また為替や知的財産権の問題など、EUと日本が協力して新興国に対して主張すべき旨を伝え一定の理解を得たところです。武器輸出の問題などについても日本の立場に理解を求めるよう務めています。

 多くの人に指摘されたのは、なぜそのようなことを首脳レベルなどでもっと明確に主張しないのか、日本は国際社会に関与する意思が弱いのではないかとこれまで感じていた、といった点。発信の方法などを真剣に考えねばならない時期に来ていると痛感した次第です。

 環境やエネルギーについても、多くの時間を割いて議論しましたが、正直我が国で報じられているよりもかなり現実的な考え方をする人が要人でも多いという印象です。原発についても現実的にはドイツのような流れが各国で強まるかといえばそれはコストや経済の面から不可能だろう、さらに当方から、より安全でよりエネルギー効率が高い技術に関して更にイノベーションが進むようにするためには、開発主体であるハイエンドのメーカーにしっかり資金が回るような技術移転の(技術供与でなくビジネスベースでの)スキームを途上国に対しても考えねばならないといった論点を提示したところ、担当者でも政治家レベルでも、全くそのとおりでEUとして日本と協力して(途上国ではなく)新興国を巻き込んでの議論をすることが必要だとの反応が殆どでした。

 今回の議論の内容の詳細についてはまた後日触れる機会もあろうかと思いますが、とにかくEUサイドとの様々な議論を通じて、国際的ルールを「作る」側でなく「単純に受け入れ守る側」でしかなかったこれまでの日本のあり方を大きく変えていかねばならない、そして本気で世界的なルール作りに関わっていくことこそが国益にもつながり、温暖化や様々な難題の解決にもつながっていくまさに「真の国益」であるとの意を強くした次第です。厳しい国際競争の世界においては「国益を守る」シビアな国家間の競争はまさに待ったなしです。この点こそ政治が本気で取り組まねばならない大きな課題ではないでしょうか。

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