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警察が被害者に示談を勧めて弁護士の事務所に連れて行くことは普通はない

フリージャーナリストの詩織氏が、準強姦被害を実名顔出しで訴えて話題を呼んでいる。

準強姦はあったかないか不明だからその点については述べない。

ただ、「警察が詩織氏に示談を迫り、頼まれもしないのに詩織氏を警察車両に乗せて、警察の伝手がある弁護士の事務所まで連れて行った」という話は少し私の興味をひいた。

普通ならそういう事態は起こらないと思われるからだ。

警察が示談を勧めて、示談交渉をさせるためわざわざ弁護士の事務所まで連れて行くというのは、民事不介入原則に反する。

民事不介入原則とは、平たくいえば「警察は民事紛争には介入しない」という原則だ。

警察は刑事の被疑者を検挙するのが仕事だから、民事不介入そのものは当然だといえる。

しかし実際には、民事不介入原則は「警察が扱いたくない事件を扱わないための便利な言い訳」として濫用されている。

法的紛争になるような社会的事実は、刑事の紛争か民事の紛争かに分かれるわけではなくて、むしろ一つの紛争に刑事的側面と民事的側面の両面がある場合が多い。

例えば「三浦義隆があなたを殴って全治2週間の怪我を負わせた」という社会的事実があったとする。

三浦義隆は刑事的には傷害罪を犯したから刑罰を受ける。民事的には損害賠償義務を負う。だからこの紛争は、刑事事件でもあり民事事件でもある。

この場合に警察の仕事は、三浦義隆を傷害罪で検挙することだ。三浦義隆から賠償金を取り立てるのは警察の仕事ではない。だから賠償金の取り立てには警察は関与しない。

これが「民事不介入」の正しい意味だ。

しかし、現実の警察は、「三浦義隆が私を殴って怪我させたから傷害罪で検挙してほしい」との訴えに対して、「三浦義隆があなたを殴って怪我させたという証拠がないから、うちでは今扱うつもりはないよ。」くらいのことを、なぜか「民事不介入」で説明することが多い。

この場合に被害者は、「殴られて怪我したから傷害罪で検挙してほしい」というまさに刑事の側面の話をしており、「賠償金を取り立ててくれ」とか言っているわけではない。だから、民事不介入原則には何の関係もない。

警察としても、これを立件できないと判断したなら、正面から刑事の問題であることを認めつつ「証拠不十分だから立件できない。ごめん」と言えばいいだけだ。

しかし、なぜか「民事不介入」という警察官自身もよくわかってない原則を持ち出して門前払いするのが警察の習性だ。特に、立証が容易でない詐欺事件などではそれが顕著だ。

結局、警察は「民事不介入」を、とりあえずそれを唱えておけば被害者が泣き寝入りしてくれる便利な魔法の呪文として運用しているとしか思えない。

このように「民事不介入」は、現実には警察が仕事をしないことの便利な言い訳としてもっぱら機能している。

逆に、本来の民事紛争である示談交渉にまで積極的に警察官が首を突っ込んだ事案は、少なくとも私の業務上見聞きした範囲では存在しなかったし、存在すべきだとも思わない。

だから、詩織氏が警察車両で弁護士の事務所に連れて行かれたという話は、普通はあり得ないことだろうが、仮にそんなことが本当にあったとすれば、その異例さゆえに政治的介入を示す話だなとも思う。

【追記】弁護士の野田隼人氏が、警察官が積極的に示談に介入する事案を経験したことがあるとの情報を提供してくれたので貼り付けておく。

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