- 2017年05月30日 16:34
自由に働く社員を評価するために、給与テーブルを捨てました──為末大×青野慶久「本質的に人は何のために生きるのか」
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「働き方改革」の影響で複業やテレワークが話題になっていますが、このような働き方が世の中に一気に浸透するわけではありません。むしろ、来るべき「個人の時代」への備えが必要になりそうです。
元陸上選手の為末大さんと、サイボウズ社長・青野慶久が個人の時代の備えについて考えた前編では、「自由に生きることのリスク」「型にはまる重要性」「“個人の時代"を生きる覚悟」について語り合いました。
今回の中編では、「自由に働く社員の評価軸」「共感できる理念の選択」を話します。
社員の評価は「短期的な成果」か、「長期的な成長」か

経営者として気になるのですが、会社が個人を「自由」にさせると、仕事ぶりをチェックしにくいですよね。サイボウズでは、どんな評価軸を定めていますか?

うちの場合、ある程度は組織が大きくなっているので、タテとヨコの軸で見ています。

タテヨコ軸。それぞれどんな内容ですか?

誰をどのプロジェクトにアサインするかは、人事のマネージャーに任しています。この人はプロジェクトの成否に責任を持ちません。ある社員を成長させるには、どのプロジェクトに突っ込むのがいいか、という視点だけ。これがヨコ軸です。

では、タテは?

プロジェクト単位で仕事をしているので、プロジェクトリーダーがいます。人事からアサインされたメンバーをマネジメントし、それぞれのパフォーマンスを上げて、短期的な成果を収めるのが仕事です。これがタテ軸です。

なるほど。ある意味で、お互いが牽制し合うようなイメージですね。
為末大(ためすえ・だい)さん。1978年広島県生まれ。男子400mハードルの日本記録保持者(2017年5月現在)。スプリント種目の世界大会で、日本人として初のメダルを獲得した。2012年、25年間にわたる現役生生からの引退を表明。現在は、スポーツに関する事業を請け負う株式会社侍(2005年設立)を経営、一般社団法人アスリートソサエティ(2010年設立)の代表理事を務める。主な著作に『走る哲学』(扶桑社新書)、『あきらめる力』(プレジデント社)など。

そうです。例えば、プロジェクトリーダーがあまりにもAくんを使い捨てるように起用しているなら、人事のマネージャーはプロジェクトからAくんを外すことができる。逆に、パフォーマンスを上げそうにない人をアサインされたら、プロジェクトリーダーは人事のマネージャーに文句を言えるわけです。

そんなにシステム化されてはいませんが、陸上競技におけるマラソンの評価軸に似ていますね。代表選手をどう決めるかは、実は難しい問題です。今のトップ選手だけを並べてしまうと、3年後にトップになるべき選手が育たない。

成果を短期で測るか、長期で測るか。悩ましいですが、人材育成という観点で、仕事とマラソンが似ているというのは興味深いです。

そうですね。短期で成果を求めすぎると次世代が育たないし、次世代を育てようとすると評価をつけにくい。

たぶん、「よい」「悪い」というよりは、健全な議論が起こっている状態が望ましいと思うんですよね。お互いに牽制し合うことでバランスが取れるというか。

従来の働き方を脱するためには、会社側も考えなければいけないことがたくさんあるようですね。
10年後にどんな社会になるかわからないからこそ、自分の市場価値を考える

僕も給料の決め方を悩んだ時期がありまして。昔はサイボウズにも、普通の企業のように、グレード別の給与テーブルみたいなものがあって。「この人は今A3 です」「がんばったから次はA2 にしましょう」というように判断していたんですけど。

でも、例えば在宅勤務をしていたら、「がんばった」かどうかがわからないから、評価軸にできないですよね。

まさに。「会社にも来ない人が私より上なのはなぜですか?」みたいな文句が出るようになった。そこで、もうこの給与テーブルを捨てることにしたんです。

では、どのようなチェックを?

「その人が転職しようとしたときにいくらくらいもらえそうか」、もしくは「この人が転職してきたときにいくらを提示するのか」ですね。市場価値によって決めるという評価軸です。社員同士は比較しない、比較するのはあくまでも市場である、と。
2015年11月25日サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています

その評価軸なら、社内外の人材の流動性が高い状態を保てそうですね。

だからみんな、転職サイトに登録するんですよ(笑)。

自分の市場価値を知りたくなるわけですね。

強気の交渉してくる人もいます。腕に自信があるから「他社だったら+200万円でしたけど、青野さん、どうですか?」って。

うまい。それは、経営者としても、考えざるを得ない。

これは社員を囲い込まないためにも大事です。今まで、大企業などでは年功序列の絶対的ルールがあって、これに従うしか選択肢がなかった。不健全ですよね。



